「サイドチャネル攻撃」でデータを盗み出す
Intel製CPUを狙う攻撃「ZombieLoad」に新種が登場 現行のパッチも無効
Intel製プロセッサにある脆弱性を悪用する「ZombieLoad」の新種が見つかった。発見した研究者グループによると、元々のZombieLoadへのパッチに欠陥があったことも判明したという。
セキュリティ研究者グループにより、Intel製プロセッサの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用した「ZombieLoad」攻撃の新バージョン「ZombieLoad Variant 2」(以下、ZombieLoad v2)が見つかった。さらに最初に見つかったZombieLoadに対するIntelの修正が回避可能であると警告した。
Intelが2019年5月14日に明らかにしたZombieLoadは、処理高速化の仕組みである「投機的実行」を悪用して同社製プロセッサからデータを盗み出せるようにする攻撃だ。「Rogue In-Flight Data Load」(RIDL)、「Fallout」とともに、プロセッサの脆弱性「Microarchitectural Data Sampling」(MDS)を悪用する攻撃として報告した。前述の研究者グループはZombieLoad v2を同年4月23日にIntelに報告し、この攻撃がIntelのプロセッサ「Cascade Lake」に有効であることを同年5月10日に伝えたという。だがZombieLoad v2は2019年11月まで公表を控えられていた。
発見者グループの見解
ZombieLoad v2を発見した研究者グループは、「ZombieLoad Attack」と題したWebサイトで次のように述べている。
私たちはZombieLoadの変種を発見した。これにより、MDSへの対策をシリコンに組み込んだCPUを対象にした攻撃が可能となる。Cascade Lakeのようなマイクロアーキテクチャを持つCPUは、RIDLやFalloutといった他のMDS攻撃は無効だ。だが、このZombieLoad v2によってデータが漏えいする恐れがある。MDSを悪用する攻撃への対策として提供されている、ソフトウェア面からの保護策も十分ではない。
発見者グループの一員で、グラーツ工科大学の情報セキュリティ博士候補生であるモーリッツ・リップ氏は次のように説明する。「MDSに対する最初のパッチは攻撃を防ぐことができず、攻撃を難しくするだけだった。これを適用すると漏えい率を低くできるが、それは攻撃の遂行にかかる時間を延ばすだけにすぎない」
ZombieLoadに関する研究論文の改訂版で、発見者グループは、「ZombieLoad v2の大きな特徴は、脆弱性『Meltdown』への対策としてハードウェアに修正を加えたプロセッサにも有効であることだ」と述べた。加えてZombieLoad v2を実行するには、「Skylake」「Kaby Lake」「Coffee Lake」「Broadwell」、Cascade Lakeなど、2013年以降に販売された特定のマイクロアーキテクチャを持つCPUで利用可能な命令セット「Intel Transactional Synchronization Extensions」(Intel TSX)が必要だという。
IntelはZombieLoad v2を「TSX Asynchronous Abort」(TAA)と命名し、これに関してブログ記事「November 2019 Intel Platform Update」を公開した。同社の製品保証&セキュリティ担当広報責任者であるジェリー・ブライアント氏は、同社のMDS対策が不十分であることを認め、同ブログ記事で次のように述べた。
TAAとMDSへの対策を利用すれば、攻撃の対象となる箇所は大幅に減らせる。ただしTSXが有効な場合に限り、TAAによってサイドチャネル攻撃(CPUの利用時間や消費電力などからデータを読み取る攻撃)が可能となる。これにより、データが外部に流出する恐れがあることが、今回の発表の直前に確認された。これについては、今後のマイクロコード(CPUを制御するプログラム)のアップデートで対処する。
ZombieLoad v2は本当に危険か
発見者グループは、「この攻撃は広範なプロセッサにおいて有効であり、クラウドでも実行可能だ」と指摘する。これについてリップ氏は次のように話す。「クラウドなどの仮想環境で、2つの仮想マシンが別のスレッドで実行されている場合にもZombieLoad v2は有効だ」
IT資産管理製品を取り扱うIvantiの製品管理とセキュリティの責任者であるクリス・ゲートル氏は、「今回の調査は興味深いが、ZombieLoad v2のリスクは比較的低い」という考えを示す。
確かにクラウド環境でZombieLoad v2を用いれば、さまざまな企業から情報を盗み出すことは可能だ。だが実際にこの攻撃が実行される可能性は「低い」とゲートル氏はみる。「攻撃者はたいてい、なるべく速く簡単に目的を果たそうとする。ZombieLoad v2よりはるかに簡単に悪用できる、情報漏えいを狙った攻撃は他にたくさんある」(同氏)
リップ氏によると、攻撃者がデータを盗み出すためには、ユーザー認証用のパスワードをロードするトリガーコードなど、「標的が特定のデータをロードすること」が必要だという。
「Intelは今後も事後対処にとどまる」と予想
ゲートル氏は、ZombieLoad v2が実際の攻撃シナリオで悪用される切迫した事態が起こらない限り、「ZombieLoadのようなサイドチャネル攻撃に対するIntelの事後対処的な姿勢は変わらない」と予想する。MDSに対する不完全なパッチを発行したことからも「この脆弱性に対するIntelの対処の度合いが垣間見える」と同氏は語る。
Intelは報告された問題に対処したにすぎず、さらに対処すべきことや修正が回避される可能性までは検討しようとしていないとゲートル氏は主張する。「投機的実行の悪用が理論上のものである間は、事前対処より事後対処にとどめるIntelの姿勢は変わらないだろう」(同氏)
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