機密データに不正アクセスされる可能性
CPU脆弱性「Meltdown」「Spectre」がセキュリティに及ぼす決定的な影響
MeltdownとSpectreという脆弱(ぜいじゃく)性は、システムの物理セキュリティとハードウェアセキュリティに影響しており、検出は極めて難しい。これらの攻撃を防ぐ方法とは。
脆弱性について議論するとき、脆弱性がCVE-2018-1234のような専門的な名前では注目が集まらない。そのため、議論するのに便利なように脆弱性には名前が付けられる。特定の脆弱性の影響を受ける多種多様な要素が各種製品内にあるために、脆弱性がさまざまなベンダーに影響を与えることがある。こうした場合にも、脆弱性に名前を付けて分類すると役に立つ。
2018年1月、2つの新しい脆弱性が公表され、名前も付けられた。それがMeltdownとSpectreだ。この2つはサイドチャネルタイミング攻撃に関する脆弱性だ。その影響については多くの議論が交わされている。その結果、多数の企業が続々とリリースされるパッチの適用を急いでいる。
併せて読みたいお薦め記事
「Meltdown」「Spectre」についてもっと詳しく
- Spectre/Meltdown問題で脚光 「CPU脆弱性」の影響と対策
- 「Meltdown」「Spectre」の脆弱性、大手クラウドサービスが格好の標的に
- 「Meltdown」と「Spectre」で明らかになったクラウドベンダーの対応能力
- 発見者が解説――「Spectre」を発見したリバースエンジニアリング手法
- 「Meltdown」と「Spectre」は本当にCPUの脆弱性か、それとも単なる欠陥か
CPUだけじゃない「脆弱性」の脅威と対策
これらの脆弱性は、クラウドシステムやアプリケーションに及ぼす影響が大きい。また、適切なタイミングでパッチを適用することが極めて重要になる。ただし、エンドポイントに対する影響はそれほど明確ではない。
本稿ではMeltdownとSpectreという2つの脆弱性と、これらに対して企業が身を守る方法を取り上げる。
MeltdownとSpectreとは
多くの場合、情報セキュリティではOS、アプリケーション、ユーザーを重視する。一方、物理セキュリティやハードウェアセキュリティは無視されることが多い。通常、物理セキュリティは情報セキュリティチームの対象範囲外になる。チームがハードウェアセキュリティに対処することはめったにない。しかし、ハードウェアセキュリティが基礎になければ、適切にシステムを保護することは難しくなる。
ハードウェアセキュリティ機能はプロセスの分離に不可欠だ。プロセスを分離することで、権限を分離し、標準ユーザーが特権ユーザーとしてコードを実行することを防ぐ。共有キャッシュなど、共有リソースへの不正アクセスも防止する。また、システムのBIOS更新時にはハードウェアセキュリティが最も効果的な場合もある。
MeltdownとSpectreという脆弱性が公表されたのは2018年1月のことだ。しかし、2016年6月には関係者に対応の協力を求めるために非公式に明かされていた。Meltdownは、Intelベースシステム上でのユーザーアプリケーションとOSとの間における分離の脆弱性だ。この脆弱性では、権限を持たないプロセスがメモリ保護を迂回(うかい)し、システムメモリに不正アクセスできるようになる。
SpectreはCPUにおける投機的実行の脆弱性だ。これにより、攻撃者はアプリケーションを欺いてメモリ内の秘密を漏えいさせることができる。投機的実行は、本来CPUのパフォーマンスを最大限に引き出すために利用されている。
これらの攻撃はIntel、AMD、ArmのCPUを標的にする。これらのCPUがデバイスに占める割合は非常に大きい。どちらの攻撃もサイドチャネル攻撃を使用することで、標的にしたメモリの場所からデータを読み取る。そのようにして、安全な領域に保管されたパスワードや暗号キーといったメモリ内の機密データにアクセスする。また、どちらもローカルシステムでコードの実行を必要とする。これらは事実上権限昇格の脆弱性だ。
クラウドシステム、仮想ホストシステム、サーバでは、これらの権限昇格の脆弱性による影響が大きい。だが、エンドポイントへの影響は比較的小さいと思われる。エンドポイントでは、多くのユーザーが依然として管理者アクセス権や特権アクセス権を持っている。エンドポイントではOSやアプリケーション内に多様な権限昇格の脆弱性が潜んでいることがある。これらの新しい脆弱性も、そうした既に存在する脆弱性の一部にすぎないだろう。
