「Windows RT」の救済にも活用?
無視できない“幻のWindows DaaS”が持つ本当の価値
Microsoftが2014年5月に発表した「Microsoft Azure RemoteApp」は、多くの人が想像していたWindowsデスクトップOSベースのDaaSというよりも、任意のアプリをラッピングしてAzure上で実行する「Microsoft Azure上のApp-V」といわれている。
米Microsoftが2014年5月上旬に「TechEd North America 2014」でプレビュー版の公開を発表した「Microsoft Azure RemoteApp」(開発コード名:Project Mohoro)は、IT担当者が期待したWindows DaaS(Desktop as a Service)とは少し違っていた。
Project Mohoroは、MicrosoftによってホストされるWindows OSベースのDaaSになると考えていた人が多かった。しかし、Azure RemoteAppはあくまで別の方式のDaaSであり、「Microsoft Azure上のApp-V」と評する向きもある。
「Azure RemoteAppでは、任意のアプリをラッピングしてAzure上で実行できる。ユーザーは専用リモートセッションを使っているかのようにそのアプリにアクセスできる」と、Microsoftの計画に詳しい情報筋は説明する。
Azure RemoteAppについては、「既存のリモートデスクトッププロトコル(RDP)技術のスピンオフ」との指摘もある。
「これは“Desktop as a Service”というよりも、“Applications as a Service”に近い」と同情報筋は語る。「以前からあるコンセプトにひねりを加え、Azureを使ってアプリケーションをホストするようにしたものだ」
米Citrix Systemsも2014年5月初めに、IT管理者がモバイルワークスペースを設計し、さまざまなパブリッククラウドから提供するためのプラットフォームを実現する「Citrix Workspace Services」の計画を発表した。AzureがWorkspace Servicesのコントロールプレーンの役割を果たし、Azure RemoteAppも連係して機能する。
「Citrix Workspace Servicesを使う場合、Azure RemoteAppを組み合わせて運用できる」と、Project Mohoroに詳しいある業界ウオッチャーは語る。「1990年代末のCitrix製品とターミナルサービスの関係の再現だ。今回は全てがクラウド上で行われるようになっただけだ」
Azure RemoteAppによってIT担当者は、ビジネスアプリを新しいOSもしくはモバイルデバイスに移植する新たな方法を得ると、Microsoftの計画に詳しい別の情報筋は語る。ファットクライアントアプリはもともとクラウドに対応していないが、企業はこのサービスによって、こうしたアプリをAzureで実行し、RemoteAppプログラムとしてRDP経由でリモートユーザーに提供できるという。
Azure RemoteAppでは、利用企業がアプリのブランドを変更し、自社の環境のネイティブアプリのように見せることもできる。
Azure RemoteAppの普及の成否は、運用できるアプリの数や、アプリが提供可能になるまでにどれだけの時間がかかるかによって左右されそうだ。
「私がIT部門の担当者で、Microsoftが私にAzure RemoteAppを売り込んできたら、真っ先に聞きたいことは、『Microsoftのアプリ以外にどのようなアプリがサポートされるのか』『それらのアプリはどのようなスケジュールで実装されるのか』だ」と、米WiProのソリューションアーキテクトを務めるマイク・ドリップス氏は語る。
アプリケーションを利用するのにインターネット接続が必要なことや、Azureで障害が発生する可能性があることも懸念材料だ。
「インターネットは酸素とは違う。どこでも必ず使えるとは限らない」(ドリップス氏)
また、アプリケーションをクラウドから提供するのが新しいことではないのは確かだ。既にIT部門は、集中管理のために多くのアプリケーションをクラウドでホストし、リモートエンドユーザーに提供している。
「これはMicrosoftの後追いサービスだ」(ある情報筋)
しかし、顧客にとってもMicrosoftにとっても、新サービスには価値がある。
「Microsoftとしては、続々と登場しているDaaSの対抗サービスを投入する必要がある。手持ちの技術を使ってそのサービスを手掛けなければならない」と、ITコンサルティング会社の米Directions on Microsoftのアナリスト、ウェス・ミラー氏は指摘する。
「Microsoftがこのサービスを提供すれば、Windowsクライアント管理の複雑で面倒な部分が軽減される」(ミラー氏)
Azure RemoteAppは、「Microsoft Surface」などMicrosoftのハードウェアに対応したエンタープライズアプリケーションが増えるきっかけになるかもしれない。Windows RTベースのSurfaceでは、「Microsoft Project」や「Microsoft Visio」のような製品は動作しない。しかし、こうしたアプリケーションがサービスとして提供されれば、エンドユーザーはそれらをWindows RTベースSurfaceでも実行できる可能性がある。
Microsoftは現在、Azure RemoteAppプレビュー版の試用を広く呼びかけている。
DaaSのライセンス条件変更を回避したMicrosoft
IT業界ウオッチャーは、MicrosoftがWindowsクライアントOSを使った本格的なDaaSを投入すると予想していたが、その場合、同社はWindowsクライアントのサービスプロバイダーライセンス契約(SPLA)を変更する必要があった。
現在のSPLAでは、DaaSプロバイダーがマルチテナントクラウドからWindowsクライアントOSを提供することは禁じられている。そこで「Amazon WorkSpaces」などのDaaSでは、Windows ServerがデスクトップOSとして実行されている。Azure RemoteAppでも同じアプローチが取られているため、SPLAが変更されることはないとみられている。
Microsoftは2014年に入り、ユーザー数が最大1500人までのIT利用企業に対しても、「Microsoft Azure仮想マシン」を使ったデスクトップ配信を開始している。このデスクトップ配信は、Azure仮想マシンを使ったWindows ServerベースのWindowsデスクトップおよびアプリケーションを、マルチテナント型で利用するものだ。
Microsoftからコメントは得られていない。
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