患者呼び出しを1回で とびた眼科は「音のバリアフリー」をどう実現したのか待合室に「ミライスピーカー」を採用

医療機関での呼び出しは患者にとって聞き取りづらいことがある。患者が気付くまで繰り返し名前を呼び続ける負担は、医療従事者にとって日常的な悩みの種だ。この課題を解決した、とびた眼科の事例を紹介する。

2019年09月26日 05時00分 公開
[上田 奈々絵TechTargetジャパン]

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 患者層の幅広い医療機関にとって、施設や設備面でのバリアフリー化は無視できない課題だ。埼玉県さいたま市のとびた眼科は、院内設備のバリアフリー化に取り組んでいる。視認性を高めるために階段の色を一段ずつ変えたり(写真1)、待合室で車いすの通るスペースを確保したりするなど、院外から診察室に至る動線や設備を工夫し、どのような患者でも「行きやすく、帰りやすい」環境づくりを進めている。

 とびた眼科はバリアフリー化の一環としてこれらの設備に加え、サウンドファンの「ミライスピーカー・ボクシー2」(以下、ミライスピーカー)を導入した。難聴者でも聞きやすいという特徴を持つスピーカーだ。

写真 写真1 手すりを付け、一段ずつ色の違う階段にするなどバリアフリーを進めている《クリックで拡大》

 ミライスピーカーは、一般的な構造のスピーカーよりも難聴者、高齢者にとって聞こえやすく、健常者であっても人混みの中など騒音がある場所で聞き取りやすい音を再生できる。スピーカーユニットを曲面にすることで、音を減衰させず広範囲に届ける効果があるという。なぜ曲面にすることで音が聞き取りやすくなるのかは「仮説はあるが、まだ完全には解明できていない」(サウンドファン代表取締役副社長の宮原信弘氏)。ミライスピーカーは医療機関や空港、銀行の窓口など、主に呼び出しや音声案内が必要な場で利用されている。

 患者呼び出しの聞き取りづらさについては、とびた眼科院長の飛田秀明氏も「業務の中で課題に感じていた」と説明する。とびた眼科に限らず、飛田氏はこれまで勤務してきた各病院で、同様の課題を実感してきた。

呼び出しの繰り返しが患者と従業員双方にとって負担に

写真 とびた眼科院長 飛田秀明氏

 医療機関は一般的に肉声か、スピーカーとマイクを利用して患者の名前を呼ぶ。2、3回呼び出しても患者が気付かない場合は、受付スタッフが待合室に足を運んで患者に直接声をかける必要がある。患者も注意して呼び出しメッセージを聞かなければならない。

 スムーズに患者を誘導するために、ポケットベル型の呼び出しシステムを導入している医療機関もある。ただしポケットベルは導入コストや管理の負荷が高く、小規模なクリニックには手が届きにくい。飛田氏は難聴者や高齢者にも聞き取りやすく、1回呼び出しただけで聞こえるスピーカーが必要だと考えていた。

 2018年にとびた眼科を開院する際、飛田氏が「診察時の呼び出しの聞こえづらさ」という課題を解決できそうなスピーカーを探したところ、ミライスピーカーと他社製品が候補に浮上したという。

 実導入の前に2つの製品を院内に設置し、待合室の端から端まで聞こえるかどうか、設置しやすいかどうかなどの観点で比較した。この結果、とびた眼科に適していると飛田氏が判断したのがミライスピーカーだった。競合製品は所定の場所の1人に対して音を聞かせることには問題なかったが、柱越しでは音が聞き取りづらくなることがあったと、同氏は説明する。「待合室のどこにいるのか分からない患者に向けて音声を伝達するには、ミライスピーカーの方が向いていた」

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