企業はインメモリデータマート向けのSAP HANAと、他のデータウェアハウスを統合したSAP Business Warehouseを利用している。
現在の市場における「SAP HANA」(以下、HANA)の最も一般的な用途は、高速インメモリデータマートだ。他の用途としては、データベース、分析アプライアンス、インテグレーションミドルウェア、アプリケーションサーバ、開発環境、クラウドプラットフォームが挙げられる。独SAPの将来はこの新しい主力技術の成功に懸かっているといっていい。
もちろん、市場には他に米Oracle、米IBM、米Microsoft、米Pivotal、米Teradataといった各社のインメモリ製品や分析アプライアンス、インテグレーションミドルウェアやクラウドサービスも多数存在する。
多くの単純な用途において、HANAの顧客はHANA導入以前と同じレポーティングを行っているが、その速度は、用途によっては100〜1000倍に向上した。
ほとんどの場合、顧客は大規模データウェアハウスの配備に伴うコストや制約を理由に、既存の大規模データウェアハウスをHANAに入れ替えることはせず、それを補完してリアルタムに近い分析と新しいビジネス分析に対応している。ただ、中には規模の許す範囲で、異種混在の小規模なデータウェアハウス環境をHANAで統合した事例もある。
現在、HANAの実装は最大で10TBを超えている。だが、大部分を占めるのは1T〜5TBだ。SAPはHANAを100TBまで拡張する実験も行っている。
HANAはフル機能を完備したデータベース管理システムであり、クラスタ環境で複数のノードを並行処理するインメモリカラム型リレーショナルデータベースの代表的な存在だ。市場の他の多くの製品と異なり、HANAはディスクベースのOLTPデータベースエンジンを強化するための付加的なインデックスソリューションではない。
HANAは最初から、顧客がSAPビジネスアプリケーションやビジネスインテリジェンス(BI)プラットフォームで直面している問題に対応するためのインメモリシステムとして構築された。ただ、データがDRAMに入らなければHANAを稼働させることはできないという制約はある。HANAは完全なデータインメモリのみに対応する。
企業は、HANAをインメモリデータマートや「SAP Sybase IQ」など他のデータウェアハウスと連係させた「SAP Business Warehouse」(以下、BW)実装のために使っている。
SAPによれば、HANAの顧客は3600社を超す。だが、Forrester Researchの推計ではプロダクション顧客はその3分の1程度であり、ほとんどは補完的なインメモリデータウェアハウスとしてHANAを使っている。ライセンスの主流は「SAP HANA Enterprise Edition」だが、HANAでBWを実行することに特に関心のある顧客は、以下の2つの方法でHANAをライセンスできる。
10ユニットまではユニット当たりの均一料金制で、以後は10ユニットを追加するごとに料金が下がる。未来のライセンス契約を蓄積したり、さかのぼったりすることもできる。
顧客はSAP製品導入に掛かる総額の一定の割合を支払い、BWの無制限のランタイムライセンスを入手する。このライセンス方式は、HANAをERPなどでも利用できる。エンタープライズデータウェアハウスをクラウドプラットフォームで活用したい企業のために、HANAはAmazon Web Servicesでも利用できる。現時点では主に数TBに満たない小規模から中規模の構成がほとんどを占める。
米Molson Coors Brewingは、BIアーキテクチャを簡素化し、加速するためのデータウェアハウスとしてHANAを使っている。当初はレポーティングの設計は変更せず、レポートの速度を上げるためにBWをHANAに移行させた。
Molson Coors BrewingのBI専門家は言う。「Molson Coors Brewingに限って言えば、このソリューションの設計は変えなかった。当社が行っていた作業は夜間に処理できる限度を超えていた。われわれは今でもETL(抽出、変換、読み込み)を使っていて、直接HANAでビューのレポートは行っていない。HANAへの移行は単純に技術のアップグレードだった。現時点でリアルタイムのレポーティングは行っていない。近い将来にも計画していない」
企業がHANAを導入するには、移行の経験を持つシステムインテグレーターを利用する方法がある。
例えば米Syntelは、500万以上のレコードを持つ保険会社の
を行った。
もう1つの事例として、インドHCL Technologiesが支援した100年以上の歴史を持つコンシューマー製品会社は、ここ数年の2桁台の成長のため、新しい組織構造を必要としていた。この企業のBIソリューションでは、新しい構造にも、統合が必要なデータソースの増大にも対応できなかった。
「プロジェクトの根拠となる『痛点』は、常にビジネスから出てくる。単なるレポートの速度だけということはめったにない」。HCL TechnologiesのBIプロジェクト管理者はそう話す。
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