「サイバーセキュリティ保険」を正しく理解する【第2回】
「サイバーセキュリティ保険」がなかなか普及しない“本当の原因”とは?(1/2 ページ)
「サイバーセキュリティ保険」はサイバーリスクの移転手段の1つであるが、国内では認知、加入共に進んでいるとはいえない。その理由とは何か。現状の課題を整理する。
第1回「今更聞けない『サイバーセキュリティ保険』の真実、何をどう補償するのか?」では、サイバー攻撃の被害を総合的に補償する「サイバーセキュリティ保険」は特に海外で加入が増えていることを説明した。会計事務所PricewaterhouseCoopers(PwC)の予測では、サイバーセキュリティ保険の市場規模は2020年までに75億ドルに達するという。
一方で国内における市場規模は、2014年度に105億円(日本ネットワークセキュリティ協会発表)と、ようやく100億円台を超えた段階だ。さらにIDC Japanが2016年4月に発表した「2016年 国内企業の情報セキュリティ対策実態調査」の結果によれば、国内企業のサイバーセキュリティ保険への加入率はまだ1割程度と、現状では十分に浸透しているとはいえない。
なぜ国内では、サイバーセキュリティ保険の普及が遅れているのだろうか。
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「認知度の低さ」が普及の壁なのか
原因としてよく挙がるのが認知度の低さだ。情報処理推進機構(IPA)が2015年6月に発表した「企業におけるサイバーリスク管理の実態調査2015」の結果によると、サイバーセキュリティ保険の認知度は、調査対象企業全体の28.2%だった。約3割の認知率というのは、確かにそれほど高いとはいえない。
だが調査結果を詳しく見ると、少し見え方が変わってくる。大企業(同調査では「年間売上高10億円以上の企業」と定義)のリスク管理者やIT部門の責任者は、サイバーセキュリティ保険について認知している割合が41.8%と4割を超えた。情報セキュリティに関する事故を経験したことがある企業の場合は55.4%、プライバシーマーク(Pマーク)を取得している企業の場合は56.0%と、さらに認知度が高かった。
加えて、前出のIDC Japanの調査によると、サイバーセキュリティ保険への加入を予定、あるいは検討している国内企業は3~4割にも上った。サイバーセキュリティ保険の存在を認知しているにもかかわらず、加入に踏み切っていない企業がこれだけ存在することになる。こうした状況を踏まえると、サイバーセキュリティ保険自体の認知度の低さだけが、普及が進まない原因だとは言い切れない。
保険料の分かりにくさが普及の妨げに
他の原因として考えられるのは、サイバーセキュリティ保険にどれほどの投資対効果があるのかが分かりにくい、という問題だ。
第1回で述べた通りサイバーセキュリティ保険は、従来のIT関連の賠償責任保険と比べて幅広いセキュリティの脅威に対処するために、補償対象となる事故の内容や発生場所の制限を比較的少なくしている。このため不確実性を織り込んで、保険料が比較的高めに設定されている可能性は否定できない。一方で企業の意識としては、特に企業規模が小さくなるほど、保険料負担を低く抑えたい傾向がある。
サイバーセキュリティ保険の保険料は一般的に個別見積もりで、業種や売上高、補償限度額などによって変化する。東京海上日動火災保険が提供する「個人情報漏えい保険」は、保険料のモデルケースとして、年間売上高30億円の情報サービス事業者で、補償限度額が賠償責任部分5000万円、費用損害部分1000万円の場合、年間約30万円(保険金支払時に自己負担する免責金額は10万円)だと例示する。一方でAIU損害保険の「CyberEdge」は、売上高100億円規模のIT企業で、補償限度額が最大5億円の場合、年間400万円程度になるという(参考:@IT「フォレンジック費用も含めたサイバー攻撃損害保険」)。
前出のIPAの調査によれば、サイバーセキュリティ保険に加入する場合に想定する年間保険料は「30万円未満」だという企業が全体の44.2%を占める。各保険会社が、保険料に対する補償額について企業が納得できる説明ができるかどうかが、普及の鍵を握る。
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「サイバーセキュリティ保険」を正しく理解する
サイバー攻撃などによる被害を補償する「サイバーセキュリティ保険」。その補償内容はどうなっているのか。最新の動向は。徹底解説する。
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