IASB議長が来日「IFRSフルアドプションが日本のためになる」【IFRS】「日本がフルアドプションするまで来日を続ける」

日本がIFRSをフルアドプションすべき理由としてフーガーホースト議長は、「現在の日本の会計基準は本質的に不安定」と指摘した。

2012年02月09日 20時00分 公開
[垣内郁栄,TechTargetジャパン]

 IASB(国際会計基準委員会)のハンス・フーガーホースト議長は2月9日、都内で会見し、日本のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)適用について「日本がフルアドプション(全面適用)の意思決定をすることが、本当の意味で日本のためになる」と話し、IFRSの全面適用を強く求めた。フーガーホースト議長の来日は、議長就任後では初めてだが、「今年は少なくともあと3回は来日する予定だ。日本がフルアドプションするまで来日を続ける」と日本重視を訴えた。

 日本がIFRSをフルアドプションすべき理由としてフーガーホースト議長は、「現在の日本の会計基準は本質的に不安定」と指摘した。現在、日本では日本基準の他に、米国会計基準(US-GAAP)とIFRSが使えるが、「世界でかなりまれな状況。このままずっと続く訳がないのは明確だ」。その上で国際的に今後利用される会計基準としては、IFRSしか考えられないとの考えを示した。30社超の日本企業が適用しているUS-GAAPについては「日本は全く影響力を行使できない」と指摘。一方、IFRSでは「日本は既にIFRSに影響力を発揮しているが、日本がフルアドプションを表明すればさらに影響力を大きく行使できる」と話した。

IASBのハンス・フーガーホースト(Hans Hoogervorst)議長

 日本はIASBの理事を派遣し、IFRS財団に対して2人の評議員を出すなど、IFRSについて一定の影響力を持つ。2012年秋には東京にIASB初のサテライトオフィスが設立される。しかし、フーガーホースト議長は「IASB理事会が日本の期待しないようなことを決定しようとしても、IFRS適用会社が5社では、日本の状況が問題視されない」と述べて、さらに日本が影響力を持つにはフルアドプションなどによってIFRS適用会社を増やす必要があるとの考えを示した。

 「例えば500社、1000社がIFRSを使っていて、IASBの決定によってこれだけの数の企業が困るというのであれば、今の5社よりはさらに真剣に日本の関係者の話を聞かないといけなくなる」

 日本は「アジェンダ協議 2011」などを通じてIASBに対して、IFRSの修正を求めている。包括利益のリサイクリングや開発費の資産計上、のれんの非償却などについてだ。フーガーホースト議長は「個人の考え」として、日本が求めているのれんの償却化について「共感を感じている」と話した。

カーブアウトは「好きではない」

会見の司会はIASB理事の鶯地(おうち)隆継氏が務めた

 だが、日本の要求が全てIASBで認められ、IFRSが修正されるとは考えにくく、仮に日本がIFRSをアドプションするなら、一部基準を適用除外した「カーブアウト付きアドプション」が考えられる。カーブアウトは欧州でも行われているが、フーガーホースト議長は「言うまでもないが、カーブアウトは好きではない」と述べた。「カーブアウトによってIFRSのイメージがぼやける」からだ。ただ、「カーブアウトが絶対にダメと言っている訳ではない」として、「日本が検討した結果、カーブアウトがやむを得ないというのであれば、できる限り最小限にとどめて、カーブアウトの理由を明確に示してほしい」とした。

 フーガーホースト議長は2月8日、金融庁の自見庄三郎担当大臣と会見した。フーガーホースト議長によると自見大臣は、「日本がIFRSから離れていくような解釈はしないでほしい。日本のコミットは変わっていない。IASBとの緊密な関係は続いている」などと述べ、フーガーホースト議長は「日本にとってのフルアドプションは真剣な選択肢であることに変わらない」との印象を受けたという。

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