XenClient 2技術プレビュー版レビュー
大規模運用を実現するクライアントハイパーバイザー「XenClient 2」誕生
米Citrix Systemsは2011年5月末、クライアント向けベアメタル型ハイパーバイザーの新バージョン「XenClient 2」の技術プレビュー版をリリースした。対応ハードウェアを拡大すると共に、企業利用に必須の管理サーバ機能を拡充している。
XenDesktopの未達ユーザーをカバーする
「製品を(2010年9月に)正式リリースして以来、9カ月で10万件のダウンロードがあった。ユーザーの関心は非常に高い」――米Citrix Systemsのマヌー・ショーハーン氏は自らがプリンシパル プロダクト マネージャーを務める「XenClient」についてこう話す。
XenClientは、ホストOSを必要としないクライアント向けベアメタル型ハイパーバイザーだが、利用形態からいえば、デスクトップ仮想化ソフトウェア「XenDesktop」の1機能といえる(ライセンス的にもXenClient自体は無償だが、企業利用で欠かせない管理サーバ「Synchronizer for XenClient」(以下、Synchronizer)の利用には、XenDesktop Enterprise/Platinumが必要。ただし、接続するXenClientマシンが10台以内なら検証用としてSynchronizerも無償)。
XenDesktopの主な仮想デスクトップ配信方式を図1に示した。サーバOSの単一デスクトップの画面を各クライアントに転送するHosted Shared、サーバ上で個別のデスクトップ仮想マシンを実行して個々のクライアントに画面転送するHosted VDI、単一のデスクトップイメージを各クライアントがネットワークブートで利用するStreamed VHD。そして各クライアント上で仮想マシンを直接実行するLocal VM。これを担うのがXenClientである。
Local VM以外の配信方式はセンター集中型といえる。ユーザー側で仮想デスクトップを利用するには、社内ネットワークへの接続が必須となる。一方のLocal VMはローカル上で仮想マシンを直接実行するため、社内ネットワークから外れていても仮想デスクトップが使える。つまり、社外でも使われるノートPCでの利用を見込んでいる。ショーハーン氏は「XenDesktopにとって“ラスト1マイル”のユーザーをカバーするもの」と表現する。
1台のPCの中で複数の仮想デスクトップが同居
企業でのXenClient利用は次のようなイメージだ――管理者はXenClient搭載機で作成した仮想マシンのマスターイメージをSynchronizerに登録し、ディレクトリのユーザー/グループをひも付けたり(Active Directory連携が可能)、ローカルでの動作を制御するポリシーを適用する。ディスク、メモリ、仮想CPUの割り当て、仮想マシンイメージの暗号化、USBデバイス使用制限なども可能。また、仮想マシンのリース期間、強制ロック(Synchronizerに一定期間アクセスがない場合に実施)、自動バックアップの設定も行える。
ユーザー側は自分のXenClient搭載機にSynchronizerから指定の仮想マシンをインポートする。仮想マシンは通常のパーソナライズ可能なデスクトップとして使える上に、複数の仮想マシンを同居させ、専用GUI上で簡単に切り替えられる。例えば、ビジネス用/個人用でデスクトップを使い分けられる。企業所有PCなら構成・ポリシーを変えた2種類の仮想マシンを配布してもよいし、持ち込みPCの場合、個人用にはユーザーが自分でゲストOSをインストールして作成した、Synchronizerの管理が及ばない仮想マシンを用いてもよいだろう。
このようにXenClientはデスクトップ仮想化の地平を広げる可能性を持つ。それに呼応してCitrix Systemsは、2011年5月末に米国で開催したカンファレンス「Citrix Synergy 2011」でXenClientの次期バージョン「XenClient 2」の技術プレビュー版を発表した。ショーハーン氏は「XenClient 1を試した多くの企業ユーザーからフィードバックを受け、XenClient 2では主に対応ハードウェアの拡大、Synchronizerの拡張、ユーザーエクスペリエンスの改善と3つの点を強化した」と語る。
VT-d非対応CPUのサポートで拡大する対応機種
まず、対応ハードウェアの拡大について説明しよう。ベタメタル型ハイパーバイザーのXenClientは、インテルCPUのIA-32仮想化支援機能「Intel-VT」とI/O 仮想化支援機能「VT-d」を利用する。VT-dにより仮想マシンからGPUへのダイレクトアクセスが可能なため、仮想環境でもPC本来のグラフィックス性能をほぼフルに生かせるのだ。
