英国ピーターバラ市議会は、EMCのSANからBoxへの全面移行を決断し、パイロットプロジェクトを開始した。クラウドストレージへの移行に際して直面した課題とは?
英国ピーターバラ市議会は、クラウドベースのファイル共有サービス「Box」を利用するパイロットプロジェクトの実施に踏み切った。同市議会は2015年までに物理ストレージに保存するデータを最小限に減らし、市議会が保有する全データをクラウドストレージに移行させる計画を立てた。プロジェクトはその施策の一環だ。
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同市議会にはフルタイム勤務の職員が1400人いるが、アウトソーシングも大いに活用している。サービス委託先の例を挙げると英Amey(公園管理、ごみ処理)、スウェーデンのSkanska(道路管理)、地元NPO団体のVivacity(文化、スポーツ、レジャー施設の管理)、英Serco(ITサービス)などがある。
ピーターバラ市議会は全体として米Microsoft製品を利用しているが、歳入の管理には米Oracleの財務アプリケーションと研修プログラムのOracle Academy、社会福祉の分野では英Liquidlogicと英CoreLogicの製品、記録管理には英Northgate Information Solutionsの製品、高速道路の管理には英Pitney BowesのConfirmと、各専門分野で独自の製品も利用している。
「実務的なサービスの大部分をアウトソーシングで戦略的に運用する方針を維持したい。かたやオンサイトの(物理)ハードウェアの多くがEOL(End of Life)となる時期が近づいてきた。そこでわれわれ市議会は、ハードウェアをリプレースする代わりにIT戦略としてクラウドへの移行を試みている」と、ピーターバラ市議会のICT戦略とインフラを担当するプログラムマネジャー、リチャード・ゴドフリー氏は語る。
「(システム運用面の)制限をできるだけ少なくしようと考えている」と同氏は付け加える。「われわれは米EMCのSANを使用してきたが、これが2015年2月にEOLとなる。ハードウェアを更新してその5年後まで使い続けるつもりはないので、他の選択肢を探している」(ゴドフリー氏)
当面の課題は、市の幹部を説得してクラウドへの移行を承認してもらうことだ。
「ストレージ機能をBoxのようなサービスにアウトソーシングするのは合理的だと思うが、その種のサービス自体が、現時点では始まったばかりの状況で先行きが不透明だ。そこで、バックエンドの構成を調整しつつ、パイロットプロジェクトを進めている」とゴドフリー氏は話す。
このパイロットプロジェクトに携わっているのは、総勢20人のICTチームと、少数精鋭の法務担当チームだ。これまでは、各職員の勤務実績や休暇日などのデータを含む個人用ドライブをBoxクラウドへ移行する作業に取り組んできた。
Boxはオンラインでファイルが共有できるクラウドストレージだ。同時に、Active Directoryによる管理、Salesforce.comやMicrosoft Officeなどのビジネスアプリケーションの統合などができる、コラボレーションサービスのプロバイダーでもある。
「職員には、まずはクラウドを使うことに慣れてもらいたい。感覚に慣れれば、問題点や変更したい点に気付けるようになる」とゴドフリー氏は語る。「それから共有ドライブや制限付きのドライブをBoxに移行する。柔軟性の少ないフォルダ構造に慣れた職員にとって、この移行はハードルが高い」(ゴドフリー氏)
同氏によると、パイロットプロジェクトではBoxでMicrosoftのフォルダ構造をエミュレートしていて、ユーザーにはフォルダを操作してもらっているという。このように、ユーザーはサードパーティーのサービスを利用して、(クラウド上で)フォルダ構造を実現することもできる。
「最終的には、全てをBoxに移行させる」と同氏は語る。「ただそのためには、セキュリティに関する課題と、地方自治体向けに英国政府が提供するネットワーク(PSN:Public Services Network)とクラウドを連携させるという課題を解決しなければならない」(ゴドフリー氏)
セキュリティ以外でクラウドストレージへの移行の際の最大の障壁となるのは、データにアクセスするのに(物理ハードウェアへのアクセスに比べて)時間がかかることだ。ゴドフリー氏にとって、レイテンシは悩みの種にはならないのだろうか? それに対する同氏の答えは意外なものだった。
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