画像処理から気象予報まで――「離散事象シミュレーション」とは何かおさらいデータサイエンスのモデル入門【第3回】

画像処理や気象予報など、身近な場面で活用されている予測モデル「離散事象シミュレーション」の仕組みや活用例について解説する。

2024年03月07日 05時15分 公開
[Kurt CagleTechTarget]

関連キーワード

データ | データ分析


 社会における複雑な事象を予測するために、予測モデルを用いたシミュレーションが欠かせない。本稿は、人や物の流れなど、ランダムに発生する事象の分析に用いられる「離散事象シミュレーション」について解説する。

「離散事象シミュレーション」は身近なところに

会員登録(無料)が必要です

 1980年代に理論物理学者スティーブン・ウルフラムが提唱した計算モデル「セルオートマトンモデル」は、空間に格子状に敷き詰められた多数のセルを自動機械(自動機械)として扱う。セルは近隣のセルと相互作用する中で自らの状態を変化させる仕組みだ。

 セルオートマトンモデルの中で特に有名なのが、英国の数学者ジョン・ホートン・コンウェイが1970年代に開発した「Conway's Game of Life」だ。セルは生命体であり、単純なルールに従って誕生や消滅を繰り返す。初期のセル分布によって、複雑なパターンが生み出されることから流行した。

 このように、時間を連続的なものと見なさず独立した事象に分割し、事象と状態の因果性から近似的な計算結果を算出する手法を「離散事象シミュレーション」という。離散事象シミュレーションは、格子の精度がシミュレーション精度に依存する場合によく活用される。例えば、画像処理のフィルタリングや、機械学習(ML)の畳み込み演算に使用されるカーネル技術は、離散事象シミュレーションが支えている。

 他にも、気象予測では気象情報をボクセル(立方体のセル)にひも付け、前の事象や状態に基づいてセルへの入力と出力を決定する。理論的には、マップを表現するメッシュ(格子の集合体)が細かいほど正確性が増す。三角形や六角形のメッシュは、長方形のメッシュよりも正確性に優れる傾向にある。データアナリストは、メッシュの形状やトポロジー(構成)、位相を考慮し、モデルを修正する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 ユーソナー株式会社

潜在ターゲットへのアプローチを効率化、消費者の真のニーズを捉える方法とは?

昨今、法人営業においては消費者のニーズを正確に捉え、迅速に対応することが求められている。こうした中で注目されているのが、インテントデータ活用による顧客の興味関心の可視化だ。本資料では、インテントデータのポイントを解説する。

市場調査・トレンド 株式会社セールスフォース・ジャパン

AI時代のデータガバナンス戦略、効果的に実装するために知っておきたい5つの柱

データの爆発的な増加に加えてビジネスにおけるAI活用が加速する中、AIのメリットを最大限に引き出すためにもデータガバナンスの重要性が高まっている。AI時代のデータガバナンスにおいて押さえておきたい5つの柱を解説する。

製品資料 日本ビジネスシステムズ株式会社

BIツール活用の第一歩、レポート作成を効果的に進める下準備の3つのステップ

効率的で効果的なデータ活用を推進するためにも、BIツールは積極的に利用したいツールの1つだ。その有効性を確認しながら、BIツール活用の第一歩として、レポート作成の進め方や、活用を支援するサービスを紹介する。

事例 株式会社primeNumber

効率的なデータの利活用を促進、15社に学ぶデータ基盤の構築/運用のヒント

データの利活用を進めるためにはデータ基盤の導入が必要だ。しかし、データ基盤を構築/運用するためにはさまざまな課題を乗り越えなければならない。本資料では、データ活用環境の構築に成功した15社の事例からそのヒントを解説する。

製品資料 TIS株式会社

データドリブン経営を実現、データ活用の推進を阻む3つの課題と解消策

データドリブン経営を実現するために多くの企業がデータ活用の取り組みを進めているが、思うような成果を挙げられていないという声も多い。そこで本資料では、データ活用を加速させるために解消すべき3つの課題を解説する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news253.jpg

「AIエージェント」はデジタルマーケティングをどう高度化するのか
電通デジタルはAIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI」の大型アップ...