Appleはカリフォルニア大学ロサンゼルス校と共同で、人の感情を検出する感情分析AIモデルを開発している。この研究を通じて、Appleは何をしようとしているのか。
経済誌「Wall Street Journal」は、Appleが人の心の健康状態や感情を分析するAI(人工知能)モデル(以下、感情分析AIモデル)の研究開発に取り組んでいると報じた。研究者の間では、この感情分析AIモデルに対する懐疑的な見方がある。
南カリフォルニア大学(University of Southern California)の心理学准教授、ホルヘ・バラサ氏は、Appleの感情分析AIモデルに疑問を呈する一人だ。バラサ氏は神経科学技術を手掛けるImmersion Neuroscienceの最高セキュリティ責任者(CSO)も務める。「AIモデルが安定して明確な診断結果を出せるかどうかはまだ不確かで、証明もされていない。感情分析AIモデルが神経科学分野でどう利用されるのかもはっきりしない」と同氏は言う。
AI技術で俯瞰(ふかん)的に物事を推察することは、俯瞰的にパターンを見るということだ。「個人レベルに落とし込むと、AI技術による感情の推察には疑問が残る」とバラサ氏は話す。「社会的背景や人々の関わり合いを除外すると、われわれが人の心理を理解するために、感情がどの程度の意味を持つのかがはっきりしなくなる」と同氏は指摘する。
Wall Street Journalによると、この感情分析AIモデルの研究プロジェクトは、Appleとカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA:University of California, Los Angeles)の共同研究プロジェクトから生まれたものだ。AppleはUCLA、製薬会社Biogenと共同で感情分析AIモデルの研究を進めている。
研究チームは、デジタル信号を使ってうつや不安を検出できるアルゴリズムの開発を目指す。用いるデータは顔認識や睡眠パターン、入力動作、バイタルサイン(血圧、体温などの生命活動を示す兆候)だ。データの収集にはスマートフォン「iPhone」、スマートウォッチ「Apple Watch」、睡眠モニタリングデバイス「Beddit Sleep Monitor」といったApple製デバイスを使用している。感情分析AIモデルの研究プロジェクトには2020年の開始時に150人が参加し、2023年までに約3000人の参加が見込まれる。
バラサ氏は感情分析AIモデルの研究プロジェクトについて、「研究チームは成果をまだ実証はできていないものの、役に立つツールを開発できる可能性がある」と語る。うつや不安といった症状の診断に関してではなく、人々が自分の日常を自己認識する方法の方向性を示すという点で、感情分析AIモデルは「非常に有望だ」と同氏は指摘する。
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