米議会で、中国のDeepSeekが開発したAIチャットbotサービスを政府機関の端末で利用できないようにする法案が提出された。議員らは安全保障上のリスクを強調するが、別の専門家は根本的な課題を指摘する。
米議会で、中国のAI(人工知能)技術ベンダーDeepSeekが開発したAIチャットbotサービスの利用を禁止する措置が議論されている。2025年2月6日(現地時間)、米民主党のジョシュ・ゴットハイマー下院議員と共和党のダリン・ラフード下院議員は「政府機関の端末でDeepSeekの使用を禁止する法案」(No DeepSeek on Government Devices Act)を提出した。
ラフード氏は、「DeepSeekが米国のエンドユーザーのデータを取得し、中国共産党が不明確な用途のために保存している」と指摘する。米国以外にオーストラリア、台湾、イタリア政府も同様の措置を進めている。一方、ある専門家は、DeepSeekが「中国のベンダーである」という点に批判が集中していることを憂慮する。
「DeepSeekが米国に及ぼす国家安全保障上の脅威は憂慮すべきものだ」とラフード氏は主張する。「いかなる状況でも、中国政府の関連企業が機密性の高い政府データや個人データを入手することは許されない」(同氏)
「中国政府は、米国の安全保障を損なうため、有害な偽情報を広めるため、米国民のデータを収集するために、さまざまな手段を利用している」とゴットハイマー氏も懸念を示す。
ミズーリ州選出の共和党のジョシュ・ホーリー上院議員も2025年1月、「アメリカのAI機能を中国から切り離す法案」(Decoupling America’s Artificial Intelligence Capabilities from China Act)を提出した。同法案は、中国で開発されたAI技術の利用を規制し、国家安全保障上のリスク軽減を目的としている。違反者には最大20年の懲役刑と1億ドルまでの罰金を科すことを想定する。ただし、法案はDeepSeekには言及していない。
AI検索エンジンベンダーCorpora.aiのCEO、メル・モリス氏は、「政府や軍事分野における非同盟国の技術使用については、長年にわたって懸念が存在してきた」と述べる。例えば、米国商務省は2019年、輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙した「エンティティリスト」に中国の通信機器ベンダーHuawei Technologiesを追加した。
一方、「政治家たちは木を見て森を見ていない可能性がある」と、セキュリティベンダーImmuniwebのCEOで英国コンピュータ協会(BCS:British Computer Society)フェローのイリア・コロチェンコ氏は指摘する。同氏は「DeepSeekの使用に伴うリスクは理解できる」と述べる一方、「DeepSeekがもたらす利益がリスクを上回るのであれば、リスクを冒してでも利用するだけの価値はある」と言う。
コロチェンコ氏は、DeepSeekが中国のベンダーであるという点から離れるべきだと指摘する。「中国以外のさまざまな国の生成AIベンダーやSaaS(Software as a Service)ベンダーも、DeepSeekと同様の、あるいはそれ以上の問題を抱えている」と同氏は言う。
DeepSeekのリスクを軽視したり過小評価したりすべきではないが、他の生成AIベンダーが抱えるリスクや課題も忘れてはならない。「一部の生成AIベンダーは、コンテンツの制作者や著作権者に許可を求めることなく、インターネットからコンテンツを無断で収集し、大規模言語モデル(LLM)の学習に使用している」(コロチェンコ氏)
「DeepSeekを巡る騒動は、他の生成AIベンダーの重大な違反やリスクを忘れ去るための『都合の良い』理由にはならない」とコロチェンコ氏は警鐘を鳴らす。
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