ロボティックプロセスオートメーション(RPA)は、定型作業を自動化できる技術として高度化し、現在ではレガシーアプリとクラウドアプリをつなぐ用途でも活用が始まっている。
人工知能(AI)や自然言語処理の進歩によってロボティックプロセスオートメーション(RPA)の技術も進み、最高技術責任者(CIO)の関心が高まっている。かつてはスクリーンスクレイピングツールと大差なかったが、今では人間の手作業を含むさまざまな定型作業を自動化できる高度な技術に進化した。
用途の幅も広がっており、レガシーアプリとクラウドアプリをつなぐ作業も新しい使い道の1つだ。レガシーアプリはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)からしか操作できないものが多い。RPAで抽象化層を提供すれば、そうしたインタフェースとクラウドアプリの間のデータ転送を自動化できる。
調査会社Forrester Researchの主席アナリスト、クレイグ・ルクレア氏は「RPAは人間と機械の間のインタフェースに対応できる。システムとシステムの間を処理するAPIとはそこが違う」と話す。
同氏はデスクトップやWebのUI(ユーザーインタフェース)からしか操作できないアプリは約7割に上ると推定する。RPAにはこれを自動化するデスクトップスマート機能があるが、アプリの変更に弱いという短所がある。その点でいえば、APIを使う方がアプリの変更と接続性の問題を切り離すことができる。
「頻繁に変更されるアプリではbotが動作しなくなり、メンテナンスのコストがかかる。そのようなアプリにはAPIの作成を検討する方がいい」(同氏)
RPAは、オンプレミスのレガシーシステムからデータを取り出し、新しいクラウドシステムに渡すために利用できる。例えば、保険金請求や人事情報のデータをクラウドに転送するような場合だ。
HfS ResearchでRPAカスタマーエクスペリエンス担当リサーチディレクターを務めるジョン・オブライエン氏は「これはレガシーシステムやレガシープロセスをデジタル化したい場合に便利だ」と話す。
レガシーアプリとクラウドアプリの間をつなぐ方法としてはAPI統合もあるが、RPAより時間と費用がかかり、拡張しにくいマイクロサービスが増えることになるという。
「ERP層に特化したRPAツールなら同じ水準のコンプライアンス対応と統合を実現でき、はるかに少ない費用で済む」と同氏はいう。ただし、大規模なIT転換プロジェクトの場合はAPIの方が適していると付け加えた。
RPAを利用する主な利点は、レガシー資産の統合抽象化を新しいプロセスに複製、再利用でき、素早くスケールアウトできるところにある。
SaaS(Software as a Service)の背後でレガシープロセスやレガシーシステムを実行している企業では、自動化をスケーリングできる機能は不可欠だ。新しいRPAツールでは、「Salesforce」などのクラウドプラットフォームに組み込まれている自動化機能に合わせてレガシープロセスを自動化でき、APIを使わずに済む。
ビジネスプロセスアウトソーシングベンダーのRadialは、Pegasystemsの「Pega Robotic Process Automation(RPA)」と「Pega Robotic Desktop Automation(RDA)」をクラウドシステムとレガシーシステムの統合に利用している。同社のデータアナリティクス担当ディレクターであるロビン・ゴメス氏は「RPAのおかげでレガシーシステム用に新しいAPIを作成したり保守したりする必要がなくなった」と話す。これによってサポートへの問い合わせも減るという。
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