バックアップ技術、管理ツール、ネットワークなど、サーバ仮想化のポイントになる5つの分野の動向を見ていこう。
サーバ仮想化技術はデータセンターに大きな影響を与えており、さまざまな変化が進みつつある。エンタープライズコンピューティングの将来を左右するとみられる、サーバ仮想化にかかわる5つの分野の動向について見ていこう。
仮想サーバのバックアップ技術では、今後1、2年は革命的な変化というよりも、着実な進化が進みそうだ。サーバ仮想化技術は急速に浸透しつつあり、あらゆる規模のベンダーが各種の製品で仮想化のサポートに乗り出している。今ではDiskeeperのようなディスクデフラグツールも仮想化に対応している。
仮想化ツールの進化が続く中、バックアップツールも拡張性、相互運用性、操作性が向上しそうだ。バックアップエージェントもより効率化され、個々の仮想マシン(VM)へのインストール容量は減少する見込みだ。
仮想サーバのバックアップツールの進歩は、VMware、Citrix Systems、Microsoftの激烈な競争によっても促進されるだろう。この競争はサードパーティーのバックアップ製品ベンダーにも波及するはずだからだ。エンドユーザーがその恩恵を受けるのは間違いない。
専門家は、ITスタッフィングには近い将来、目立った変化はほとんどないだろうとの見方を示している。これまで同様に十分な訓練を積んだやる気のある人材が、プロビジョニング、管理、メンテナンスで重要な役割を果たしていくという。
だが、スタッフィングがある程度変化していくことも予想される。世界経済への懸念が続いており、企業がITのビジネス効果を厳しく追求していることから、IT担当者の人員抑制が継続されそうだ。企業はスタッフィングにおいて、正社員を活用する以外の選択肢を積極的に取り入れて、重要なITプロジェクトを実施するようになるとみられる。また、企業が人員体制に関する意思決定を行うに当たっては、データセンターに重要な技術を迅速に展開することを念頭に入れることが必要になる。
CompTIAの調査は、IT担当者にとって今後5年間に、セキュリティやネットワーキング全般のスキルと、ソフトスキル(他人と仕事をする際に影響する一連の能力の総称)が重要になることを示している。ITサービスへのニーズは決して小さくならないと予想されるが、一部の企業は将来的に、管理効率の向上や、マネージドサービスプロバイダーへの主要IT機能のアウトソーシングに伴い、IT担当者の削減に踏み切るかもしれない。逆に、収益上重要なコスト削減や売り上げ増に向けた新プロジェクトの実施、管理のために、IT部門の規模を維持または拡大することを選択する企業も出てくるだろう。
現在、サーバ仮想化環境の監視・管理ツールは、多種多様なものが提供されている。一部の製品はニッチ領域をカバーするが、ほとんどの製品は一般にハイパーバイザーが収集する多様なシステムデータを利用する。
だが、ニッチツールの価値は薄れつつあるのかもしれない。優れたAPIや開発ツールが登場し、企業がそれらを使って、自社環境に合わせたツールをゼロから開発できるようになってきているからだ。
また、監視・管理ツールで強化が求められる重要な機能として、インフラ要素との連携能力が挙げられる。監視・管理ツールは、ストレージやネットワークコンポーネントなどのインフラ要素と密接に連携するようになる見通しだ。この機能強化は、1つのダッシュボードからインフラを監視できるようにすることを目的としている。
さらに、管理者は自動化機能の充実も期待してよさそうだ。自動化機能は、特定の使用率パラメータが発生した場合に、仮想アプリケーションにより多くのリソースを割り当てたり、アプリケーションをサーバ間で移行したりすることを可能にする。こうした機能を利用することで、人手による操作を減らし、コストを抑えながら、データセンターの柔軟性を高めることができる。
自動化はユーザーにも恩恵をもたらし、従業員や顧客、パートナーが、自らの環境やアプリケーションのセットアップやプロビジョニングを行えるようになる見込みだ。またそのおかげで、それらにかかわる管理者の負担が最小限に抑えられ、管理者はデータセンターのより重要な作業に集中できるようになるだろう。
構成管理ツールでは、監視やページング、アラート、オフラインパッチングといった機能の搭載が進む見通しだ。これによって製品の価値は高まるが、製品の選択と実装が複雑になり、管理者が自社の環境に最適な製品を選びにくくなることもある。また、構成管理機能がOSやハードウェアデバイスに緊密に統合されることも予想される。
さらに、構成管理ツールはより自律的なものになり、グループを管理する機能や、ネットワークの稼働を維持する処理の自動化機能も備える見込みだ。分析機能の搭載も進むだろうが、これは、クライアントシステムへのインストール容量に影響することになる。エージェントベースの製品では特にそうだ。
MicrosoftのSystem Center Configuration Manager 2007のDesired Configuration Management(DCM)機能は、高度な分析や自律機能を利用した構成管理機能の一例だ。DCMでは、特定のグループ内のシステムを構成するのに利用できる標準プロファイルを作成できる。
仮想ネットワークと物理ネットワークを相互接続する技術には、さまざまな新しい可能性がある。現在、多くのネットワーク技術が市場に登場しているが、万能の特効薬は存在しない。今後数年間は、各種の技術を組み合わせて利用することになりそうだ。
実際、今は分散仮想スイッチやセキュリティVMアプライアンス、シングルルートやマルチルートのI/O仮想化、VMロードバランサの導入を検討したり、新製品の試用を始めるのに良いタイミングだ。スイッチやセキュリティ機能、さらにはルーティング機能など、従来の物理ネットワークアクセスレイヤーの要素の多くにおいて、仮想インフラへの対応が進んできているからだ。
ネットワークアクセスレイヤーデバイスの仮想化により、アーキテクチャと管理の柔軟性が大幅に高まり、VMのモビリティが向上する。その一方で、業務管理とIT運用の手続き上の新たな課題が生じ、それらに対処することも必要になる。
また、拡張イーサネットに加え、改善された隔離技術、監視、強制アクセス制御などの機能により、マルチテナントや複数のセキュリティサブゾーンを安全にサポートする仮想ネットワークインフラの基盤が提供される。セキュリティ監査やコンプライアンスの基準とその解釈も、この新しい技術に追い付くだろう。そうなれば、われわれは従来の物理ネットワークインフラの制約を克服し、物理アプライアンスをレガシーデバイスとしてサポートするようになるだろう。
本稿筆者のスティーブン・J. ビゲロー氏は、米国TechTargetのデータセンター・仮想化メディアグループのシニアテクノロジーライター。PC/IT業界でのテクニカルライティング経験は15年以上。電気工学の理学士号と、CompTIA A+、Network+、Security+、Server+の資格を取得している。著書に『Bigelow's PC Hardware Desk Reference』(McGraw-Hill Osborne Media刊)、『PC Hardware Annoyances: How to Fix the Most Annoying Things about Your Computer Hardware』(O'Reilly Media刊)などがある。
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