Microsoftは自社ソフトウェアをクラウドサービスで利用することに対して、ライセンス上の制約を設けている。このライセンス制約の内容を詳しく説明する。
Microsoftは、オフィススイート「Microsoft Office」のライセンスに課していた制約の一部を、事実上撤回した。競合ベンダーであるAmazon Web Services(AWS)のDaaS(Desktop as a Service)「Amazon WorkSpaces」に、ユーザー企業が契約済みのMicrosoft Officeライセンスを持ち込んで利用できるようにしたのだ。Microsoft Officeに限らず、Microsoftはクラウドサービスでの自社ソフトウェアの利用に、ライセンス上の制約を設けている。どのような制約なのか。
ライセンス移動権「ライセンスモビリティ」(License Mobility)が付属しない場合、Microsoftソフトウェアのオンプレミスデバイス向けライセンスは、特定クラウドベンダーの専用ホストクラウドサービス(物理的にインフラを専有可能なクラウドサービス)には持ち込めない――。これが、2019年10月にMicrosoftが加えたライセンス制約の骨子だ。制約対象となるクラウドベンダーを、Microsoftは「Listed Provider」と呼ぶ。
Microsoftはこのライセンス制約により、Listed Providerの専用ホストクラウドサービス向けのライセンス条件を、マルチテナント(インフラ共有型)クラウドサービス向けのライセンス条件とそろえた。アウトソーシングサービス(オンプレミスデバイスの運用支援サービス)では、これまで通りオンプレミスデバイス向けライセンスが使用できる。
Listed Providerには、Microsoft、Alibaba、Amazon Web Services(AWS)、Googleを含む。Listed Providerの専用ホストクラウドサービスそのものだけではなく、それらを活用した他のクラウドサービスも、このライセンス制約の対象になる。具体例としては、AWSの専用ホストクラウドサービスでVMwareの仮想化ソフトウェアを実行するサービス「VMware Cloud on AWS」が挙げられる。
ユーザー企業が、Microsoftソフトウェアのオンプレミスデバイス向けライセンスを専用ホストクラウドサービスに持ち込む方法はあるものの、選択肢は多くない。主な選択肢は、ライセンスモビリティを含む保守サポート契約「ソフトウェアアシュアランス」(Software Assurance)を契約するか、Listed Providerに含まれないクラウドベンダーの専用ホストクラウドサービスを利用するかの2択だ。
第3回は、MicrosoftがListed Providerに自社を含める意味を考察する。
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