北朝鮮ハッカー、身分を装い米国企業に「入社」 AIでできる驚きの攻撃とは人工知能悪用にFBIが警鐘

人工知能(AI)技術を悪用し、攻撃の手口を巧妙化させる動きが加速化している。FBIも動いた、AI技術が可能にする「見破りにくい攻撃」とはどのようなものなのか。

2025年01月20日 05時00分 公開
[Arielle WaldmanTechTarget]

 攻撃者が標的をだます手口は、不正リンクをクリックさせたり、送金させたりするだけではない。新たな手口として、人工知能(AI)技術を使ったツールの悪用が広がっている。米連邦捜査局(FBI)がまとめた報告書を基に、AI技術の力を借りたソーシャルエンジニアリング(人の心理を巧みに操って意図通りの行動をさせる詐欺手法)の手口と、それに対抗するためのポイントを探る。

ここまで可能になった“AI技術を悪用した攻撃”

会員登録(無料)が必要です

 FBIはこのほどまとめた報告書で「犯罪者はAIツールを悪用することで被害者を信用させ、詐欺行為を大規模に展開している」と警鐘を鳴らす。FBIによると、AI技術は例えば以下の目的で使われている。

  • おおむね文法が正しく、表現も自然な文章の生成
  • 著名人やビジネス関係者を装った画像や音声の生成
  • SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のプロフィール作成

 FBIによれば、ソーシャルエンジニアリングの手口そのものは依然として変わっていないが、AI技術を利用することで、被害者にとっては詐欺であることを見破りにくくなっている。例えば、AI技術が生成した偽の動画や音声をビデオチャットに組み合わせれば、被害者は実在する人と会話していると信じ込んでしまう。「AIツールで偽の運転免許証や、警察官や銀行員を装った証明書が作成されることもある」(FBI)

推奨の予防策

 FBIが推奨する予防策は以下の通りだ。

  • 家族や職場で「自分が本物であることを証明する」ための合言葉を決めること
  • できる限り、自分の画像や音声をインターネットで公開しないこと(攻撃に悪用される恐れがあるため)
  • 常に攻撃を意識し、閲覧する画像や音声の「わずかな不自然さ」に敏感になること

AI技術を悪用した攻撃事例

 FBIがAI技術を使ったソーシャルエンジニアリングについて注意を呼び掛けている背景には、攻撃の“成功事例”が増えていることがある。攻撃者の中には、ロシアや北朝鮮など国家が関わっている集団もあり、攻撃活動のさらなる活発化が予測される。2024年、AI技術が悪用された攻撃事例として下記の2つを挙げられる。

  • 2024年初め、セキュリティトレーニング事業を手掛けるKnowBe4に、北朝鮮の攻撃者が身分を偽って入社。同社の機密情報へのアクセスを試みた。攻撃者はAI技術で生成された捏造(ねつぞう)動画「ディープフェイク」を用いて、4回にわたるビデオ面接を通過し、採用に至った。履歴書の作成にもAI技術が使用されていたとみられる。
  • 2024年11月の米大統領選挙の前、ロシア政府に支援されるとみられるサイバー犯罪集団「Storm-1516」がAI技術によって生成された動画を使い、選挙関連の偽情報を発信していた。Microsoftが調査し、明らかにしている。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 LRM株式会社

開封率から報告率重視へ、重要な指標をカバーする標的型攻撃メール訓練とは

年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。

製品資料 LRM株式会社

新入社員の情報セキュリティ教育、伝えるべき内容と伝え方のポイントは?

従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。

製品資料 LRM株式会社

2024年発生のインシデントを解説、組織全体でのセキュリティ意識向上が不可欠に

2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。

製品資料 LRM株式会社

効果が見えにくいセキュリティ教育、効率的かつ効果的な教育をどう実現する?

多くの企業が従業員のセキュリティ教育に取り組んでいるが、効果を正確に測ることが難しいため、目標設定や運用に悩むケースも多い。本資料では、セキュリティ教育の課題について述べた上で、効果的な教育を実現する方法を紹介する。

製品資料 LRM株式会社

インシデント抑制のために必要な、情報セキュリティ教育の在り方

セキュリティ認証を取得していない企業でも、サイバー攻撃の被害を防止したり最小化したりする上で情報セキュリティ教育は極めて重要だ。教育における要点とともに、主要な4つの教育方法について、メリットとデメリットを含めて紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。