ただ、XenClient 1でサポートするCPUは「vPro対応Core 2 Duo」「Core vProプロセッサー」、GPUはこれらのCPUに統合された「GMA 4500/HD Graphics」に限られていた。さらに、Citrix Systems側で動作検証を行ったPCは、Dell、HP、Lenovoの30機種足らずで、「ユーザーからの要望では、対応ハードウェアの拡大が最も多かった」(ショーハーン氏)という。
そこでXenClient 2では、2011年春に登場した第2世代のCore vProプロセッサーに加え、VT-d非対応のインテルCPU(統合GPUは必要)に対応する。一般のビジネス用途に限れば、GPUへの直接アクセスを必要としないことが多く、これでも十分だろう。また、GPUでも最新のHD Graphics 3000の他、AMD製のディスクリート型GPUをサポートに加えた。例えば、HPのビジネス向けノートPC「EliteBook 8460p」では、GPUにHD Graphics 3000もしくはAMDのRadeon HD 6470Mを選べるが、XenClient 2ならどちらでもダイレクトアクセスできる。
さらに、国内PCメーカーのパナソニック、富士通、NECの機種も含め、動作検証済みを70機種に増やしている。「XenClientの対応機種の総数は1500万台から4500万台に増えている。実際はそれ以上で稼働するだろう。今後も動作検証を続けてリストアップしていく」(同氏)。なお、対応機種の詳細についてはHardware Compatibility List(HCL)を参照してほしい。
サーバ1台で5000台のXenClientマシンを管理
XenClientを企業導入する上では、XenServer向け仮想アプライアンスとして提供されるSynchronizerの使い勝手が大きな意味を持つが、XenClient 2対応のSynchronizerでは、大幅にパフォーマンスが向上し、バックアップ機能の改善が図られている。
パフォーマンス向上では、Synchronizer1台で最大5000台のXenClientマシンを管理できるようになった。加えて、Synchronizerの負荷に応じてXenClientマシンからの要求を自動的に制限するスロットリング機能の実装、Active Directoryのドメイン間信頼関係への対応、圧縮技術による仮想マシンイメージ高速転送など、大規模運用を見据えて機能を強化している。一方で光ディスク、USBメモリによる仮想マシンイメージ配信にも対応。柔軟な運用が可能だ。
バックアップ機能の改善については、仮想マシンとユーザープロファイルの分離に対応したのがポイントだろう。これでユーザープロファイルのみがSynchronizer側にバックアップ可能になる上、システム復旧や仮想マシンイメージ更新のときも、保存されたユーザープロファイルを適用してすぐに復旧できるわけだ。一方、従来通りシステム全体をバックアップする場合も、フィルタリング機能の追加により、未使用ディスクブロックやページファイルなど不要データが除かれるため、バックアップ時間が減り、ディスク容量を抑えられる。
シンプルなUIで使い勝手を高めたXenClient 2
ユーザーエクスペリエンス(UX)については、「モニターに操作してもらいながらUX上の問題点をあぶり出し、改善していった」(ショーハーン氏)という。具体的には、XenClientマシン側の管理ソフトウェア「Citrix Receiver for XenClient」が提供する専用GUIをシンプル化。仮想マシンのアイコンごと「Start」「Detail」のボタンだけを配置し、直感的なナビゲーションを実現している。Detailをクリックすれば、仮想マシンのシステム設定を参照/編集できる(Synchronizerのポリシー設定で編集を許可した場合)。また、ホットーキー操作によりアプリケーション画面のように仮想マシンを瞬時に切り替えられるようになった。
その他、XenClient 2では、仮想マシンに割り当てられるメモリが4Gバイトから8Gバイトへ倍増、Linuxディストリビューション「Ubuntu 11.04」も試験的にサポートしている。例えば、IT開発者なら「業務用」「開発用」とデスクトップを使い分けられるだろう。
以上、企業利用にかなうレベルに達したXenClientだが、XenDesktopのHosted VDI方式との連携など、まだまだ大きな発展性を秘めていそうだ。企業の中では現在、モバイルワークの比重が高まっている。そのため、デスクトップ仮想化を導入する上でノートPCの扱いは大きな課題である。XenClientを入手して対策を検討してみるとよいだろう。
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