米調査が示す、数年で急加速する企業のモバイル導入率利用OSとアプリケーションに傾向も

米TechTargetの年次調査によると、一般消費者市場と同様に企業でもモバイル端末の利用が加速している。その推進力は「生産性」と「柔軟性」だ。

2011年07月12日 09時00分 公開
[Susan Fogarty,TechTarget]

 ガジェット好きの皆さんには朗報だ。われわれは皆、自分のクレジットカードやiTunesの個人アカウントの明細からモバイルの成長が進んでいることを実感している。だが米TechTargetが読者を対象に実施した年次調査では、さらに企業のIT部門が端末の面でもアプリケーションの面でも、かつてないほどにモバイルの成長を支えている現状が明らかとなった。調査回答者の57%近くは、「モバイル予算が前年比で増加した」と答えている。モバイルが景気後退の局面においても堅調を維持した数少ない分野の1つであったことを考えると、これはとりわけ大きな飛躍といえるだろう。

 モバイル製品の買い物リストで上位に入ったのは、タブレットPC、スマートフォン、モバイルセキュリティ製品などだ。ソフトウェアに関しては、CRMERP、会計アプリケーションなど、モバイル版ビジネスアプリケーションの購入を計画している回答者が最も多く、その後にセキュリティソリューションとモバイル管理ソフトウェアが続いている。

 回答からは、モバイル環境がかつてなく複雑になっていることも見て取れた。「社内のネットワークでは複数のメーカーの複数のモバイル端末がサポートされている」と答えた回答者は全体の77%に上り、「ここ1年でより広範な端末がサポートされるようになった」と答えた回答者は58%だった。一方で、IT部門は従業員のモバイル端末の掌握にも努めている。「モバイル端末の紛失や盗難に関して正式なモバイルセキュリティポリシーが定められている」と答えた回答者は優に全体の3分の2を超え、「データ所有権に関する正式なポリシーを策定し、従業員が所有する端末から業務データを消去する機能も備えている」と答えた回答者は59%だった。

グラフ1 社内のモバイル導入を推進する要因

 モバイル端末はなぜこれほど急速に広まりつつあるのだろうか。「生産性」がそのキーワードのようだ。自社でモバイル導入の推進力となっている要因を尋ねたところ、企業幹部、現場で働く社員、販売専門職など、多くのユーザーグループにおいて、「生産性」が上位に選ばれた。「柔軟な労働形態」も主要な要因の1つに選ばれている。

アプリケーションの重要性

 もちろん、端末で利用するビジネスアプリケーションがあってこそ、その端末は有用となり、生産性や柔軟性の面でメリットがもたらされる。調査では、「モバイル端末で利用する最も一般的なビジネスアプリケーション」として、圧倒的多数の回答者が電子メールを挙げており、85%が「既にそうした機能を導入済み」と答えている。

 防衛エンジニアリング会社の米Scientific Systems Companyでシステム管理者を務めるダミアン・ロック氏によると、同社がモバイル端末で使用しているビジネスアプリケーションはメールだけであり、今後もその状況が変わることはないと同氏は考えているという。ただし同氏は、「社内メールへのスマートフォン経由のアクセスは引き続き増加する」と予想している。

 金融持ち株会社である米BB&TでIT戦略および業務連係担当副社長を務めるデビッド・バーリック氏も、通信用アプリケーションの重要性を指摘している。「社内のユーザーにとって目下最も重要なアプリケーションは、個人情報管理(PIM)用のデータだ。つまり、カレンダー、メール、連絡先、社内ディレクトリなどのデータだ」と同氏。さらに同氏によると、BB&Tは現在、より高性能なデータベース駆動型アプリケーションの導入も計画中という。「われわれが現在取り組んでいる中で最も必要とされているのは、CRMやBIデータへのアクセスを提供するモバイルアプリケーションだ」と同氏。

 今後のモバイルアプリケーションの展開計画については、概して、さらに野心的な回答結果となっている。「向こう24カ月以内に実装するであろうモバイルアプリケーション」について尋ねたところ、「単体のコラボレーティブアプリケーション(インスタントメッセージング、SharePoint、ワークフローアプリケーションなど)」を挙げた回答者が26%、「本格的なユニファイドコミュニケーション(UC)」を挙げた回答者が24%、「仮想デスクトップ統合」を挙げた回答者が22%、「ビデオ会議」を挙げた回答者が21%だった。

OSも重要

 もはやアプリケーションを抜きにモバイルの成長を語ることはできないが、ハードウェアとOSプラットフォームの重要性も無視できない。調査では、スマートフォンのベンダー別所有率では、BlackBerry端末を手掛けるカナダのResearch in Motion(RIM)が62%でトップとなった。ただし、米AppleのiPhoneも51%とそれほど大差なしで第2位に付けている。

 「メインとなるモバイル端末ベンダーの切り替えを検討中」と答えたユーザーのうち、56%はその判断に影響を及ぼす最大の要因として「端末のOS」を挙げている。その後に大差で続いたのが「より良いサポートサービスを期待できること」で、この要因を挙げた回答者は38%だった。

グラフ2 社内利用のモバイルOSシェア

 バーリック氏によると、BB&Tは当初BlackBerryを採用したため、同社にはBlackBerryインフラが整備されているという。だが、ユーザーに選択肢を与えるよう方針を変更し、iOSなど、その他のプラットフォームもサポートすることにしたため、BlackBerryからの移行がある程度進んでいるという。「Androidの使用が承認されれば、この流れはさらに進むだろう」と同氏は予想している。

 この傾向は、全体的な調査結果からも読み取れる。RIMはスマートフォンの導入ではリードを保ったものの、その人気は急速に衰えつつあるようだ。RIMはAppleやAndroidでサポートされるアプリケーションの絶対数の多さや機能性に追い付けずに苦戦を強いられているのだ。「端末メーカーを1社に絞らなければならないとしたらどこを選ぶか」と問われ、回答者の62%が「Appleを選ぶ」と答えた一方で、「RIMを選ぶ」と答えた回答者はわずか37%にとどまった。またスマートフォンに関する調査ではBlackBerryがトップだったが、使用しているモバイル端末全般について尋ねた質問では、「AppleのiOS」と答えた回答者が67%、「RIMのBlackBerry」と答えた回答者は60%、「Android」と答えた回答者が54%となっている。

 運転シミュレーションシステムのメーカーである米Doron Precision Systemsでシステム管理者を務めるアンソニー・アレン氏は、同社の今後の方針を次のように説明している。「われわれは目下、Appleか、あるいはひょっとしたらAndroidプラットフォームへの切り替えを検討中だ。どちらのソリューションにせよ、RIM製品より優れた機能性を提供してくれるのではないかと思っている」

 同調査は、TechTarget NetworkingがSearchMobileComputing.comの読者を対象に年1回行っているものだ。今回の調査は2011年5月に実施された。調査には360人以上のIT関係者が参加した。回答者は主に、製造、政府機関、金融、教育、ヘルスケアなどの業界に従事する人たちであり、職務比率は「中間レベルのIT管理者」が25%、「ネットワークアーキテクト、ネットワークエンジニア、ネットワークアドミニストレーター」が12%、「セキュリティマネジャー、セキュリティアドミニストレーター」が12%、「上級ITマネジャー」が11%、「企業幹部、経営者、参謀」が9%となっている。

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