ヤフーの「Cloud Foundry」徹底活用術、使って分かったPaaSの魅力と難しさ開発者がインフラを意識しない世界へ

「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーは、開発速度の10倍向上を目指しクラウドネイティブ基盤を構築。そのために「Pivotal Cloud Foundry」を採用した。同製品を選択した理由や目指している方向性についてまとめた。

2017年12月11日 05時00分 公開
[小山健治]

 次の20年に向けた新たなビジョン「UPDATE JAPAN」を掲げるヤフーは、最新のデジタルテクノロジーで人々の生活と社会をアップデートするため、サービス開発のさらなる高速化を追求している。その解決策として着目したのがオープンソースに基づくPaaS(Platform as a Service)環境の活用である。2017年11月16日に開催されたPivotalジャパンのイベント「Pivotal.IO 2018」に登壇したヤフーのクラウドプラットフォーム部・部長、佐野 雄一郎氏が、クラウドを前提としたシステムであるクラウドネイティブの次世代プラットフォーム(システム動作環境)として採用した「Pivotal Cloud Foundry」の全社横断的な活用方法や運用体制について解説した。

ヤフー 佐野 雄一郎氏 ヤフー 佐野 雄一郎氏

開発者がインフラを意識しない世界へ

 月間に4158万ものユーザーIDがログインして利用するポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフー。同社は、生活に密着した公共性の高いサービス事業者として、安全かつ快適なポータルサイトを提供する使命を担っている。それを支えるコアとなるのが、月間に約758億ものPVを処理するインフラおよびプラットフォームに関するエンジニアリングだ。

 同社は現在も絶え間ない改善を続けている。Pivotal.IO 2018に登壇し、「UPDATE JAPANの実現へ『10倍速く』開発するためのYahoo! JAPANの取り組み」と題する基調講演を行った佐野氏は、「デジタルテクノロジーで人々の生活と社会をアップデートするには、より速いスピードでサービスを開発する必要があります」と語った。その目標値が講演タイトルにもある“10倍”なのだ。

 もっとも単に開発作業だけをスピードアップする仕組みを導入しても、新たなサービスをデリバリー(提供)するまでのトータルの時間短縮にはつながらない。実際には開発者は日々の運用にもかなりの工数を割いており、その部分を圧縮しなければならない。「開発者がインフラを意識することなく、さまざまなサービスの提供といった、より大きな価値を生み出すことに集中できる世界を作りたいと考えました」と佐野氏は強調した。

 この課題を解決すべく同社が導入に踏み切ったのが、OSS(オープンソースソフトウェア)ベースのPaaS環境、「Cloud Foundry」だ。具体的に選定したのは、「Pivotal Cloud Foundry」および開発やデリバリー作業を自動化するCI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)ツール「Concourse」の2製品である。

Pivotal Cloud Foundryを選定した理由とは

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