導入企業がはまるソフトウェア資産管理の落とし穴Computer Weekly製品導入ガイド

今や必須となったソフトウェア資産管理だが、多くの企業が誤解し、不十分あるいは誤った方法で実施している。米Forresterが、ソフトウェア資産管理の落とし穴とベストプラクティスを伝授する。

2014年06月17日 08時00分 公開
[Eveline Oehrlich,Computer Weekly]
Computer Weekly

 ソフトウェアの調達および利用に関連するコストと、潜在的リスクの増大は企業にとっての懸念材料になる。従って、膨大で複雑なソフトウェア資産を掌握するために、ソフトウェア資産管理(SAM:Software Asset Managemet)機能は「あった方がいい」ものではなく、「なくてはならない」ものと考える必要がある。

 SAMの現状とその方向性について理解するため、ForresterはIT資産管理(ITAM)ニュースやレビューを提供する独立系プロバイダーのITAM Reviewと協力して、ITインフラおよび業務の意思決定にかかわる200人を対象に調査を実施した。

 その結果、ITコスト削減のニーズに押されて企業のSAMに対する関心は高まっており、正式なSAMプロジェクトを展開する組織の多くがコスト的なメリットや潜在的リスクの回避を指摘している。だが、それにもかかわらず、依然として採用に対する昔ながらの障壁が存在していることが分かった。

 特にソフトウェアの場合、完全に、あるいは部分的にでもテクノロジーに依存しないビジネスプロセスは考えにくい。だがソフトウェアライセンスやSaaSサブスクリプションの支出増大に伴い、ソフトウェアの利用に関連したコストやリスクは増大する。それでもSAMに十分なリソースと関心を注いでいる組織は調査対象の39%にすぎなかった。結果として、多くの組織は自分たちがコンプライアンスを順守しているかどうか、ソフトウェアに投資し過ぎていないかどうかについて、ほとんど分かっていなかった。

 2000年初め以降、リスクに敏感なIT幹部はソフトウェアのコンプライアンスを巡る懸念を指摘し、サプライヤーの監査、多額の罰金、会社の評判の低下、さらには経営者が訴追される恐れもあると訴えてきた。しかしそうした懸念は組織全体では共有されず、SAMはあまりに難しく複雑すぎて正当化できないと考えられてきた。結果として、SAMはIT管理者のやるべきことリストの中では優先度が低い位置付けだった。

 だがソフトウェア資産や調達、プロビジョニングプロセスは、管理に不備があるとはいわないまでも不十分な状態にあるとIT部門が認識する中で、状況は変わり始めている。これはソフトウェア調達やプロビジョニング、データセンターとユーザー間の業務運用の責任を担うIT幹部にとって、特に差し迫った問題だ。

 こうした組織は結果的に、必要のないライセンスの購入に毎年相当額のIT予算を浪費している。一般的なものとして、実際に使っている以上の数のライセンスのためのメンテナンス契約料や、引退させるべきソフトウェアのサポートやホスティング経費などがある。こうした時間と予算の浪費は全て、自分たちがどのソフトウェアのために料金を払い、それが何のために使われているのかをIT部門が把握していないために発生する。

 ただし、“SAMに投資すれば必ずソフトウェアへの出費が減る”という保証はないことも理解しておく必要がある。逆に、ライセンスが足りなければ、順守状態とするためにソフトウェアへの出費を増やさなければならない。だが、コンプライアンスと最適化を組み合わせれば、ソフトウェアの無駄を省き、将来的なソフトウェアライセンスやメンテナンスへの出費を避けられる。

 コスト削減はSAMの採用を加速させる要因ではあるが、コンプライアンスは法的義務であり、景気の低迷によってソフトウェアサプライヤーが監査を強化していることを忘れてはならない。

課題の克服

 リスクおよびコスト管理の強化が、SAMの普及を促す原動力になっているのは明らかだ。だがSAMプロジェクト開始に関連した問題や課題は、それほどはっきりしているとは限らない。だが39%の組織が既にSAMを導入し、52%は現在導入中か12カ月以内に導入予定という状況の中で、今こそ既知の課題を克服すべき時といえる。

 SAMのビジネスケースを確立し、人材、プロセス、技術に必要な投資を行うのは難しいかもしれない。特に、既存のリソースを使ってSAM関連の経費削減を部分的に実現するために、その場しのぎのSAM業務を導入している場合はなおさらだ。

 ほとんどのSAMサプライヤーは概念を実証してくれ、営業の段階で顧客の投資対効果検討書作成を支援してくれる。ただForresterの経験では、追加リソースのための投資対効果検討書は、経済状況がさらに安定したとしても難しい。鍵を握るのは、自社のSAM構想を事業目標に結び付け、SAMがソフトウェアのインストール数をカウントするのではなく、コスト削減とリスク低減を通じていかに事業に好影響を及ぼすかを示すことだ。

 SAMプロフェッショナルの人材は乏しい。しかし適切な人材をSAM要員として配置することは、成功のために不可欠だ。ほとんどのソフトウェアサプライヤーや、サードパーティーのコンサルティング組織では目的に沿ったSAMプロセスを提供してくれるが、適切な人材を採用したり、新しい技能を習得させたりする上で問題は残るかもしれない。

 しかもSAMは他の業務を掛け持ちするパートタイム従業員には勤まらない。SAMプログラムは良くても次善のものにしかならない。最悪の場合、めったに使わないデータ満載の高額なSAMツールを手にすることになる。多くの組織にとって、SAM業務を外部に委託してサードパーティーの人材や可用性、スキル、経験を活用することは現実的な選択肢になりつつある。

 ほとんどのソフトウェアソリューションにいえることだが、1つで全てをこなすことはできない。従って、実際に必要なものに重点を絞り、使いもしない素晴らしい機能に惑わされるのは避けなければならない。だが残念なことに、この誘惑が大きすぎることも多いようだ。Forresterの調査では、自社のSAMツールに満足している組織は24%にすぎない。それでも今後2年以内にSAMソリューションの変更を計画しているのは12%にとどまった。

 新しい、あるいは既存のSAMツールセットはこうした発見から最適化への変更を反映している必要がある。さらにSAM担当者には、ライセンスモデルに関する十分な知識と、情報に基づいて決定を下す権限が求められる。そのためには目的に沿った人材を配置するだけでなく、研修や教育を続ける領域にまで踏み込まなければならない。

 例えば仮想化は、ライセンスや権限モデルの複雑化という問題と、どのソフトウェアがどこで使われているかが分かりにくくなるという2つの問題をもたらした。今はこれにクラウドが加わって一層複雑さは増している。SAMプログラマーは現在も、技術の変化に追い付いていない。

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4月16号掲載の「ソフトウェア使用許諾をめぐる訴訟でパンドラの箱を開けたOracle」では、ソフトウェアの保守、管理をアウトソーシングしていた企業がOracleから訴えられた事例を紹介。ソフトウェア資産管理と並行して、使用許諾条件の再確認も必要だ。


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