インドネシアでインテリアデザインと家具を手掛けるPT Gema Graha Sarana(Gema)は採用と新人研修のプロセスを自動化し、欠員の補充にかかる時間が平均で20%短縮した。従業員による申請が承認されるまでの時間は3日から1日に短縮された。(続きはページの末尾にあります)
ITエンジニアの需要は世界中で高まり続けている。給与が上がるキャリア形成を考える場合、「どのような技術を身に付けるか」とともに「どの都市で働くか」も考慮したい。成長株の都市を紹介する。
ITエンジニアとしてのキャリア形成を考えた時、業務内容や給与だけでなく「どの都市で働くか」も重要なポイントになる可能性がある。世界中のITエンジニアが熱視線を送る、IT産業が活況な5都市を紹介する。
英国ではIT業界の女性比率が下がる傾向にある。出産や介護などのライフイベントで業界を離れざるを得なかった女性が復職して働き続けられるように、企業はどのような施策に力を入れる必要があるのか。
テレワークからオフィスワークへの回帰は、決して簡単な決断ではない。テレワーク制度を縮小し、週5日のオフィス出社を再開させた企業は、ある深刻な問題に直面した。それは何なのか。
シリコンバレー銀行の破綻によって、ある給与計算システムが機能停止に追い込まれた。このトラブルに巻き込まれた給与計算システムベンダーが事態を振り返る。
いつかAIに仕事を奪われるのではないか――。しばしば起こるこの議論が、OpenAIの「ChatGPT」登場によって再燃した。ChatGPTは人事部門の仕事を奪うのか、奪わないのか。専門家の答えは。
「クワイエットハイヤリング」(静かな採用)が、人事のトレンドになる可能性がある。人材不足の解決策になることを専門家が期待するこの施策は、どのようなものなのか。
American ExpressがIT人材の採用を強化している。優秀な人材を獲得するために同社が用意する「高い給与よりも価値がある“報酬”」とは何か。
米国のHR TechベンダーDegreeは、従業員の「人工妊娠中絶手術のための旅費」を補助することを決断した。法的リスクがある中で、取り組みの実施を決めた同社CEO。その決断の背景とは。
人材獲得競争が激化する中、米国では「海外人材の越境採用」が活発化。180カ国を対象とした人材採用サービスを提供するベンダーも登場している。こうしたサービスが支持される背景とは。
好調が続く「HR Tech」市場。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが追い風となっているものの、活況の理由はそれだけではない。何が起きているのか。
自動化技術普及に伴い、従業員のソフトスキルがますます重視される可能性がある。それはなぜなのか。今後、どのようなソフトスキルが求められるのか。専門家に聞いた。
賃金格差解消のために、米国の一部の州は新しい法令を定めている。カリフォルニア州はどのような施策を実施するのか。
「同一労働同一賃金」は米国企業にとって、人材を集める手段として考えられていた。だが同一労働同一賃金の法制化が一部の州で進みつつあることで、この考えは変わる可能性がある。どのように変化するのか。
さまざまな人材の活用を支援する「DEIB」ツール市場が拡大している。その背景には何があるのか。調査結果を交えて現状を整理する。
企業の間でテレワークを推奨する動きが広がり、新型コロナウイルス感染症の収束後も定着すると予測する識者は少なくない。だがコミュニケーションの課題からそれを否定する声もある。
ある調査結果によると、働く場所や時間を従業員自身が自由に決められるような柔軟な業務ポリシーがある企業ほど、求職者の支持を集める可能性がある。
従業員エンゲージメントが重要視されている今、従業員が普段使っているアプリケーション以上の価値を人事(HR)モバイルアプリケーションが提供しなければならない。
こうした成果はクラウドベースの人事管理(HCM)サービスによるもので、これにより離職率が下がり、競争が激しい求人市場で人材を引き付け、つなぎ留めることが可能になった。
Gemaのように、HCMソフトウェアを使って人材採用と管理の効率を高めてコスト削減に結び付ける企業は、アジア太平洋地域(APAC)全体で増えている。
IDCによると、日本を除くAPAC地域のHCM市場は2023年まで毎年19.4%の伸びが予想され、中国、オーストラリア、インドが全体の売り上げのほぼ70%を占める。
