パブリッククラウド化で改善した「4時間待ちのチケット予約サイト」コスト増でもスケーラビリティを確保

ロイヤルオペラハウスのオンラインチケット予約システムは、ピーク時には4時間も利用者を待たせる状況が続いていた。これを打開するため、パブリッククラウドへの移行を断行した。

2013年09月02日 08時00分 公開
[Archana Venkatraman,Computer Weekly]
Computer Weekly

 英国ロイヤルオペラハウス(ROH)は、パブリッククラウドを利用することでチケット予約のカスタマーエクスペリエンス改善に成功し、公式Webサイトでそれまで使われていた「仮想待合室」(チケット予約の処理を待つユーザーのための待機サイト)が不要になった。

Computer Weekly日本語版 2013年8月21日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 2013年8月21日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。


 年間約500本の公演が予定されているROHのWebサイトは、ロイヤルバレエ団やロイヤルオペラハウスオーケストラの公演チケットを予約する窓口として、世界で最も多忙なオペラハウスを支えている。

 ROHは2006年に公式Webサイトを設計・公開し、チケットのオンライン予約を実現した。しかし、バックエンドインフラがピーク時の要求を処理しきれず、予約サービスに掛かる負荷のためにWebサイト全体がクラッシュすることが頻発した。

 「かつてピーク時には、“待合室”を使っていた。だが、2000人ものユーザーをチケットの予約に4時間も待たせておくのは、当然許されない」とROHの最高技術責任者(CTO)、ロブ・グレイグ氏は語る。

 「われわれの最大の目的は、ユーザーがカスタマージャーニーを始めた瞬間から、カスタマーエクスペリエンスを改善することであるため、当時の状況はかなりこたえた」

クラウドのビジネスケースを作成

 グレイグ氏がROHに入職したのは2009年のことだ。オンラインでの販売量が急増していたため、ITチームと共にWebサイトの堅牢性を高める方法を検討した。

 「2001年に、インターネットでは誰もチケットの購入なんてしないといわれたのを覚えている」とグレイグ氏は振り返る。現在、ROHのオンライン売上は、平均すると全チケット販売の60%を占め、繁忙日には90%にもなる。

 グレイグ氏とITチームは、2010年からクラウドサービスの評価を始め、2011年にビジネスケースを作成。2012年の初頭にパブリッククラウドのβテストを実施し、2012年4月にAmazon Web Service(AWS)クラウドを基盤とするデジタルチケット予約販売サービスの運用を開始した。

 「クラウドサービスを選んだのは、スケーラブルなインフラにより、トランザクションの急増に対応したかったからだ」とグレイグ氏は説明する。「トランザクションが多い日には60台、時には120台ものサーバを実行する必要がある。一方、平日の午後は2台だけで十分だ。このようなスケーラビリティの要件にオンプレミスで対応するのは、予算的に難しかった」

 1年後、ROHのサイトでは、チケット予約の注文が殺到していることを示すメッセージは表示されなくなった。結果として、オンラインでの予約件数が増えた。

Microsoft AzureではなくAWSを選んだ理由

 導入に先立ちROHが評価したクラウドプロバイダーは、Windows AzureとAWSの2つだ。「はじめにAzureを評価したが、プロビジョニングが難しく、サービスレベルも低くて役に立たなかった。次にAWSを評価したところ、こちらはROHの要件をクリアした」

 AWSを基盤としたWebサイトの設計は、Webデザイン事務所のPOPが手掛けた。ROHでは、チケットの予約・販売、マーケティング、カスタマーリレーションシップに、世界中の芸術・文化関連組織で使われているエンタープライズアプリケーションのTessituraを採用し、これをAWSインフラ上で実行している。

 ROHは、AWSのサポートサービスにゴールドプランを選んだ。また、EC2、S3、AWS Elastic LoadBalancing、DynamoDB(データベース管理サービス)、CloudFront、CloudFormationなど、さまざまなAmazonサービスを利用している。

 現在は、Webサービスの機能強化を図るためAWS Elastic Beanstalkの導入を検討している。

クラウドの費用対効果

続きはComputer Weekly日本語版 2013年8月21日号にて

本記事は抄訳版です。全文は、以下でダウンロード(無料)できます。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

製品資料 株式会社マヒト

3分で分かる、「名刺発注業務」を効率化するポイント

従業員の自己紹介に加えて、企業間の関係構築においても重要な役割を担う名刺だが、その発注業務は意外と手間がかかる。名刺の作成から注文まで、ミスを発生させずに効率化するにはどうすればよいのか。本資料では、その解決策を紹介する。

製品資料 株式会社AIT

メディア業界必見:大容量データを安全・超高速転送、スモールスタートも容易に

大容量データの送受信には、通信遅延や帯域制限の課題がある。本資料では、高速で安全なデータ送信を実現できるファイル転送プラットフォームを紹介する。導入時に気になるポイントとともに、料金プランも分かりやすく解説している。

事例 ファインディ株式会社

アジャイル開発成功事例集:セゾンテクノロジー/ダイキン工業/朝日新聞

アジャイル開発を推進する上で欠かせないのが、開発プロセスやレビュープロセス、パフォーマンスなどを可視化することだ。セゾンテクノロジーやダイキン工業、朝日新聞といった3社の事例を基に、それらを実現する方法を探る。

市場調査・トレンド フリー株式会社

「情シスのSaaS利用実態」調査レポート

SaaSを導入する企業が急速に増えている。経営者と情報システム担当者1019人を対象にした調査によると、約9割の企業が2年前よりもSaaSの利用を増やしたという。このような中で、新たな課題も顕在化している。その内容を見ていこう。

製品資料 Notion Labs Japan合同会社

情報の安全な活用と共有に、AI+統合ワークスペースが果たす役割とは

「ビジネス+学び」をテーマにした映像コンテンツ制作、配信を事業の中核とするPIVOT。同社では情報基盤として活用してきたツールのセキュリティ強化とともに、AI機能の導入によって、業務の質と速度の向上を実現した。

アイティメディアからのお知らせ

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

パブリッククラウド化で改善した「4時間待ちのチケット予約サイト」:コスト増でもスケーラビリティを確保 - TechTargetジャパン クラウド 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

TechTarget驛「�ァ�ス�ク驛「譎「�ス�」驛「譏懶スサ�」�趣スヲ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...