「データセンター省エネ特別セミナー」リポート(後)
環境配慮型のデータセンター冷却システムを導入したドイツ証券
ドイツ証券は2011年3月から自社のニューヨーク都市部にあるデータセンターに外気冷房システムを採用し、環境配慮型データセンターへの移行を進めている。
前回の「グリーン・グリッドが認めたデータセンター省エネ化策」に続き、データセンター/IT機器のエネルギー効率改善を推進する団体「グリーン・グリッド日本支部」が2011年8月25日に開催した「データセンター省エネ特別セミナー」の講演内容を紹介する。今回は、グリーン・グリッドのアドバイザーを務めているドイツ証券が米国ニューヨーク都市部に建設したフリークーリング(外気冷房)方式を採用したデータセンターを紹介する。
年率20%のCO2削減を目指すドイツ証券
世界70カ国以上で金融ソリューションを提供しているドイツ証券。同社では、2013年までに温暖化ガスニュートラル化を目指し、2007年比で年率20%のCO2削減を達成することを目標に掲げている。
ドイツ証券のグローバルテクノロジー部 インフラストラクチャー部長 ニール・ホーズージョーンズ氏は、その実現に向けて4つの実行戦略を進めていると説明する。「エネルギー使用効率の改善による消費の削減」「ビル設備とITインフラの再設計によるCO2排出量の削減」「再生可能エネルギー利用を促進」「オフセット対応としての認証取得」などだ。また、環境への影響を配慮したITインフラの施策として、有害物質を含まずCO2排出量が少ないIT機器の調達、適切な廃棄処理による機器のライフサイクル管理の徹底、エネルギーの再利用などに取り組んでいる。さらに、シンクライアントやテレビ会議室などを利用し、従業員1人当たりのITエネルギー消費量を半減することを目指している。
外気冷房により、データセンターを冷やしすぎない仕組みを実装
ドイツ証券では、データセンターにおけるIT消費電力対策として仮想化技術の利用によるハードウェア稼働率の効率化などを進め、IT機器や設備に関するエネルギー効率を従来の4倍まで向上させている(関連記事:即効性があるIT消費電力の抑制策とは?)。
同社は、ニューヨーク都市部にあるデータセンターに環境に配慮した外気冷房システムを構築し、2011年3月から運用している。
このデータセンターは築100年の建物に設置され、既に25年の稼働実績を持っている。データセンター内にCRAC(精密空調機)や配水菅はなく、また空調用穴あき床や床下空調などの設備を保有していない。また、ラックごとに消費電力20キロワット以上の高密度サーバを設置しているが、コールドアイルの温度は「15~27」度、相対湿度は「20~80%」の状態を保っている。最大負荷試験において、当初の目標PUE値である「1.17」を達成している(関連記事:データセンターの効果的な冷却を実現する5つの指針)。
ニューヨークの気候は夏の最高気温が40度、冬はマイナス30度まで下がるなど気温の幅が広い。また、相対湿度も50~80%となる。このデータセンターでは従来型の冷却システムを保有しているが、なるべく使用せずにデータセンター内に外気を取り入れて循環させる仕組みを構築している。
外気冷房システムは、エアダンパーやフィルタなどを屋上に配置し、ファンによって室内に外気を供給。冷気供給用ダクトを通してホットアイル/コールドアイルに分けられたデータセンター内のラックを冷却する。ホットアイルの排熱気は、戻りダクトを通じて室外や再循環用ダンパーへと流す。また必要に応じて加湿器を使用。さらに、気温が低い時期には温度維持のために戻り外気を再循環させて利用する。稼働後も徐々に改良を重ね、現在は外気冷房だけでの冷却を実現しているという。
ドイツ証券のグローバルテクノロジー部 運用サービスグループ長、ヨーグ・ワーナー氏は、この外気冷房システムは「特別な冷却設備が必要ないため、通常のオフィスでも実装可能な仕組みである」と自信をのぞかせている。
外気冷房を利用した背景の1つとして、ワーナー氏は「IT機器の温度や湿度などの稼働環境が広くなっている」ことを挙げた。最新のサーバやストレージ、スイッチなど多くのIT機器が、「0~40度」の温度、「10~90%」の相対湿度をその稼働環境範囲としている。しかし、10年前までのIT機器の稼働環境範囲は温度が「20~25度」、相対湿度が「40~50%」などで、その稼働範囲の基準が厳しかったという。また、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が推奨する稼働環境範囲の基準も範囲が狭く、多くのデータセンター運用者がこれを基準にしている。ヨーグ氏は「それらが最新の機器にも適用されていることで“必要のない空調エネルギーが余剰に消費されている”」と指摘した。
ドイツ証券では今後、レガシーシステムの刷新などで、さらなる消費電力の削減に努めるとしている。
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