院内に多様なシステムが存在する医療機関では、単一ベンダーのシステムに統一して情報の連携性を高める手法を採用することも多い。しかし、いわゆる“ベンダーロックイン”の弊害を気にする傾向ももちろんある。
グループ診療クリニックの米The Everett Clinicは、あるITベンダーのアプリケーションを多く利用している。同クリニックは電子健康記録(EHR)の他、診療受け付けやスケジューリング、請求、放射線情報管理システム、医療情報管理(HIM)システムなどに米Epicのシステムを採用している。さらに、システム全体にわたるEHR統合の一環として、同クリニックはEpicが供給するWebアプリケーションも幾つか使用している。
The Everett ClinicのEpic担当ディレクターであるメラニー・バンス氏によると、Epicとの契約では、こうしたさまざまな機能全てに対応する“ワンストップショップ(総合店舗)”として1社のベンダーに頼れる点が大きなセールスポイントになったという。「全てのシステムが上手く調和している。例えばEHRなど、いずれか1つのコンポーネントでデータが変更された場合には、請求ソフトウェアも含めたシステム全体で自動的に情報がアップデートされる。これは、全てのシステムが同一のデータベースで動作しているからこそ可能なことだ」とバンス氏は言う。
「あらゆる情報を1つのデータベースに置けるのは、それだけで非常に有益だ。全てを1つのシステムに持つことには、多くのメリットがある」とさらに同氏。
今日のヘルスケア業界では、こうした考えが主流だ。医療分野の調査を専門とする米KLASが2012年8月に発表した報告書によると、Epicや米Cernerなど、システム全体のEHR統合を約束するEHRベンダーを採用する動きが多くなる一方で、複数のコンポーネントの導入を求めてくる可能性のあるベンダーは敬遠される傾向にあるという。
だが、完全に統合されたEHRシステムを選ぶのが主流だとしても、ヘルスケア分野のITコミュニティーにはこうしたアプローチに疑問を抱き始めている向きもいる。統合されたインフラには、確かにメリットがあるのだろう。しかし、その一方で、面倒な問題を引き起こす可能性もはらんでいる。
バンス氏が指摘している通り、完全に統合されたEHRシステムを選択する最大のメリットは「情報を1カ所にまとめられる」点にある。つまり、プロバイダーのITインフラのさまざまなコンポーネントがシームレスにデータを利用できるということだ。また、全ての要素がモジュール方式で構成されるため、新規にコンポーネントを追加するのが比較的容易だ。ただし、統合されたコンポーネントがデータを効率的に使用でき、構築が簡単であるというだけで、それらのコンポーネントが常にプロバイダーのニーズに最高にマッチするとは限らない。
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