IT部門に突き付けられた新たな課題
最短6カ月ごと 高頻度アップデートの「Windows 8.1」に付いていけない人
「Windows 8.1」アップデートのリリースサイクルが短縮したことは、大企業のIT部門に大きな作業負荷をもたらすだろう。業界の専門家は、IT部門が更新プログラムを入念に検証する時間を確保できないと指摘する。
米Microsoftが「Windows 8.1 Update」のリリースサイクルを短縮したことは、大企業のIT部門に測りきれない負担を強いている。管理者はWindowsクライアントとサーバを同じタイミングで更新する必要がある。だが、適切な導入テストを行う時間がない。
また、Windows 8.1ユーザーが今後リリースされるセキュリティ/非セキュリティ更新プログラムを受け取るには、最新の更新プログラムが適用されていることが条件となる。これらのクライアントアップデートの導入は「Windows Server 2012 R2」「Microsoft Visual Studio」「Windows Intune」「Microsoft Azure」など他のMicrosoft製品にも関係がある。
複数のプラットフォームをつなぐWindowsのアップデートリリースサイクルが短縮されたことによって、大企業のIT部門は、更新プログラムを入念に検証する時間を取ることができないと業界の専門家は指摘する。
6カ月サイクルが大きな問題に
2014年4月後半に開催されたWindowsロードマップに関するWebセミナーで米ワシントン州のカークランドにあるコンサルティング会社Directions on Microsoftでアナリストを務めるウェス・ミラー氏は次のように語っている。「3年というサイクルに対応するのも楽なことではなかった。1年サイクルになったときには対応がさらに困難になった。そして、現状の6カ月というサイクルは大きな問題になっている」
「テストを迅速に行うための準備を整えることが重要だ」(ミラー氏)
現在、ほとんどの企業が「Windows 7」を使用している。しばらくは、Windows 7を使い続ける予定だろう。そのため、「Windows 8.1」のアップデートリリースサイクルの短縮の影響は今のところ最小限にとどまっている。
「アップデートのリリースサイクルの短縮は、多くの企業がWindows 8/8.1の実装を回避する新たな理由となるだろう。Microsoftは、そのしっぺ返しを食らう可能性がある」と語るのは、米ミシガンの公益事業会社でITマネジャーを務めるマット・コシュト氏だ。
法規制に従う必要のある企業では、アップデート導入前にアプリケーションのテストを行わなければならない。このような企業のIT部門はMicrosoftの新しいアップデートのリリースサイクルを特に厄介だと感じている。
「MicrosoftはWindowsがクラウドサービスのように動作することを目指している。だが、サードパーティー製ソフトウェアに関していえば、このようなアップデートのリリースサイクルにはとにかく対応できないだろう」とミラー氏は語る。
アップデートのリリースサイクルの短縮は、ウイルス対策ソフトベンダーなど、一部のソフトウェアメーカーにとっては大きな問題となるだろう。「多くの企業は『Internet Explorer 8』以降のInternet Explorer(以下、IE)にすら付いていくことができていない。また、64ビット版Windowsのサポートにも対応していない。このような状況を考えると、Windows 8.1を受け入れる可能性はさらに低い」とコシュト氏はいう。
Windows 8.1 Updateが抱える問題
「Windowsの補修を行うことは容易ではない。だが、4月にリリースされたパッチは、幾つかの問題に対応しているため特に複雑だ」とミラー氏は指摘する。4月上旬、「Windows 8.1 Update」のバグがWindows Server Update Servicesに影響するという事象が発生した。その結果、Windows 8.1では会社のアップデートサービスをスキャンできなくなった。
ミラー氏はWebキャストで次のように発言している。「アップデートの配信方法は大きく変化している。『Windows Phone』と同じような配信方法にして、タッチ操作に対応していないデバイスの問題に対処しようとしているようだ。これは厄介な変化だ。テストを行うための、より広範囲に配布される企業向けのプレビュー版が提供されることを願う」
Microsoftが、時間のかかるIT部門によるWindows 8.1のテスト作業を困難にしているという意見に同調する業界関係者もいる。特に、国や地方自治体が定める法規制に従わなければならない企業では、それが顕著だ。だが、アップデートのリリースサイクルが短縮されることは、しばらく前からユーザーに通知されていたと付け加える。
「このアップデートのリリースサイクルの短縮は最初から予定されていた。最新バージョンのWindows 8を導入している場合、この変化は想定されていたはずだ」とあるMicrosoftの関係者はいう。
そして、次のように続ける。「Microsoftは2006年にライフサイクルポリシーを正式発表して以来、この分野の基準を打ち立ててきた。だが、表面的には、このアップデートのリリースサイクルの短縮は、そのことをなかったことにしているように見える」
「Windows Server 2012」を導入していても、Windows Server 2012 R2に移行するにはアップグレードが必要になる。
Webセミナーの後に実施されたインタビューでミラー氏は次のように話している。「Windows Server 2012 R2への移行は無料アップグレードではない。そのため時間だけでなくコストが掛かる。また、ハードウェアのアップグレードが必要になることもある。だが、ハードウェアインフラ全体をアップグレードする必要はない。ファイルサービスに重点をおいているドメインコントローラー専用のサーバのみがアップグレードの対象になる」
