自動化でミスを防ぐ効果も
医療機関こそ「自然言語処理」(NLP)を生かすべき理由と事例
医療機関で生まれるデータは、活用しにくい非構造化データであることが少なくない。自然言語処理(NLP)技術を利用すれば、この未開拓の情報源から、診療に関する有益な洞察が引き出せる可能性がある。
電子健康記録(EHR:Electronic Health Record)システムが医療機関に広く普及して以来、医師は治療計画を立てる際に、患者情報を取得するためにカルテの確認に頼ってきた。ほとんどのEHRシステムでは定形のカルテが作成可能だ。にもかかわらず、依然としてテキスト形式の非構造化データを作成している医師は少なくない。
非構造化データには、診断のための患者情報分析に使うことが困難だという大きな課題がある。自然言語処理(NLP)技術を利用することにより、非構造化データから有意義な洞察を得ることができる可能性がある。
医療関連サービスを提供するAtrius Healthは、2018年からNLPシステムを利用している。このNLPシステムは特定のキーワードおよびテキストパターンに基づいて患者に関する非構造化データを分析し、リスクのある患者を検出する。例えば患者情報の中から歩行能力の低下といった記録を読み取り、老年症候群になる可能性が高い高齢患者を特定することが可能になる。
こうしたプロセスは今まで、完了まで数日かかっていたが、NLPシステムによる自動化で、数分に短縮できる。医療スタッフは医療履歴を確認する必要がなくなり、時間と費用を節約できる。
他にも、NLP技術が患者の非構造化データから貴重な洞察を引き出している、いくつかの貴重な事例がある。
電子カルテの記入や会計処理の自動化など 医療機関のNLP活用事例
ソーシャルメディアからのメンタルヘルス問題の検出
近年、臨床医は、患者の精神状態監視の必要性を強調している。NLPシステムを利用することで、人の感情を表すテキストを分析することが可能だ。中には患者がソーシャルメディアに投稿しれたテキストを収集して分析し、患者の精神疾患の初期兆候を検出する医療向けNLPシステムもある。
診療録からのデータ抽出
医療機関はNLPシステムを使い、医師のメモや口述などのカルテからテキストを検索して、処方箋や病歴など特定のデータ要素を抽出できる。診療報告に含めるべき情報の欠落を指摘することも可能だ。放射線機器会社のRadNetは、放射線情報システムでこの機能を使用して放射線レポートを分析し、品質測定データが含まれていない不備のあるレポートを発見した。
音声の診療記録への変換
クラウド形式の医療向け人工知能(AI)サービスを提供するMModal(M*Modal)は、NLP技術による音声処理サービスを開発している。このサービスは医師の診療中の発言をリアルタイムでテキストに変換し、テキストから処方、ICD-10(ICD:疾病及び関連健康問題の国際統計分類)コード、診療の手順などの特定のデータ要素を抽出し、カルテの適切な項目に自動で入力する。これにより、医師はカルテを自分で記入する必要がなくなる。
保険金請求の二重確認
医師が患者の診療を完了すると通常、次の手続きは会計処理だ。この手続きで、会計担当者は医師がテキスト化した診療内容の記録を確認する。適切な診療内容が記録されていない場合は、健康保険料の請求が認められない。
化学・素材メーカーの3Mは、NLP技術を使用して保険料の請求拒否につながる医療内容の記載ミスを検出する「3M 360 Encompass System」という請求システムを提供している。これにより人手に頼っていた医療内容の確認作業を自動化しながら、正確に会計を処理することができる。
AIツールは、通常は人間が実行するプロセスを自動化する可能性を医療機関に提供する。医療向けNLPシステムは、カルテに記録されていた情報を検出、分析、抽出するサービスと製品の新しいセットとして提供されるようになった。ソフトウェアが人間の会話を理解するための新しい方法も実現しつつある。ただしソフトウェアはいまだに完璧ではない。より多くの医療機関が患者の医療に使用するためには、NLPシステムの継続的なテストが必要になる。
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