セキュリティ研究者によれば、悪名高いワーム「Stuxnet」が悪用した脆弱性が、いまだに活発に利用されているという。それはなぜなのか。
Microsoftは2010年、悪名高いワーム「Stuxnet」が利用したWindowsシェルの脆弱(ぜいじゃく)性「CVE-2010-2568」を修正するパッチ「MS10-046」を公開した。それにもかかわらず、世界ではいまだに、この脆弱性が活発に利用されているとセキュリティ研究者は指摘する。
ハッカー集団Equation Groupが新たなエクスプロイト(脆弱性を利用した不正プログラム)やサイバー兵器を公開したことを受け、セキュリティ企業Kaspersky Labは、2015年と2016年に検出されたエクスプロイトに関する調査を実施した。その結果、Stuxnetが利用したCVE-2010-2568が依然として「攻撃を受けたユーザー数」でトップであることが分かった。2016年に何かしらのエクスプロイトに遭遇したユーザーのうち、4分の1近くがこの脆弱性を突いたエクスプロイトによる攻撃を受けたという。
Kasperskyの研究者は、レポートで次のように指摘する。
このタイプのマルウェアの中では、ここ数年連続で、悪名高いStuxnetと同じ脆弱性(CVE-2010-2568)を突いたエクスプロイトが検出数でトップとなった。2015年には、1年に一度でもエクスプロイトに遭遇したユーザーのうち、27%がこの脆弱性を突いたエクスプロイトに遭遇している。これは恐らく、こうしたエクスプロイトを利用するマルウェアが自己複製機能を持ち、脆弱なコンピュータがインストールされている攻撃先のネットワークにおいて、常に自らを再生していることによるものだ。
セキュリティ企業Qualysの脆弱性研究所でディレクターを務めるアモール・サーワテ氏によれば、同社のデータは、Kasperskyの分析結果を裏付けることはできなかったが、大半の企業がパッチを適用済みであることを示しているという。
全ての既知の脆弱性にパッチを当てることは、あらゆるセキュリティ対策の基本だ。「攻撃者がいまだにStuxnetと同じ脆弱性を積極的に利用しているのだとすれば、当社のデータは、企業がこの問題の修正のために効果的な措置を講じていることを示している」とサーワテ氏は語る。同氏によると、2012年半ばまでに、Qualysの顧客の約90%がこの脆弱性に対するパッチ(MS10-046)を適用した。
Stuxnetを最初に解読したセキュリティ研究者、ラルフ・ラングナー氏は、Stuxnetについて次のように語る。「強力で汎用(はんよう)性の高いエクスプロイトであり、1台残らず全てのコンピュータにパッチが適切に適用されるまでは使われ続けるだろう」
Stuxnetは「巨大なチームによって巧みに設計された非常に複雑なマルウェアであり、だからこそ再利用や改変がなくならない」と、ITアナリストのマーク・アントワン・ヘロー氏は語る。「厳密にいえば、オリジナルのStuxnetは自己消滅し、非常に限られた状況でのみ複製されるようになっていた。だがその後の変種や後継版はこうしたルールに従う必要はない。その点が重要だ」(ヘロー氏)
ヘロー氏は、Stuxnetが利用する脆弱性の影響が及ぶのは、パッチ未適用の古いシステムだと説明。「Microsoftは古くなったOSを一定期間しかサポートしない。これらのOS向けのパッチが提供されなくなれば、状況は一気に制御不能となる」と語る。同氏はパッチの提供が終了したエクスプロイトの例として、ハッカー集団Shadow Brokersが流出させた米国家安全保障局(NSA)のエクスプロイトを挙げ、今後活発に利用される可能性があると指摘する。
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