今、人材採用にAIが活用されつつある。AIが応募者を選別し、応募者にはAIが迅速に返答する。学歴・職歴偏重の傾向をAIが打破する可能性も指摘されている。一方で、当然ながらAIが内在するリスクも懸念されている。
人工知能(AI)は幅広い業界で普及が進んでいる。調査会社Gartnerは、AIが間違いなくIT業界の次のメガトレンドとなると予測している。
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AIの導入が特に活発に議論されている分野がある。それは人材の採用活動だ。大企業は、人材採用にさまざまな方面でAIを活用しようともくろんでいる。
採用コンサルタント企業Experisのスペシャリスト市場ディレクター、マーティン・ユーイングス氏は、このテクノロジーを“とにかく導入はしている”という企業は増えているものの、業界全体で導入するレベルに進むには、あと数年かかりそうだと予測している。
「AIの導入は既に主流となっていて、リクルーターはプロセスに組み込む付加価値を増やせるようになった。同時に、人事選考プロセスは採用者側が評価され資質を問われるものであると感じている人には、その感覚は不当であると、適切かつプロフェッショナルな方法で保証している」と同氏は話す。
「ただし、業界全体にAIが浸透するには、あと3〜5年はかかるだろう。今はまだ、採用プロセスから人間同士が対話する部分をなくすことに積極的になれない企業も存在するから」と同氏は付け加える。
オンライン人材採用サービス企業Totaljobs Groupのプロダクトディレクター、オリリー・バーンズ氏は、AIが本領を発揮する領域は多数の応募者から候補者を絞り込むところだと言う。
「AIの本当にありがたい点は、応募者の絞り込みを支援してくれることだ」と同氏は指摘する。「クライアント企業は最適な候補者の絞り込みをできるだけ早く終わらせてほしいと言ってくるものだ。そのプロセスの短縮を支援できるなら、われわれにとってその効果は大きい」
他方、ハイテク業界専門の人材採用企業Harvey Nashのマネージングディレクター、アンディ・ヘイズ氏は、AIを導入すると面接のスケジュール設定や求職プロセスの調整の時間も短縮できると話す。
「自動化できない理由など何もない」と同氏は主張する。「そこは人間がやるとミスが出やすい部分だから、そのサービスを提供する仮想アシスタントシステムといった製品も既に市販されている」
一部の企業では、チャットbot形式でAIを導入してパーソナル化を図り、求職者の職探し体験も改善している。それぞれの求職者に、応募した職務に合わせた個別の応答を対話形式で伝えられるソフトウェアを実装しているのだ。
オンライン求人サイト「Monster」がその一例だ。同サイトは今後数カ月をかけて、人材採用プロセスにルールベースのグラマー(文法)と機械学習を使うチャットbotを導入し、求職者の応募体験をパーソナル化する計画を立てている。
Monsterがこのテクノロジーを導入するのは、求職者が応募する際の「旅」(過程)を支援するのが目的だと、同社コンシューマーマーケティング部門の欧州担当ディレクターのシニード・バンティング氏は説明する。
「より親しみやすく、魅力的な体験を提供できる」と同氏は話す。「これを求職者に提供できるようになると、求職者は自分だけの体験をしているように感じ、かつ必要な情報が得られる。素晴らしい」
AIは、求職者が企業からの連絡を待つべき日数の管理を支援する役割も果たしているとバーンズ氏は付け加える。
「AIシステムが求職者と人事担当者の対話にアクセスすると、学習を進める。例えば、最終候補者に連絡を取るまで、採用担当者が通常どれだけ日数をかけるのか、といったことを学習する。こうしてシステムは求職者の期待度を設定し、候補から漏れた求職者にしかるべき時期に自動的にその旨を通知する」
ある仕事に応募したのに、募集側からの応答が遅い(または全くない)というのが、人材採用サービス会社に寄せられる不満の中で最も多いからだとバーンズ氏は続ける。
「求職者が仕事に興味を持った、その仕事に応募しようとしているといった、『旅』の初めの時期には特にそうだ」と同氏は話す。
「人工知能やQ&Aの仕組みをこうした場面に配備しておくと役に立つ。この種のテクノロジーを使って、求職者にフィードバックを提供するのも一手だ」
この業界への苦情として同様によく聞くのが、最終候補者の絞り込み時に、採用担当者が過去の学業成績や資格に頼り過ぎる点だと、Headstart(機械学習ベースの人材採用アプリメーカー)の共同創業者兼CTO(最高技術責任者)ジェレミー・ヒンドル氏は指摘する。
「既存の履歴書形式の情報と、現在企業が運用している採用システムの枠組みの中では、各人の能力を測るのは非常に難しい」と同氏は説明する。
「現状では学業の成績と出身校がかなり重視されているが、それが最良の方法だとは思わない。企業は最高の才能の持ち主を見逃している場合がしばしばある。この傾向はハイテク業界で特に顕著だが、広告やメディアでも多く見られる」と同氏は付け加える。
これこそ、ヒンドル氏と、Headstartの共同設立者であるニコラス・シュカーデミアン氏が、アプリで対処しようと奮闘している問題だ。彼らは、求職者に有意義な役割を探す部分に機械学習を応用している。
求職者はまず、性格的な特徴などを含む詳細なプロファイルをWebサイト上に作成する。この詳細情報を採用企業と共有することはないが、Headstartのアルゴリズムがこれを参照し、より広範囲の要因も考慮に入れた上で候補者に適切な役割を探す。
採用プロセスにAIを組み込むことには利点もあるが、欠点もある。
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