中国のクラウドベンダーAlibabaは、人工知能(AI)技術の成長機会を生かし、クラウドインフラを今後の成長の基盤とするために、大規模な投資を実施することを発表した。
中国のクラウドベンダーAlibaba Group(以下、Alibaba)は、2025年からの3年間でクラウドコンピューティングとAI(人工知能)技術に約530億ドル(約7兆8200億円)を投資し、次世代の技術革新を主導することを目指す。この投資額は、過去10年間にAlibabaがクラウドコンピューティングとAI技術に費やした総額を上回る。同社はAI技術を「一世一代のチャンス」と捉え、クラウドコンピューティングを今後の収益成長の主要エンジンと位置付ける。
Alibabaの2024年度第4四半期(2024年10〜12月)の決算説明会で、最高経営責任者(CEO)エディ・ウー氏は、AI技術、特に人間と同等の知能を持ち、あらゆる知的タスクを実行できる「汎用(はんよう)人工知能」(AGI)の変革の可能性について言及した。AI技術が人間の知的労働や物理的労働を再現することで、世界の産業構造を根本的に変える可能性があると強調する。
ウー氏は、AI技術とクラウドコンピューティングの相互依存関係についても触れ、AIモデルの急速な進化に伴い、AI技術が生成する膨大なデータを処理し、配信するためのクラウドインフラが不可欠になると指摘する。
Alibabaの今回の動きは、2024年5月の株主向け書簡で発表した「ユーザー第一、AI主導」戦略と一致している。Alibabaは、AI技術を自社のエコシステム全体に統合し、eコマース(EC:電子商取引)から企業向けサービス、消費者向けアプリケーションまで幅広く活用することで、顧客体験を向上させ、業務効率を高め、成長を加速させる狙いだ。
Alibabaのクラウドインテリジェンス部門は、2024年度第4四半期で前年比13%の増収を達成(連結子会社を除く)。また、AI関連の製品売上は6四半期連続で3桁成長を記録しており、AIホスティングや関連サービスへの需要の高まりが要因となっている。
Alibabaは自社エコシステム内の成長だけでなく、外部との提携も積極的に進めている。Appleは、Alibabaのクラウドサービス「Alibaba Cloud」を、中国国内でのAIサービスをサポートするために選んだと報じられている。詳細は明らかになっていないが、この提携はAppleが中国のデータローカライゼーション規制(国内でのデータ保管を義務付ける規制)を順守する上で重要な役割を果たすと見られている。
Alibaba Cloudのインフラを利用することで、Appleは中国のエンドユーザーに高度なAI機能を提供しつつ、現地の法律を順守できる。これはAlibaba Cloudにとって大きな成功であり、AlibabaのAI技術力が評価されるとともに、中国市場でAIサービスを展開したい世界的IT企業にとって欠かせない存在となる可能性を示している。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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