ファン体験の向上で後れを取っていたF1が今、変わろうとしている。Formula One Groupのトップとして改革を進めているロス・ブラウン氏は何を考えているのか。
Formula One Group(F1の運営組織)のマネージングディレクターを務めるロス・ブラウン氏(訳注)によると、F1はファンサービスの点で少し前までは他の競技に後れを取っていたという。
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2017年7月14〜16日の英国グランプリ直前に開催されたブリーフィングで、同氏は次のように語った。「5〜6年前に実施すべき施策だったが、その当時はできなかった。そのころのわれわれはデジタル化の必要性をさほど実感していなかったからだ。今後巻き返しを図りたい点が多々ある」
訳注:レースエンジニアとして複数のF1チームで活躍。ベネトン、フェラーリ、ブラウンGPでコンストラクターズタイトルを獲得。ミハエル・シューマッハのワールドチャンピオン獲得にも貢献した。
Formula One Groupは現在、デジタル部隊の発足に向けて動いており、「われわれはファンにより楽しんでもらうため、組織を強化しているところだ」とブラウン氏は付け加えた。
ファンサービスのためにデジタルテクノロジーを早くから導入していた競技は多い。F1はそうした動きに大いに刺激を受けたと同氏は話す。「われわれは特にクリケットの例に注目し、詳しく分析した。競技自体にハイテクは必要ないが、さまざまな情報を事前に把握しておかなければ、試合を楽しむのは難しいだろう。また、ヨットレースのアメリカズカップに至っては、見ただけでは何を競っているのかすら見当が付かないだろう」
F1で今後展開する変革の一部は、2017年シーズンから導入するとブラウン氏は説明する。さらに同氏は「ただし本格的にレースを変革させるのは2018年シーズンになるだろう」とも付け加える。
まず導入される変化は、Snapchatとのタイアップだ。これにより、F1ファンはSnapchatの「Discover」を通じてコンテンツを得ることができるようになる。これは2017年にシルバーストーンで開催された英国グランプリから導入された。
Formula One Groupのデジタル化事業および新規事業の責任者であるフランク・アーソファー氏は次のように話す。「これは、ソーシャルメディア戦略の拡大に向けた第一歩にすぎない。当初からわれわれはパートナーと協力して、ファンにもっと間近でレースを楽しんでもらう取り組みを進めたいと言ってきた。これこそが、テクノロジーと個人の才能の素晴らしい組み合わせで成立しているF1(の神髄)だからだ。そしてこの条件を満たしたのがSnapchatだった」
「舞台裏の紹介など、楽しく魅力的なコンテンツをソーシャルメディアで届けることで、われわれはこの競技の新たなファン層を開拓したい。Snapchatはミレニアル世代に非常に人気がある。われわれはこの世代の人々に特に注目している。この競技の将来を担う存在だからだ」
Formula One Groupは、レースというコンテンツの深層にあるものをファンに伝える方法を探っているのが現状だとブラウン氏は話す。「F1は恐ろしく大量のデータがあふれている世界であり、利用しているテクノロジーのレベルの高さにおいては、他に類を見ない競技だ」と同氏は説明する。「また、偶然にも過去のデータを大量に蓄積しており、同時に将来に関するデータを多く収集する競技でもある。現在は、良いレースを構成する要素の分析を試みている」
まずはF1のWebサイトをレースファン「必見」の場所にしたいと、同氏は抱負を語る。「まずコアとなる基盤を築き、そこからファンの興味に応じてレイヤーを構築する」
例えば、F1のエンジニアリング面に興味を持っているファンにはチームにフォーカスしたコンテンツを提示する。すると、車のどこが変わったのかにも目が向くようになるだろうとブラウン氏は期待する。
知見に満ちたアナリティクスがファン体験をどれほど改善するかを示す例を挙げながら、ブラウン氏は以下のように語る。「バクーで行われたアゼルバイジャングランプリで、バルテリ・ボッタスとランス・ストロールが激しい競り合いとなり、最後のコーナーでボッタスが最終的に追い抜くという劇的な展開となった。ここまでもつれるとは、われわれも予測できなかったが、接戦になるだろうというレベルまでは予測できるようになる」
データを利用すると、レースに関するファン体験を改善することができると同氏は話す。「全ての数字を照らし合わせた結果、最終ラップの20周以上前に、この2台の車のデータは非常に近いことが分かっていた。こうした分析をファンに伝え、デジタルの力でそれをアピールするために、両者を同時に並べたシミュレーションを実行することもできる」
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