VMwareショックで躍進 SUSEが熟知する“仮想化の深いニーズ”とは?Linuxとコンテナ市場で成長するSUSE【後編】

「Linux」サポートプログラムが好調なSUSEは、仮想化やコンテナ分野、生成AI活用でも成長を遂げている。同社CEOとAPAC担当者は、成長のキーポイントをどう捉えているのか。

2025年03月07日 07時30分 公開
[Aaron TanTechTarget]

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 OS「Linux」のサポートが切れたディストリビューション(配布パッケージ)からのスムーズな移行や保守を支援するサポートプログラム「SUSE Liberty Linux」を手掛けるのが、ドイツのオープンソースソフトウェアベンダーSUSEだ。同社は世界市場で成長を遂げている。その背景には、BroadcomによるVMwareの買収という仮想化市場の大きな変化があるが、それ以外にもさまざまな要因がある。同社が重視する戦略は何か。

VMwareからの乗り換え先としてSUSEが選ばれる理由は?

 SUSEが主に力を入れているのは、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」で扱うコンテナクラスタ(Kubernetesクラスタ)の管理ツール「Rancher」の認知度向上だ。RancherはKubernetes分野など一部コミュニティーでは一定の知名度があるものの、SUSEとの関連性は十分に認識されていないとバン・ルーウェン氏はみる。そのため、「RancherとSUSEの結び付きを強めること」が優先課題になるという。このためにリブランディングの実施も計画中だ。

 APACでもSUSEは成長を遂げており、Rancherの導入事例を増やす取り組みを進めている。最近の導入事例としては、自動車メーカーHyundai Motor Company(現代自動車)がコネクテッドカーシステムにRancherを使用したこと、物流関連のITサービスを手掛けるTrade-Van Information ServicesがRancherを用いてコンテナへの移行を実施したことがある。両事例において、Rancherはアプリケーション導入の高速化に寄与した。

 半導体ベンダーBroadcomが仮想化技術ベンダーVMwareを買収したことで、VMware製品の値上げに対する不安が企業の間に生まれたことも、仮想化およびコンテナ分野におけるSUSEのチャンスを生んだ。

 バン・ルーウェン氏は、「VMware製品からの移行に伴う複雑さを認識しつつも、SUSE製品のクラウドネイティブな仮想化技術とストレージ技術が、VMware製品の代替策になり得ると考える企業が増えてきた」と語る。

 SUSEでAPAC担当ゼネラルマネジャーを務めるジョセップ・ガルシア氏は、同社の移行支援が中小企業だけではなく大企業も対象にしていることを説明する。オーストラリアのサービス事業者はRancherの他、Kubernetesを活用したHCI(ハイパーコンバージドインフラ)ソフトウェア「Harvester」を使用してContainer as a Service(サービスとしてのコンテナ)を構築している。

 データセキュリティを重視した人工知能(AI)技術活用の支援もSUSEの注力分野だ。「AI技術活用において、企業が最も気にするのはデータ保護方法だ」とバン・ルーウェン氏は話す。「SUSE AI」は、企業のオンプレミスインフラで生成AIを実行できるよう支援するサービス群だ。これによって、データを企業の管理下に置いたまま生成AIで活用可能になる。

 バン・ルーウェン氏はクラウドベンダーが「ユーザー企業のデータに触れない」ことを取り決めてデータプライバシーを保証していることを引き合いに出し、「当社のアプローチはその考え方とは大きく異なる」と語る。

 SUSEは戦略として企業に選択肢を提供することを重視しており、それが同社のビジネスを成長させているというのがバン・ルーウェン氏の考えだ。「当社は、業界事情や企業のニーズへの応え方を熟知している」と同氏は言う。企業はさまざまなバージョンのツールを幾つも使い分けている。これに対して、SUSEはさまざまなバージョンのツールを企業ごとに適した方法で利用できるようにしている。「この戦略は企業の共感を得ており、競合他社と大きく異なる視点に立っている」(同氏)

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