おとりで誘い込む脅威対策
“ハニーポット”を上手に使う「能動的多層防御」のコツ(1/2 ページ)
サイバーセキュリティの多層防御の真の意味を理解するには、その起源となった軍事戦略「縦深防御(defense in depth)」を理解しなければならない。大事なのは、脅威は進入するものという前提を持つことだ。
長い間、サイバーセキュリティの多層防御(defense in depth)は多くの話題を提供してきた。例えば、米国国土安全保障局は、産業用制御システムを対象とする多層防御戦略を推奨しており、米国国家安全保障局も、多層防御を「現代の高度にネットワーク化された環境において情報保証を実現する実践的な戦略」と呼んでいる。
だが、これまで交わされてきた議論の中で、その起源となった軍事防衛戦略「縦深防御(defense in depth)」が話題になったことはない。
軍事戦略における縦深防御には、基本的な前提が数多く存在する。だが、サイバーセキュリティに関わる多くの関係者はこのことを理解していない。
多層防御の特性
軍事戦略上の縦深防御の前提の中で、サイバーセキュリティにおいて最も見落とされているのは「攻撃側がその気になれば、防御線は必ず突破される」という前提だ。
この前提から、軍事上の縦深防御は敵の侵攻を防ぐのではなく、侵攻を遅らせるのが目的であることが分かる。
サイバーセキュリティでは、「ネットワーク境界での防御を攻撃側が突破または迂回(うかい)できないようにすれば、境界線は完全かつ効果的に保護できる」という根拠のない信仰が広まっている。だが、この信仰と軍事上の縦深防御とでは前提が大きく異なっている。
軍事上の縦深防御では境界線が突破されることを前提として、次のような意図を持って防御層を幾重にも積み重ねている。
- 攻撃を遅らせることで、攻撃に耐え得る補強物資を持ち込んで、効果的な対応や反撃を可能にする
- 防御兵器を集中配備する「キルゾーン」に攻撃側を誘導する
- 攻撃続行に必要な物資を浪費させる
- 攻撃側の物資を広範囲に分散させ、攻撃の効率を下げる
状況によっては、防御側は物理空間を攻撃側に明け渡し、防御や反撃のための時間を稼ぐこともある。
諜報
軍事組織がもう1つ最大限に高めたいと考えるのが諜報だ。軍事における諜報とは、指揮官に指針を与え、意思決定を助けるための情報収集と分析を指す。軍事作戦には情報収集が欠かせない。敵の位置、部隊編成、武器や戦力、敵の想定目標などを把握することが重要になる。敵についての状況認識を高め、効果的な防御戦略を立案するには諜報が不可欠だ。軍事上の防御戦略には、常に対応すべき明確な脅威がある。従って、軍事計画の立案者が脅威の状況を明確かつ詳細に理解することが、生存率や任務達成率に大きく影響する。
能動的多層防御
軍事上の縦深防御戦略の基本的な前提を考慮し、それらをサイバーセキュリティに当てはめることを、ここでは「能動的多層防御」と定義する。能動的多層防御は、境界線が突破されることを前提に具体的な防御戦略を立案し、突破された後の対策として戦略を展開する。この点が受動的多層防御とは明確に異なる。
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