グリーン・グリッドが国内データセンターの省電力活動を表彰、最優秀賞に輝いたのは?NEWS

グリーン・グリッドが日本国内でデータセンターを運用する団体・企業のエネルギー効率改善に向けた活動を表彰。最優秀賞にはNTTコミュニケーションズとNTTファシリティーズの共同プロジェクトが選ばれた。

2012年10月05日 21時00分 公開
[翁長 潤,TechTargetジャパン]

 データセンター/IT機器のエネルギー効率改善を推進する団体「グリーン・グリッド日本支部」は10月5日、「グリーン・グリッド データセンター・アワード 2012」の受賞企業を発表した。このアワードは、日本国内でデータセンターを運用する団体・企業のエネルギー効率改善に向けた活動を表彰するもの。2010年に創設され、今回で3回目の実施となる。

 アワードの評価基準は「定量化」「目標設定と計画性」「継続性」「社会貢献性」「独創性」の5項目。それぞれを最大20点とする加点方式で、業界団体や協力メディアで構成される審査委員会が応募プロジェクトを審査した(応募期間は2012年5月9日~9月7日)。グリーン・グリッドの日本マーケティング委員会代表 吉見顕史氏によると「グリーン・グリッドが提唱する評価基準『PUE/DCiE』の絶対値の比較ではなく、その指標を用いて継続的な改善活動を実施した企業の取り組み内容を評価した」という(関連記事:データセンターの効率を上げるための5つのポイント)。今回表彰された企業とプロジェクトは以下の通り。

受賞企業とプロジェクト名
受賞企業 プロジェクト
最優秀賞 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ、NTTファシリティーズ(2社共同) 革新的な人工知能エンジンを有する空調自動制御システム(DCIM)を活用した継続的改善活動と国内DCのエネルギー効率底上げへの貢献
優秀賞 SCSK 温熱環境の改善による省エネルギー対策の効果検証と実践
特別賞 インターネットイニシアティブ 外気冷却方式コンテナ型データセンター「松江データセンターパーク」
photo 左から、SCSK ITマネジメント事業部門 ITマネジメント第一事業本部長 向井健治氏、NTTファシリティーズ 建築事業本部 設備エンジニアリング部門長 中北英孝氏、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ サービス基盤部 基盤設備部門 第一エンジニアリング担当 担当部長 柳田幸広氏、インターネットイニシアティブ サービスオペレーション本部 データセンターサービス部 部長 久保 力氏

DCIM導入で空調制御の最適化を実施

 最優秀賞を受賞したのは、NTTコミュニケーションズとNTTファシリティーズによる共同プロジェクト。空調自動制御システム(DCIM)を導入してデータセンター内の冷却状況を詳細に監視・分析し、空調システムのエネルギー効率を高めるとともに気流改善施策を継続的に実施した。

 DCIMは、これまでビル管理システム(BMS)で計測していた設備情報と、IT機器の運転状態やネットワーク状態などのIT情報を統合的に監視・制御するシステム。各ラックの消費電力や発熱量、データセンター内の冷却状況などを可視化し、機器配置前のシミュレーションすることでデータセンター運用の自動化や効率化を支援する。両社は既存データセンター内に無線センサーを設置し、サーバ列やラック単位の温度状況などの測定結果を基にDCIMで空調制御の最適化を実施。また、ブランクパネルの導入や二重床のレイアウト変更、空調機の風量調整、アイルキャッピングなどの改善策を実施した。これにより、平均pPUE(モジュール単位の電力効率指標)を5.9%改善し、温度分布の均一化、サーバラック上下の温度差や無駄な電力消費となる過冷却などを解消したという。DCIMを活用した独創的、先進的な手法、運用改善による具体的な投資回収目標の設定とその達成に取り組んだ点などが評価された。

photophoto NTTコミュニケーションズとNTTファシリティーズのプロジェクトイメージ(左)、改善効果(右)《クリックで拡大》

緻密な監視活動とPDCAサイクルを確立

 優秀賞を受賞したのは、SCSK。同社は2011年10月のSCSとCSKとの経営統合を機に国内のデータセンターを10カ所に拡充している。今回のプロジェクトでは、メインフレーム系システムも稼働している東京第1センター(1988年開所)、東京第2センター(1992年開所)を対象に、サーバ/空調システムの電力量、室内・外気温、室外機置き場などの温熱環境の監視を徹底。その計測結果を基にレイアウト変更などの大掛かりな改善ではなく、「空調システムの効率化」「排熱ダクトの設置」「サーバラック内の環境改善」などの施策でエネルギー効率を改善した。その緻密な監視活動とPDCAサイクルの確立による改善効果が評価された。

photo SCSKの申請ポイント

国内初となる外気冷却方式を採用したコンテナ型データセンター

 特別賞を受賞したのは、インターネットイニシアティブ。同社は国内初となる外気冷却方式を採用したコンテナ型データセンターを島根県松江市に「松江データセンターパーク」を2011年4月に設置、稼働を開始。ITモジュール「IZmo」とモジュール型外気冷却システムを組み合わせ、季節ごとに「外気運転」「混合運転」「循環運転」の3種類の空調方式を採用。1年間の実証実験を実施した後、同社のクラウドサービスの基盤に活用している。データセンター内の温度/湿度が満たす範囲を規定する国際的な評価基準「ASHRAE 2008」(「アメリカ暖房冷凍空調学会」策定)に準拠し、年間平均pPUE値「1.17」を達成した。国内では珍しい外気冷却方式の採用による省電力化、IT機器に加えてデータセンター全体のきめ細かい電力監視などを実施した点が評価された。

インターネットイニシアティブの松江データセンターパーク
photo グリーン・グリッドの日本技術委員会代表 田口氏

 グリーン・グリッドの日本技術委員会代表 田口栄治氏は「各企業の取り組みは独創的だったり、先進の技術を採用したりとさまざまだが、徹底した監視活動や地道に改善活動を繰り返している点は共通している。IT機器や管理ツールが年々進化しており、今後はよりインテリジェントな制御が可能になるだろう」と語った。

 グリーン・グリッドはこのアワード表彰に先立ち、9月に「データセンターに関する日本の地域特性」というホワイトペーパーを発行している(同団体Webサイトからダウンロード可能)。

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