大停電でオフィス機能が麻痺しても、社員の8割が自宅からコアシステムにアクセスし、作業していた――その経験から、SH&EのCIOは事業継続のためのリモートワーカー支援システムを構築した。
リチャード・リドルフォ氏がそのことに気付いたのは、ニューヨーク大停電の最中だった。
2003年8月14日、オハイオ州のある発電所の停止が発端となり、米北東部全域で次々と発電所が運転停止となった。ニューヨーク市はその後、約3日間にわたり、暗闇に包まれた。
街をハリケーンに吹き飛ばされたわけでも、テロリストに攻撃されたわけでもなかった。それでも、これは大事件だった。そして、こうした事態に備えている企業はほとんどないのが実情だった。
ニューヨークに拠点を置く航空コンサルタント会社、シマット・ヘリーセン&アイクナー(SH&E)のCIOを務めるリドルフォ氏は次のように語っている。「懸念すべきなのは必ずしも大規模災害ではない、ということをわれわれは直ちに理解した」
リドルフォ氏はラッキーな方だった。停電の翌日、電車は止まったままで、街中のオフィスも閉まったまま、タクシーは1台も見つからなかった。だがその日、SH&Eでは、100人のグローバル社員のうち85人は自宅から仕事を行っていた。ニューヨークのオフィスは依然として暗闇に包まれていたが、同社のコアシステムには、ニューヨーク市外のホスト設備を介してアクセスすることができた。
SH&Eのニューヨークのオフィスでは、初日こそ生産性が大幅に低下したものの、2日目にはほぼ通常通りの営業となった。在宅勤務が事業継続計画にうまくフィットするであろうという点にリドルフォ氏が気付いたのは、そのときだった。
「3年前には、当社の準備は整っていなかった。いまは、新しいシステムを開発し、古いシステムも改良済みだ。“もし明日オフィスを開けられないような事態が起きても、社員にはリモートアクセスで自宅から仕事をこなしてもらえるようにする”という考えに基づいて、すべてを構築した」と同氏。
SH&Eは世界中にコンサルタントを派遣しているため、リモートアクセスにもかなりの投資を行ってきた。現在は、国際ローミング企業、アイパスのモバイル接続サービスを世界規模で使用している。
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