インドのバンガロールを拠点とするIDCのAPACソフトウェア調査部門の市場アナリスト、シリニバス・サミール・ジャバディ氏によると、2016年からはシンガポール、台湾、タイでもHCMソフトウェアが堅調な伸びを示している。
ジャバディ氏によれば、クラウドHCMサービスの存在がHCM市場の成長を促す原動力の一つとなっている。そうしたサービスは優れたユーザーエクスペリエンスや分析機能、APIを提供する。加えて組織は、長年の間にカスタマイズされ、メンテナンスやアップグレードにコストがかかる昔ながらの人事制度から離れたいと望んでいる。代わって目を向けているのが、カスタマイズコードをそれほど必要とせず、構成オプションがもっと多い技術の採用だ。
ビジネスの観点から見ると、人材を求める競争の高まりやスキル不足、ソーシャルリクルートツールの普及によって、労働者が転職するのはかつてなく容易になった。
Oracle APACのHCMアプリケーション責任者、シャークン・カーンナ氏によれば、そうした課題が原動力となって、顧客やビジネスに優れたサービスを提供する優秀な従業員エクスペリエンスの創出に向けた人事管理、データ、人材戦略へと人事担当幹部を突き動かしている。
「OracleとWHU - Otto Beisheim School of Managementが実施した調査では、多くの組織が適切な技術に投資しながら、真に有効活用するために必要な文化やスキル、行動は欠いていることが分かった」。カーンナ氏はそう語る。
「競争に勝ち、市場を主導する価値を打ち出したいと考える組織にとって、順応性と動きの速さは極めて重要だ。順応性の高さはどんな企業においても、組織を前進させるスキルを持った従業員を採用し、つなぎ留める大きな要因でもある」
HCMソフトウェアには人材管理から給与や経費の支払いに至るまで、幅広い機能がある。HCMソフトウェアを検討する際は、現在のシステムを深く掘り下げて分析し、どんなデータを取得し、そのデータがどう流れ、どこに行き着くのかを把握しなければならない。これはソフトウェアの基盤であるデータベースから始まるとOracleのカーンナ氏は言う。
導入するモジュールは全て、同じプラットフォーム上にあって共通のデータを共有し、相互にうまく連携し、従業員のシームレスなエクスペリエンスを実現しなければならない。これによって重複するシステムに関係した管理上の非効率性が縮小する。
ビジネスの成長に伴って拡張できるソリューションを導入することも重要だ。
選定したHCMソフトウェアは、成長に伴って構造やレポート体系が変化する組織のニーズに対応できなければならない。「究極的には、リアルタイムで更新される真実の根本を見通せるHCMソフトウェアが必要だ」とカーンナ氏は話す。
Workday Asia社長のロブ・ウェルズ氏によると、新しいHCMソフトウェアへの投資は、非常に人間的な形で人に影響を与えるデリケートなプロセスだという。「大抵の場合、これは一生に一度のチャンスなので、必然的にうまくやりたいと考える。そうした理由から、われわれはWorkday製品の導入を、従来のような顧客とサプライヤーの関係ではなくパートナー関係の構築と見なしている。われわれはプロセスを通じて継続的にフィードバックを求め、本番前に問題に対応できるよう製品を調整する」
SAP SuccessFactorsのAPEC・日本担当シニアバイスプレジデント、ジル・ポペルカ氏によると、企業がHCMソフトウェアを検討する際は自分たちの目標や課題を理解しておく必要がある。
「従業員の高齢化が進んで人材の獲得に苦労しているのか。急成長モードにあって向こう2〜3年の間に何社も買収する見通しなのか。組織のデジタル対応はどの程度なのか」
そうした目標を理解すれば、何が必要で、何を選べばいいのかの枠組みが決まるとポペルカ氏は指摘する。
全般的には、長期的な視野を持った実用的なアプローチを取ることが、組織のニーズを見極める最善の方法になる。加えて社内で聞き取り調査して、成功するため、仕事をこなすためには何が必要かを質問する。
「多くの場合、人事部門は孤立した環境にあり、従業員のニーズよりも組織のニーズに重点を置いている」とポペルカ氏は言う。「包括的で、思慮深く、正直であること。そのアプローチを取れば、自分たちが本当に必要としているものを見極めるための枠組みが出来上がる」
