オンプレミスのデータやシステムをクラウドへバックアップ/DRする場合、どのような製品を利用すればいいのだろうか。バックアップ/DR方式別に、製品の組み合わせを解説する。
本連載では、クラウドをバックアップや災害対策・復旧(DR)に活用する際の方式や構成について解説している。最終回の今回は、現実的な方式選定と製品の組み合わせについて紹介する。今回の内容は下記の通りだ。
■ | 現実的な構成、方式の全体像 |
---|---|
■ | レイヤー1:バックアップデータのレプリケーション |
■ | レイヤー2:ファイルサーバのレプリケーション |
■ | レイヤー3:オンプレミス・クラウド間システム切り替え |
■ | ハイブリッドクラウドからシングルクラウドマルチリージョン、そしてマルチクラウドへ |
これまでの連載で「クラウドをバックアップデータの複製先とするための方式」「オンプレミスからクラウドへサイト間のシステム切り替えをするための方式」について、考えられる方式を網羅的に説明してきた。詳しくは各回を参照していただきたい。
【第1回】クラウドをバックアップ/DRに活用するには? 目的別に要件を固める
【第2回】「クラウドをバックアップデータの複製先」とする場合の構成と注意点
【第3回】バックアップ/DRで「システムの切り替え先にクラウドを使用する」8つの方式
連載インデックス:バックアップ/災害対策にクラウドを使いこなす
採用する方式の数は少なくすべきだ。方式によっては、対象のシステム数が少ないときはよいが、対象システムが増えることで管理が複雑になるものがある。管理対象のコンポーネント(各方式の構成要素)が増えてしまうために、製品間の互換性の確認やバージョンアップ作業の工数が増大してしまう可能性があるからだ。
現実的な構成/方式は図1のようになる。今回は「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」(Azure)などのパブリッククラウドとの組み合わせ(注)を想定する。
※注:今回は、オンプレミスとパブリッククラウドの組み合わせについて言及する。オンプレミスとパブリッククラウドで同じハイパーバイザーを使用している場合、ハイパーバイザーの機能を用いてバックアップ/DRができるが、クラウド事業者がどこまで権限を解放しているかに依存するため、ここでは言及しないことにする。原稿執筆時点で国内での一般利用ができない「VMware Cloud on AWS」「VMware virtualization on Azure」についても言及しない。
3つのレイヤー(1〜3)で理解すると分かりやすい(図1)。「3.オンプレミス・クラウド間システム切り替え」のみを検討するユーザー企業もあるが、「1.バックアップデータのレプリケーション」が必須であることを再認識してほしい。3のデータのレプリケーションは一般的に非同期なので、整合性が確保できないケースがある。そのため1が必須であると理解していただきたい。バックアップデータのリストアだけでは復旧に時間を要するので、目標復旧時点/標復旧時間(RPO/RTO)を短くするために、上位のレイヤー2、3を積み上げていく。目的、要件を整理し長期保管の用途がある場合は、クラウドストレージの利用も検討する。
以下、各レイヤーについて説明する。製品選定ポイントの基本は「シンプルさ」だ。製品数を減らし構成をシンプルにするのに加え、複数製品を使用する際も容易に連携できる製品を選び、運用が楽になるようにしたい。
オンプレミスでのリストア時間を短くするため、オンプレミスにバックアップデータを保存し、クラウドのバックアップサーバやクラウドストレージに重複排除レプリケーション/複製をする。
バックアップデータのレプリケーションには重複排除技術が欠かせない。「Veeam Backup & Replication」や「Dell EMC Avamar」など、重複排除ストレージとの併用を推奨しているバックアップ製品は、製品数が増えるのでお薦めしない。大規模なオンプレミス環境でも利用できるアプライアンス(統合型バックアップアプライアンス)や、クラウドの仮想アプライアンスがよいだろう。バックアップサーバのOSとバックアップソフトが一体化しているので、OS分の構成要素を減らすことができる。製品としては「Veritas NetBackup Appliance」(NetBackup)、「Rubrik」などが挙げられる。NetBackupは2018年、UX/UI(ユーザー経験価値/ユーザーインタフェース)が大幅に改善される。Rubrikはスケールアウト可能なアーキテクチャでシンプルな操作性が特徴だ。
「Arcserve UDP Appliance」は非常にコストメリットのあるアプライアンスである。ただし、比較的小規模であれば問題ないが、仮想アプライアンス版がないことと、物理アプライアンスもOS(Windows)とバックアップソフトが分かれる点が、一般的なアプライアンスと異なるので注意してほしい。
クラウドストレージへの複製はDR用途というより、安価な長期保管先だと理解するとよいだろう。クラウドストレージからの読み出しは時間を要するからだ。
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