「Pivotal ジャパン サミット 2015」リポート
ヤフー、“開発効率10倍”を目標にPaaS利用に本腰(1/2 ページ)
今、開発効率の向上は企業にとって大きな関心だ。ヤフーはそのためにPaaS利用に乗り出す。Pivotalジャパンが2015年12月に開催した「Pivotalジャパンサミット 2015」の講演から狙いを探る。
迅速なサービス提供を目指すが故の開発面での課題
検索サービスの提供を通じ、日本のインターネット黎明期からインターネットの普及拡大のけん引役を担ってきたヤフー。同社はユーザーの裾野の広がりをいち早く捉え、サービスの多様化を積極的に進めてきた。その事業領域は今や、検索と連動した各種の広告配信やオークションなどのeコマース、クレジットカードをはじめとした決済事業など多岐にわたる。
そんな同社の事業基盤に、多様なサービスを提供するITインフラがある。ネットサービスは参入障壁が低く、競合他社との競争に勝ち抜くにはレスポンスをはじめとする利便性の向上や、アイデアのいち早い事業化などが鍵を握る。そこで同社は創業以来、プログラミング言語やフレームワークをはじめとしたIT技術の見直し、開発プロセスの改善に継続的に取り組んできた。検索エンジンやフラットデータベース(メモリベースの高速なデータベース)、プロセス間通信技術、パッケージ管理などは、独自技術を駆使して自分たちの開発スタイルに合うように開発・運用してきたものだ。開発手法においても、PDCAを頻繁に回す一般向けサービスではアジャイル型、決済や課金などテストをしっかり行う必要のあるB2B向けサービスはウォーターフォール型と、サービスやプロダクトに合わせて変えている。
また、ヤフーのトップページには日々、莫大なアクセスが押し寄せる。「ヤフーのページを見に来た瞬間にその人に適した広告やコンテンツを出すために、複数のデータベースからデータを引き上げ、それらを組み合わせてカスタマイズしたAPIを作っている。一方、更新の少ないデータは、キャッシュの仕組みで高速化するなどの工夫をしてパフォーマンスを維持している。アクセスログだけでも1日に数Tバイトあり、数千万のIDを運用している。この数のIDを保存し有効活用するために、ファームを分けて分散処理をするようなインフラを作ってデータをさばいている」と述べるのは、ヤフーのショッピングカンパニー プロダクション本部で本部長/テクニカルディレクターを務める平田源鐘氏である。
ただし、いまだ解決に至らない課題も多い。「ビジネスの多様化によって、1つのサービスに複数の事業が関わることも増え、システムが複雑になりつつある。開発部隊を事業部ごとに分散配置しているため、開発やテストの足並みをそろえることは容易ではない」
インフラ管理者を開発に回すための策
さらに、事業拡大によるITインフラの肥大化も頭痛の種だという。現在、同社で稼働するサーバは物理と仮想を合せて10万にも及ぶ。大量のアクセスを迅速にさばくためとはいえ、これほど膨大な台数となれば、セキュリティパッチの適用やEOL(End Of Life)を迎えるサーバの特定だけでも多大な手間とコストが掛かる。
もちろん、ヤフーもただ手をこまぬいていたわけではない。仮想化技術をいち早くITインフラに取り入れるとともに、オープンソースソフトウェア(OSS)のクラウド構築ソフト「OpenStack」によるIaaS(Infrastructure as a Service)環境の整備にも取り組んできた。そこでの主たる狙いは、トラフィックの変動に応じ、各サービスに割り当てたサーバリソースを柔軟に提供するという、物理サーバだけでは困難な効率化の実現である。
この取り組みをさらに推し進め、開発効率の向上も実現するために平田氏が着目したのがPaaS(Platform as a Service)である。
「PaaSでは、ネットワークからランタイムまでの幅広いレイヤーで、各種ソフトウェアによって管理がほぼ自動化される。これはすなわち、開発者がITインフラを意識することなく開発に打ち込めるようになるとともに、インフラ部分の運用管理の手間も抜本的に削減できることを意味する。ならば、これを使わない手はないと判断し、本格的な検討作業に着手した」(平田氏)
同社が抱える社員5000人のうち半数はITエンジニアだという。IaaSによって、ITインフラのネットワークからハードウェアまでのレイヤーが仮想化されたことで、それらを管理していたITエンジニアを開発に回せるようになった。PaaSであれば、さらに多くのITエンジニアを開発に充てることが可能だ。また、ITインフラの共通化が進むことで、事業部間で足並みをそろえた開発やテストも格段に行いやすくなると期待できた。
検証作業ではITエンジニアへの配慮に腐心
しかし、PaaS検討の道のりは決して平たんではなかった。「当初はITエンジニアのPaaSに対する理解が必ずしも一致していなかった」(平田氏)ことも原因の1つ。この点を踏まえ平田氏は、現状のITインフラの課題と、その解決に向けたPaaSの有用性をITエンジニアが納得するまで繰り返し説いて回ったのだという。
その打開策ともいえる“荒業”が、運用と開発の責任者をPaaSの検証作業に初期段階から加わってもらったことである。
「プロジェクトの責任者に事業部門のITエンジニアを抜てきし、OpenStackやネットワーク、プラットフォームを手掛けるインフラ担当と、『Yahoo!ショッピング』や『ヤフオク!』、メディアを手掛けるサービス担当の総勢26人の責任者をコアメンバーとして検証作業に巻き込んだ」(平田氏)
最終的に50人規模によるPaaSの検証作業を2015年8月まで実施した。
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