「コンテナ」の“誇大広告”にだまされないために確認すべきチェックポイントコンテナの実態と課題を整理(1/2 ページ)

コンテナは数多くのメリットをもたらすが、制約も少なからずある。コンテナの可能性を正しく引き出すために、把握しておくべき制限事項を紹介する。

2017年09月05日 05時00分 公開
[Kurt MarkoTechTarget]

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画像 コンテナを有効活用するために知っておくべきこととは

 刺激的な宣伝は実情よりも先行するのが常だ。コンテナ化も過大視や誇大広告と無縁ではいられない。

 開発者とDevOps(運用と開発の融合)チームは、コンテナのイメージとサーバランタイムに関わる問題を考慮する必要がある。コンテナは、どこでも実行でき、何でもカプセル化できるわけではない。

 コンテナは、OSカーネルの特定領域にマッピングするため、コンテナとOSが本質的に結び付くことになる。そのためコンテナを別のOSへ移植する場合は、面倒で余分な作業が必要になる。例えばMicrosoftの「Windows」では、「Docker」形式のコンテナを利用できる。Red Hatの「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)でも同じ形式のコンテナを利用できる。だがWindows環境のコンテナ(Windowsコンテナ)が自動的にRHELで実行されるようにはならない。同じように、RHELコンテナは技術的に見ると別のLinuxホストで動作する可能性はある。だがシステム呼び出しなど、OSに当然存在するはずのものが見つからない、といった問題が発生する可能性は高い。

クロスプラットフォームの制約

 Dockerは「Linux」のコンテナ技術「LXC」(Linux Containers)の拡張機能として開発された。LXCは、アプリケーションとその依存関係(ライブラリやパス名など)を1つの実行可能イメージにバンドルするための標準形式を定義する。Dockerは、アプリケーションに公開する実行環境が、複数のDockerコンテナランタイム(実行環境)間で同じであることを保証する。LXCは独立したアプリケーションサンドボックスを確立するが、Dockerとは違ってシステム固有の詳細は抽象化しない。具体的にはネットワークやストレージの構成や、ライブラリ/ログファイルの場所のパスなどは抽象化の対象外だ。

 Dockerイメージは、互換性のある全てのランタイムでそのまま実行できる。DockerがLinuxシステムでしか利用できなかったときは、これで十分だった。

 Dockerの中核要素である「Docker Engine」は、WindowsとApple製OSにも移植された。その結果、OS固有のコンテナホスティングの制約が浮き彫りになった。

 Linux、Windows、Appleの「macOS」でネイティブに実行し、ユーザーからのコマンドを受け付ける「Dockerクライアント」は、ローカルの「Dockerデーモン」(サーバ)へ接続する。Dockerデーモンはホスト型ハイパーバイザーの仮想マシン(VM)として実行し、Windowsなど他のOSでLinuxベースのコンテナをホストするのに必要な機能を提供する。ホスト型ハイパーバイザーにはOracleの「Oracle VM Virtualbox」などがある。

 コンテナ化したアプリケーションはLinuxホストで実行する。そのためMicrosoftの「.NET Framework」など、ホストOSのネイティブのライブラリや他の機能は利用できない。Windowsカーネルを必要とするアプリケーションは、Windowsコンテナを使用してDocker互換システムでコンテナ化できる。本稿執筆時点では、Microsoftの「Windows Server 2016」または「Windows 10」でWindowsコンテナが利用可能になる。Windowsコンテナは、VMによる助けがなければLinuxまたはmacOSでは実行できない。

Linux環境からの移植

 Dockerは、Linuxカーネルの機能をベースにしているが、特定のディストリビューションのパッケージ全体をベースにしているのではない。Linuxカーネル開発の中核となる考え方は、新しいバージョンに旧バージョンとの互換性を持たせる、というものだ。コンテナ化したアプリケーションが、Docker Engineとの互換性がある限り、どのLinuxディストリビューションをコンテナホストに選んだとしても適切に動作する。

 コンテナは可搬性が高く、あるホストで構築し、動作するコンテナは、全く別のホストでも基本的には同じように動作する。そのホストがAmazon Web Services(AWS)の「Amazon EC2 Container Service」(ECS)のようなクラウドサービスだったとしても、それは変わらない。

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