IDCのジャバディ氏によると、バイヤーはHCMソフトウェアの評価に当たって、給与やセキュリティなどに関連した現地の法令の順守、クラウド移行能力、人事のベストプラクティスなどを判断基準とする。
「アジア太平洋ではわれわれの中核的な人事ソリューション『SAP SuccessFactors Employee Central』を採用する企業が増えている。これはモジュール性を備えた包括的なソリューションで、顧客はどこからでもスタートできる」とポペルカ氏は言い添えた。
Workdayによれば、従業員エクスペリエンスや職場でのエンゲージメントを向上させる機能に投資する会社が増えているという。
「恐らくそれは、生産性の高い職場をつくり出す最善の方策に関する考え方が変化していることに起因するのかもしれない」とウェルズ氏は推測し、今は従業員エンゲージメントが改めて脚光を浴びており、それが業績に影響を与えることを裏付ける調査も増えていると指摘した。
マレーシアのAirAsiaは、Workdayを使って2万2000人を超す従業員それぞれに合わせたエクスペリエンスを実現している。
AirAsiaのWorkdayプラットフォームは、個々の従業員についてキャリアパスや技術スキルのレベル、専門能力の開発といった情報と、従業員が仕事をこなすために必要とする一般的な情報を継続的に記録する。
これには出先で働く従業員の支援も含まれる。「モバイルプラットフォームでのHCMソフトウェア利用が増え始めている。その一因は、常に進化を続ける現代の職場の力学にある。多くの企業で、時間単位の従業員やオフィスでコンピュータの前に座っていない従業員が増え始めている」
企業のモバイル化に加え、HCMソフトウェア市場では人工知能(AI)の台頭、ギグエコノミー(訳注:インターネットを通じて単発の仕事を請け負う働き方)の成長、労働者の定義の変化、意思決定における高度な分析の利用増大といった別のメガトレンドも浮上しつつある。
中でもAIはHCMソフトウェアへの導入が進んでいる。
Oracleのカーンナ氏によると、AIで最適な結果を引き出すためには、正確で精密かつ関連のあるデータが求められる。このためOracleは、いわゆるアダプティブインテリジェントアプリケーションに供給するデータには特に気を配り、ファーストパーティーとサードパーティーのデータを組み合わせて利用している。
「調整のためには、われわれが最適化を行うプロセスや特定の用途専用に選定したトレーニングデータをOracleの機械学習モデルに注入する必要がある」と同氏は話す。
「時がたつにつれ、このモデルは顧客独自のデータで継続的に精度を上げ、結果は継続的に向上する。事前に調整されたデータモデルの概念は、データサイエンティストが必要とされないことを意味する」
結果として、採用担当者が大量の求職者に対応でき、従業員による選考の手順を合理化し、従業員の実績のモニターや向上につなげられるAI対応HCMソフトウェアが形成される。
従業員はまた、HCMソフトウェアに組み込まれたインテリジェンスを使ってキャリアに関する具体的なアドバイスや、ネットワーク形成のチャンスを見つけることもできる。
「それがなければ気付かなかった、あるいはずっと後になってからしか気付かなかったかもしれない役に立つ学習ポイントに到達できる」とカーンナ氏は説明する。
一部の組織は、新しいHCMソフトウェアの導入後もコンプライアンスや報告の必要性のため、さらには解雇した従業員に訴訟を起こされた場合に備えて、レガシーHRシステムを維持することを選ぶかもしれない。
レガシーシステムを維持する必要があるかどうか判断する際は、サプライヤーのサポートがまだ受けられるかどうか、料金はどの程度なのか、データ紛失やデータ破損のリスク、さらにはデータをアーカイブシステムに保存する可能性について検討する必要がある。
新しいHCMソフトウェアの費用対効果について判断する際は、レガシーシステムを維持するコストの他、新しいシステムにかかるライセンス、導入、サポートの経費を、予想される人手の削減や生産性の向上といったビジネス成果に照らして検討しなければならない。
また、オンプレミスに導入する場合は新しいハードウェアやハードウェアのアップグレードにかかるコストや、研修およびデータ統合、ソフトウェアのカスタマイズに関連したコストも考慮する必要がある。