ウクライナ電力網の停止を狙ったマルウェアが「他の地域にも広がる」は本当?ウクライナのインフラを狙うロシア【後編】

ウクライナの電力施設へのサイバー攻撃に悪用された「Indestroyer2」には、セキュリティ専門家が懸念する特徴が存在する。どのような問題があるのか。

2022年05月19日 05時00分 公開
[Shaun NicholsTechTarget]

関連キーワード

セキュリティ | 標的型攻撃


 マルウェア「Industroyer」の亜種である「Industroyer2」が、ウクライナの電力施設の産業用制御システム(ICS)を狙ったサイバー攻撃に悪用されたことが分かった。ウクライナのサイバー攻撃対処チーム「CERT-UA」と、セキュリティベンダーESETは、ロシア政府から支援を受ける攻撃者集団「Sandworm」がこの攻撃を仕掛けたと推測する。

 CERT-UAによると、攻撃者はIndustroyer2を悪用して、ウクライナの1つの匿名組織に攻撃を2回実行した。これまでのところ、電力網に障害を引き起こすには至らず「悪意のある計画の遂行は防げている」という。ただし楽観視はできない。

電力施設以外、ウクライナ以外にも危害が及ぶ可能性

会員登録(無料)が必要です

 単一のハードウェアに標的を絞ったマルウェアには前例がある。一例がワーム(自身を複製して他のシステムに拡散させるマルウェア)「Conficker」だ。Confickerは、イラン政府が核兵器開発に流用する疑いのあったウラン濃縮施設を標的にした。Confickerは「Windows」搭載システムを対象とする一方、「Linux」「Solaris」といったOSの搭載システムを攻撃するための機能も持つ。

 ウクライナでの紛争は世界中が注目する重大問題だ。ロシアのサイバー攻撃は他の地域にも及ぶ可能性があり、紛争に関与していない国にも不安をもたらす。

 ESETの研究者は、Industroyer2は1回限りの攻撃ではなく、他の地域にあるシステムへの攻撃にも使用される可能性に言及する。興味深いのは、Industroyerが発見されてから今回の攻撃まで5年以上が経過していることだ。ESETは、Industroyer2による攻撃を報告した公式ブログにおけるエントリ(投稿)で、次のように説明する(編集部が一部補足)。

Industroyer2は細かい設定が可能です。Industroyer2の動作に関する詳細な設定は、ハードコーディング(ソースコード内に直接記述)されています。この方法は、マルウェアの設定をマルウェア本体とは別のファイルに保存していたIndustroyerとは異なります。そのためIndustroyer2は、新しい標的ごとにコンパイル(実行可能ファイルを生成)し直す必要があります

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

AIの悪用でフィッシング攻撃が巧妙化、今後の予測と防御方法を解説

今や誰もが入手可能となったフィッシングツール。そこにAIの悪用が加わり、フィッシング攻撃はますます巧妙化している。本資料では、20億件以上のフィッシングトランザクションから、フィッシング攻撃の動向や防御方法を解説する。

技術文書・技術解説 ServiceNow Japan合同会社

限られた人材でインシデントや脆弱性への対応を迅速化、その鍵となるのは?

セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。

製品資料 LRM株式会社

開封率から報告率重視へ、重要な指標をカバーする標的型攻撃メール訓練とは

年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。

製品資料 LRM株式会社

新入社員の情報セキュリティ教育、伝えるべき内容と伝え方のポイントは?

従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。

製品資料 LRM株式会社

2024年発生のインシデントを解説、組織全体でのセキュリティ意識向上が不可欠に

2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。