「次世代エンドポイントセキュリティ」は今までのウイルス対策と何が違うのか「エンドポイントセキュリティ」再浮上のなぜ【第2回】(3/3 ページ)

2016年05月17日 09時30分 公開
[阿部淳平, 尾山和宏ネットワンシステムズ]
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主要機能2:実行ファイルの評価

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 あらゆる実行ファイルは、マルウェアである可能性が否定できない。実行ファイルが問題ないファイルなのか、マルウェアなのかを判断することは非常に重要だ。次世代エンドポイントセキュリティは、データからパターンを見つけ出す「機械学習」、脅威情報データベースの「セキュリティインテリジェンス」の活用といった新たなアプローチで実行ファイルを検査する。

 Cisco Systemsの「Cisco Advanced Malware Protection(AMP)」は、セキュリティインテリジェンスと「クラウドリコール」という機能によって実行ファイルを検査する。

 まず未知の実行ファイルに対しては、ファイルのハッシュ値を算出してセキュリティインテリジェンスと照合し、実行ファイルがマルウェアかどうかを確認する。仮にセキュリティインテリジェンスにハッシュ値が登録されていない場合は、クラウド環境で稼働する「サンドボックス」(隔離領域でプログラムを実行してマルウェアを検知するシステム)へ実行ファイルを送信し、結果のフィードバックを受けることが可能だ。なおハッシュ値による照合は、実行ファイル以外のファイルでもできる。

 いったん実行ファイルを通過させた後日に、その実行ファイルがマルウェアだという情報がセキュリティインテリジェンスに登録されると、Cisco AMPはその情報をクラウド環境から受け取って該当のマルウェアを隔離できる。これがクラウドリコールの仕組みだ(図2)。

Cisco AMP 図2. Cisco AMPのクラウドリコール《クリックで拡大》

 Cylanceの「CylancePROTECT」は機械学習関連技術によって、実行ファイルがマルウェアなのかどうかを判断する。CylancePROTECTは人手を介さず、大量のサンプルに基づいてファイルの特徴を理解する。実行ファイルに限らずMicrosoft OfficeファイルやPDFファイルも処理が可能で、マクロウイルスやエクスプロイトも検知できる。

主要機能3:振る舞い検知

 マルウェア感染後、つまりマルウェアのプロセスが活動している状況でその振る舞いを見て、感染を検知し遮断する――。こうしたアプローチは「振る舞い検知」としてカテゴライズされる。

 SentinelOneの「SentinelOne Endpoint Protection Platform」(SentinelOne EPP)は怪しいプロセスの全挙動を監視している。その振る舞いに不正な行動が見られれば、該当プロセスを停止できる。収集したプロセスの挙動に関する情報は、インシデント発生後にも活用できる。そのためSentinelOne EPPは、インシデントレスポンス製品としての役割を担うことも可能だ。

 前述のTrapsはプロセスの挙動を監視し、サスペンド(一次停止)状態のプロセスを再開しようとする動きや、プロセス内で任意のスレッドを実行する「スレッドインジェクション」の挙動を防ぐことができる。さらに振る舞い検知とは厳密には異なるが、実行ファイルの起動が可能なパスを指定したり、署名がないファイルを実行しないようにしたりする制御も可能だ。ドライブバイダウンロードでマルウェアが勝手に起動するリスクは激減する。


 次世代エンドポイントセキュリティは、従来のエンドポイントセキュリティでは防ぐことができなかった高度なサイバー攻撃に対処するための機能を数多く持つ。具体的にはセキュリティインテリジェンスを利用してマルウェアの解析に使用したり、脆弱性を抱えたプロセスを保護したりすることで、攻撃を失敗に終わらせる。

 ただし、次世代エンドポイントセキュリティの機能がどれほど優れていても、サイバー攻撃を100%防御することは不可能であり、こうしたことをうたっているベンダーはない。万一マルウェアに感染してインシデントが発生した場合に備え、対策を講じる必要があるのは当然のことだ。

 これを踏まえ、次回はインシデントレスポンスにおけるエンドポイントセキュリティについて紹介する。

阿部淳平(あべ・じゅんぺい) ネットワンシステムズ

前職含めて約10年にわたりセキュリティ製品を担当し、ファイアウォール・IPS製品などの提案、評価、検証、技術サポートを実施。現在はエンドポイントセキュリティを含めたさまざまなセキュリティ製品を組み合わせた、新しいソリューションの開発にも取り組んでいる。

尾山和宏(おやま・かずひろ) ネットワンシステムズ

2013年からセキュリティ製品を担当し、エンドポイントセキュリティやネットワークセキュリティ製品についての提案、評価、検証、技術サポートを行うとともに、最新のセキュリティトレンドについての調査や実際の製品を使用した検証を行っている。


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