これらの脆弱性を攻撃するには、ローカルシステムで信頼できないコードを実行しなければならない。Webブラウザは脆弱だとされている。攻撃者はJavaScriptのサイドチャネル攻撃を利用してブラウザからデータを読み取ることができるためだ。WebブラウザのJavaScriptでSpectreを悪用する概念実証コードを開発した研究者もいる。
MeltdownとSpectreにどう対策をするか
ハードウェアの脆弱性に対する企業のセキュリティは通常のソフトウェアパッチよりも複雑になる場合がある。それでも、ハードウェアの脆弱性に対処する計画と、これらの脆弱性が企業にもたらすリスクを考慮した計画を用意すれば、適切な対応を決めやすくなる。
多くの場合、ハードウェアの脆弱性が見つかると、それに対応するソフトウェアパッチが用意される。MeltdownとSpectreに対しては複数のパッチ、BIOSの更新、ファームウェアの更新が提供されている。これらの脆弱性にパッチを適用することによる影響は、システム、CPU、ワークロードによって異なるようだ。
パッチが原因で速度が大幅に低下したという報告も幾つか上がっている。パッチの一部が壊れていたためだ。また、削除されて、置き換えられていたというものまである。Microsoftもパッチを提供しているが、ウイルス対策ソフトウェアの互換性の問題を報告している。そのため、運用環境にパッチを導入する前にそれらをテストすることが必要だ。
Webブラウザなど、使用しているアプリケーションによってはアプリケーションレベルのパッチが用意される場合もある。これらの脆弱性に対処するには、CPUが再設計されて交換されるまで、OSやアプリケーションスタックに注意を払うことが求められるだろう。
脆弱性を発見した研究者によると、これらの脆弱性に基づいた攻撃を検出することは極めて難しいという。特に、JavaScriptブラウザを悪用した攻撃は発見するのが困難とのことだ。ほとんどの悪用ではエンドポイントでコードを実行する必要がある。そのため、実行ファイルをログに記録することで疑わしいプロセスを検出できる可能性がある。
悪意のあるJavaScriptは、エンドポイントのセキュリティツールや幾つかのマルウェア対策プログラムを使用することで検出できる。CPU利用率やハードウェアパフォーマンスを監視して、検出可能なアクティビティーの急増を突き止められる場合もある。だが、これは大量の誤検出が生じる結果にもなりかねない。これらの脆弱性を突く標的型攻撃を懸念している企業には、Linuxで使用できるツールがある。これらのツールはMicrosoftのWindowsに移植される可能性がある。
MeltdownとSpectreの脆弱性は従来のデスクトップとノートPCのシステムに影響する。これらのシステムはパッチの適用が必要になる。IoTシステム、組み込みシステム、監視制御とデータ取得システム、産業用制御システムも同様だ。しかし、後に挙げたものほどセキュリティ保護が難しくなる可能性がある。
結論
MeltdownとSpectreの脆弱性がクラウドシステムや共有ホスト環境に影響することは疑いようがない。また、どちらも慎重な調整と速やかな対応が必要とされる。エンドポイントは脆弱な状態にあり、サーバと同じくらいパッチの適用が難しいことがある。しかし、権限昇格の脆弱性が影響するのは特定のエンドポイントに限られため、影響は小さいかもしれない。
これらの脆弱性は多様なアーキテクチャに存在する。そのため、研究者が脆弱性を完全に調査してメーカーが対応するには、さらなる分析と時間が必要になる。
CPU設計を刷新してサービスに組み込んでも、研究者はパッチの更新を必要とする新しい亜種を今後も見つけるかもしれない。ハードウェアベンダーは対応策と軽減策を継続的に更新することになるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法 -
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
4
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
5
身代金支払いは逆効果 情シスのためのランサムウェア対策ガイド2026
-
6
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
7
DXを阻む「動くだけ」のレガシーシステムに決別するための生成AI活用術
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
10
自社を守る「SCS評価制度」活用法 7割の企業が取引先起点の情報漏えいに直面
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー