技術が人に与える影響を掘り下げる
医療ITのスタートアップ企業が医療業界に参入する余地はあるか?
2018年の医療情報管理システム学会(HIMSS)にて、医学博士のインドゥ・サベイヤ氏が、デジタルトランスフォーメーションや、医療向けテクノロジーと一般消費者向けテクノロジーとの関わりについて見解を語った。
医学博士のインドゥ・サベイヤ氏が、医療向けテクノロジーと一般消費者向けテクノロジーが相互に影響する仕組みについて、見解を簡単に示した。医療IT分野において、サベイヤ氏は医療情報管理システム学会(The Health Information and Management Systems Society:HIMSS)でHealth 2.0部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めている。このHealth 2.0部門は、新しい医療技術やベンダーに関する市場調査やカンファレンスの運営を担っている。サベイヤ氏は映画製作者でもあり、短編映画の脚本や監督もしている。
サベイヤ氏は2018年3月5~9日に開催したHIMSSカンファレンスでTechTargetのインタビューに答えた。このインタビューでは、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーションの意味や、スタートアップ企業が医療業界に参入する方法について意見を聞いた。
編注:本稿はこのインタビューの抜粋です。
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――医療ITには現在、エンタープライズレベルの企業が多数参入しています。スタートアップ企業の目から見ると、この分野は近寄り難い印象があります。医療ITのスタートアップ企業がこの業界に参入する余地は残されていますか。
インドゥ・サベイヤ氏(以下サベイヤ氏) それはスタートアップ企業の種類によって変わる。データ分析や人工知能(AI)の企業としてビジネスをしているなら、Googleのアルゴリズムで今後実現するようなことは自社でもできるようにしなければならない。そうでなければ、競争するのは非常に厳しいだろう。アルゴリズム分析の分野では大手企業が一部の特殊分野を制することになる。そのため、そこがいくらか脅威になる。本当に突出するものが何かあれば入り込むチャンスはある。
第二に、大手企業は全データを送り込むクラウドベースのプラットフォームを実現しようと努めている。さらにそのプラットフォームでAIを動かせるようにして、システム全体を改善している。大手企業はこのような理想を追い求めている。医療分野で求められる細やかさの性質を考えると、その実現は容易ではない。こうしたプラットフォームを備えた企業はどこであれ、個別のサービスが必要になってくる。そこもまた、スタートアップ企業にとって非常に大きなチャンスになると考えている。
――「デジタルトランスフォーメーション」がバズワードとしてよく使われています。しかし、その意味は分かりにくく曖昧なところがあります。医療ITではこの用語をどのように定義しているのでしょうか。
サベイヤ氏 医療システムにとっては、多くのことを自動化するという意味だと考える。例えば、以前なら書類で処理していた作業や、電話やFAX機器を使用する面倒なプロセスとして従業員が対応していた作業がその対象になる。つまり、患者が医療システムに登録された場所から全てを取得し、その全てを自動化/シームレス化することになる。いずれにせよ、一般消費者の環境では日常の中でデジタルトランスフォーメーションが起きている。生き方や、生活のあらゆる面、さらには運転する車や、もはや運転を必要としない車という形でもその変化は表れている。
とはいえ、このようなプロセスが並行して起こっていても、医療にはそれほど関係がない。Health 2.0部門では、これらの影響力と、このような力がどのように収束するか、その両方をある程度常に確認している。テクノロジーによって生活のあらゆる面や形が急速に変化しているなら、それは医療にとってどのような意味を持つだろう。医療がそうした時流に乗っているとしたら、それは私たちの生活にとって何を意味するだろう。これは医療システムが紙からEMR(電子カルテ)に移行するだけの話ではなく、もっと幅広いものだと考えている。インド出身の有名な外科医で、非常に先進的な病院チェーンの運営を始めたデビ・シェティ氏という方がいる。同氏によると、将来の病院は2つの機能で構成されるようになるはずだという。それは救急救命室(ER)と集中治療室(ICU)だ。
――では、病状の重い患者だけが病院に行くということになるのでしょうか。
サベイヤ氏 その通りだ。医療保険分野で非常に先進的な考えを持つ人は、医療制度の根本的な変革が必要だと述べている。医療保険関係者からすると、患者が病院以外に収容されるとしたら、実のところテクノロジー、そして革新によって、コストへの見返りが大きくなる可能性があるためだ。熟練した介護施設であっても、自宅であっても、その場で適切に処置できるなら、わざわざ(患者の治療のために)一流の病院と契約する必要はあるだろうか。テクノロジーによって、このように同じ土俵で競争が行われるようになると考えている。
――短編映画製作者として、その経験から医療ITまたはビジネスIT全般について精通する上で何か役に立つことがありますか。
サベイヤ氏 異なる視点から、ありきたりでない話を伝えることができているとしたら、それは映画製作の経験のおかげだろう。他にも映画製作の経験から得たものはある。今はテクノロジーがこれ以上必要ないところまで来ている。世界には32万個ほどの医療アプリがあり、15万個は2015年から現在までの間に追加されたと考えている。もう十分だ。今後さらに増えることにはなるだろうが、足りていないという状況ではない。
そしてようやく今になって、これらのテクノロジーが人々の生活にどう影響しているかについて実際に深く掘り下げるようになってきた。一部の企業がそうした取り組みをはじめているのはご存じの通りだ。まだこうやって理解している段階なのだ。テクノロジーの影響を調査することにこれまで時間を費やしてこなかったのは、変化が非常に早く起こっていたからだ。テクノロジーは実際に人々にどのような影響を与えているのだろうか。
ストーリーテリングや映画製作の世界では、ナラティブ・メディスン(Narrative Medicine:物語に基づく医療)という言葉がある。これは、その人自身の健康にまつわる物語と、そうした物語がアウトカム(医療行為に対する成果)にどのように作用するかを重視するものだ。映画製作からはそのようなことを学んだ。落ち着いて、人々の間で起こっている実情を理解するにはどうすべきか。例えばあるガジェットを手に入れたとする。それはぴかぴかして格好いい。そこにロボットもやってきた。では、人間の物語はどこにあるのだろうか――こういったことの実際の影響を解き明かすには、非常に多くの要素が絡み合って、大変だ。人々は、今そのようなことを求めている。
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