短期サイクルでリリースされるアップデートがWindowsの新しい標準に
アップデートのリリースサイクルが短縮されることを重要な問題と見なしていないIT担当者もいる。
「MicrosoftがWindows Server 2012 R2へのアップグレードを強いるのであれば問題だろう。だが、アップデートのリリースサイクルの短縮が必ずしもWindows 8.1 Updateに移行する意欲を削ぐとは限らない。少なくとも1年は移行に対応する必要はないからだ」と米ヒューストンのWiPro Technologiesでソリューションアーキテクトを務めるマイク・ドリップス氏はいう。
また、結果に目を向けている人もいる。マウス/キーボードのサポート強化、タッチ操作非対応デバイスでWindowsストアアプリの無効化、IE 11のエンタープライズモードなど、頻繁なアップデートにより、Windows 8.1がエンタープライズデスクトップへと生まれ変わる可能性は高くなっている。
Microsoftが重要なパッチを毎月リリースしていることを考えれば、アップデートのリリースサイクルの短縮は大きな変化ではないとドリップス氏は補足する。
また、コシュト氏は次のように持論を展開する。「IT部門が6カ月というリリースサイクルに対応するための改革を行えば、次のアップデートまでに生じる漸進的な変更は小さくなり、問題なくテストできる。この変更は継続的なソフトウェアのアップデートという新しい標準に付随するものとなるだろう。Windowsを米Appleの『iOS』や米Googleの『Android』と比較した場合、iOSやAndroidでは、さらに短い期間で大幅なアップデートが行われている」
また、パッチの適用がどんなに面倒だとしても、セキュリティを確保するには、短いサイクルでアップデートをリリースしなければならない。
「IT部門にとって、パッチの管理とテストは面倒な作業だ。これは今後も変わることはないだろう。Patch Tuesday(米国時間の毎月第2火曜日にリリースされるMicrosoftの定例パッチ)の後にリストを調査するときには戦々恐々としている。このリストにあるものは可能な限りサードパーティー製ソフトウェアとの互換性のテストを実施する必要があるからだ」と語るのは、米ロードアイランド州のプロビデンスにあるRhode Island Blood Centerでシステムマネジャーを務めるデイビッド・レイノルド氏だ。
「IT部門は、もう少しスムーズにテストとパッチの適用を行えるようになる必要がある。ITの世界では6カ月は長い時間だ。セキュリティホールは、その情報が明らかになってから数時間もあれば悪用される。数カ月後については言うまでもない」(レイノルド氏)
「Windows 7とWindows 8はどちらも安定している。そのため、IT部門は安定性を確保するために、これらのOSをできるだけ長く使用したいと考えるだろう」とミラー氏は話す。だが、Windows 8のサポートには期限がある。IT部門は、たった1年程度で少なくともWindows 8.1にアップデートしなければならない。
「いつまでもWindows 8を使い続けることは不可能だ」(ミラー氏)
Windowsのアップデート適用を先延ばしにする
Windows 8.1クライアントでWindows Serverのアップデートが検出される動作を停止するには、IT部門はクライアントをサーバから切り離す必要がある。この措置はBYOD(私物端末の業務利用)シナリオで最も有用だ。システムをアップデートするかどうかはユーザーが決められるので、IT部門の準備が整うまで会社のサーバでアップデートが強制されることはない。
また、管理されていないBYODシステムにはグループポリシーを適用するよりもOMAデバイスマネジャーやWindows Intuneの使用をお勧めする。これはMicrosoftが「サービスとしての管理」を推進していることが現れている取り組みの1つだ。
「グループポリシーは今も現役で使用されている。だが、以前ほど重宝されていないのが現状だ」とミラー氏はいう。
今後リリースされるアップデートを受け取るにはWindows 8.1 Updateが必要になる。そのため、IT管理者は問題が発生し得る箇所を突き止めなければならない。
ミラー氏はWebセミナーで次のように述べている。「アップデートが問題ないことを確認するのはIT担当者にとって重要な任務である。だが、問題が発生するのは、Microsoftが無視した見えない場所か、問題ないと判断した場所か、把握していない場所のいずれかだ」
「Microsoftと強いコネがある場合は、“アップデートのリリースサイクルの短縮”“アップデートのリリース時期が不明瞭であること”“テストを実施できないこと”はWindowsを使いづらくするという点をMicrosoftに主張し続けていただきたい」とミラー氏は呼び掛けている。
Microsoftは企業ユーザーから寄せられているアップデートに関する懸念事項には答えていない。広報担当者によると、Microsoftはリリースを監視し、企業ユーザーから寄せられている管理と導入のタイムラインに関するフィードバックに耳を傾けながら、企業ユーザーに対する新しいアプローチについて話し合っているところだという。
Microsoftは4月末ごろに、企業ユーザーが新しい製品アップデートを導入する期限を30日から120日に延長している。これは2014年8月12日のアップデートのリリースサイクルに合わせた形の対応だ。
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