ロイヤルオペラハウスのオンラインチケット予約システムは、ピーク時には4時間も利用者を待たせる状況が続いていた。これを打開するため、パブリッククラウドへの移行を断行した。
英国ロイヤルオペラハウス(ROH)は、パブリッククラウドを利用することでチケット予約のカスタマーエクスペリエンス改善に成功し、公式Webサイトでそれまで使われていた「仮想待合室」(チケット予約の処理を待つユーザーのための待機サイト)が不要になった。
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年間約500本の公演が予定されているROHのWebサイトは、ロイヤルバレエ団やロイヤルオペラハウスオーケストラの公演チケットを予約する窓口として、世界で最も多忙なオペラハウスを支えている。
ROHは2006年に公式Webサイトを設計・公開し、チケットのオンライン予約を実現した。しかし、バックエンドインフラがピーク時の要求を処理しきれず、予約サービスに掛かる負荷のためにWebサイト全体がクラッシュすることが頻発した。
「かつてピーク時には、“待合室”を使っていた。だが、2000人ものユーザーをチケットの予約に4時間も待たせておくのは、当然許されない」とROHの最高技術責任者(CTO)、ロブ・グレイグ氏は語る。
「われわれの最大の目的は、ユーザーがカスタマージャーニーを始めた瞬間から、カスタマーエクスペリエンスを改善することであるため、当時の状況はかなりこたえた」
グレイグ氏がROHに入職したのは2009年のことだ。オンラインでの販売量が急増していたため、ITチームと共にWebサイトの堅牢性を高める方法を検討した。
「2001年に、インターネットでは誰もチケットの購入なんてしないといわれたのを覚えている」とグレイグ氏は振り返る。現在、ROHのオンライン売上は、平均すると全チケット販売の60%を占め、繁忙日には90%にもなる。
グレイグ氏とITチームは、2010年からクラウドサービスの評価を始め、2011年にビジネスケースを作成。2012年の初頭にパブリッククラウドのβテストを実施し、2012年4月にAmazon Web Service(AWS)クラウドを基盤とするデジタルチケット予約販売サービスの運用を開始した。
「クラウドサービスを選んだのは、スケーラブルなインフラにより、トランザクションの急増に対応したかったからだ」とグレイグ氏は説明する。「トランザクションが多い日には60台、時には120台ものサーバを実行する必要がある。一方、平日の午後は2台だけで十分だ。このようなスケーラビリティの要件にオンプレミスで対応するのは、予算的に難しかった」
1年後、ROHのサイトでは、チケット予約の注文が殺到していることを示すメッセージは表示されなくなった。結果として、オンラインでの予約件数が増えた。
導入に先立ちROHが評価したクラウドプロバイダーは、Windows AzureとAWSの2つだ。「はじめにAzureを評価したが、プロビジョニングが難しく、サービスレベルも低くて役に立たなかった。次にAWSを評価したところ、こちらはROHの要件をクリアした」
AWSを基盤としたWebサイトの設計は、Webデザイン事務所のPOPが手掛けた。ROHでは、チケットの予約・販売、マーケティング、カスタマーリレーションシップに、世界中の芸術・文化関連組織で使われているエンタープライズアプリケーションのTessituraを採用し、これをAWSインフラ上で実行している。
ROHは、AWSのサポートサービスにゴールドプランを選んだ。また、EC2、S3、AWS Elastic LoadBalancing、DynamoDB(データベース管理サービス)、CloudFront、CloudFormationなど、さまざまなAmazonサービスを利用している。
現在は、Webサービスの機能強化を図るためAWS Elastic Beanstalkの導入を検討している。
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