「パッチ適用の責任者がいない」問題が企業のセキュリティを脅かす理由パッチ適用が難しい6つの理由【第4回】

パッチ適用は重要な業務だが、実施に際してさまざまな問題が付きまとう。企業はなぜ、危険性を理解していながらパッチを適用しないままにしているのか。3つの課題を取り上げる。

2021年12月09日 09時00分 公開
[Alissa IreiTechTarget]

関連キーワード

運用管理 | セキュリティ対策 | 脆弱性


 第2回「『パッチを全て、今すぐ適用する』がなぜ“間違い”なのか?」、第3回「IT担当者が『更新ボタン』を“全てを台無しにするボタン”だと考える理由」に続き、本稿は企業のパッチ運用がうまくいかない理由を解説する。

理由4.手動のパッチ適用は時間がかかり、問題が頻発する

会員登録(無料)が必要です

 「IT担当者の業務負担を軽減し、問題の発生を最小限に抑えるには、パッチ適用の自動化が重要だ」というのが専門家の見解だ。一方で調査会社Ponemon Instituteが2019年に発表した調査結果によると、調査対象のセキュリティ担当者約3000人のうち、2019年に脆弱(ぜいじゃく)性管理とパッチ適用の自動化ツールを使っていたのは44%にとどまる。

 「企業が担当者に手動でパッチを適用させている場合、そのシステムはダウンする」。セキュリティとクラウド分野のコンサルティング企業ZenacitiのCEO、アンドリュー・プレイトー氏はそう語る。「実際に担当者の能力が低いとしても、それは担当者の能力が低いからではない。彼らが人間だからだ。人間は必ずミスをする」とプレイトー氏は付け加える。

理由5.パッチ適用の責任が分散している

 Ponemon Instituteの調査結果によると、調査対象の88%が、「パッチが適用されていないソフトウェアについて、全面的に責任を負っているわけではない」と考えている。セキュリティ部門が、開発部門やIT運用部門など他部門との間で調整する必要があるために、パッチ適用が平均12日間遅れることも分かった。

 パッチ適用の責任が分散することによって、パッチ適用が遅れるだけでなく、重大な脆弱性を修正できないままになる場合もある。例えば企業が利用しているAdobe製品に脆弱性が見つかった場合、システム、データベース、アプリケーションを管理する各部門のうち、どこがそのAdobe製品のパッチ適用の責任を負うのか、誰にも分からない。その結果、誰も手を挙げず、Adobe製品は攻撃を受けて企業に被害が出ることになる。

 こうした問題に対して、企業はどう対処すればよいのか。セキュリティコンサルティング企業Cosant Cyber Securityで、同社の顧客のバーチャル最高情報セキュリティ責任者(vCISO)を務めるブライアン・グレーク氏は以下の解決策を提案する。

  • 密接なコミュニケーション
  • 明確なセキュリティポリシーの制定
  • パッチ適用手順の確立
  • 役割ベースの責任分担

理由6.パッチ適用は退屈

 「一部のIT担当者は、平凡で退屈なためパッチ適用の仕事をおろそかにしている。担当者がもっと面白いプロジェクトに参加すると、パッチ適用をなおざりにしやすい」と、プレイトー氏は指摘する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行など、業務を混乱させる事象が発生した場合もそうだ。IT部門が収拾に追われて手が足りなくなることに加え、緊急のタスクを優先して処理するため、パッチ適用は後回しにされやすい。

 グレーク氏は、セキュリティリーダーが脚光を浴びている新しい技術やトレンドに気を取られ、それらの導入を優先させるあまり、基本的な脆弱性対策にしわ寄せが行きがちだと指摘する。パッチを適用せずに重大な脆弱性を何年も放置している状態は、常にサイバー攻撃の危険と隣り合わせだ。「最良のサイバーセキュリティ対策は目新しいものではない。だがそうした対策こそが必要だ。それを適切に導入すれば、ニュースを生まずに済む」と同氏は助言する。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 フォーティネットジャパン合同会社

クラウドに必要な「データドリブンなセキュリティ」を実現する方法とは?

クラウド利用が当たり前となった今日、セキュリティ対策もまたクラウド環境に適したものでなくてはならない。とはいえ、大量のデータポイントが生成されるクラウド領域にあって、その全てのポイントを網羅するのは並大抵のことではない。

製品資料 TIS株式会社

Web攻撃総数の2割以上が狙うAPI、適切な管理とセキュリティ対策を行うには?

ビジネスでのAPI利用が進むにつれ、そのAPIを標的としたサイバー攻撃も増加している。それらに対抗するためには、「シャドーAPI」や「ゾンビAPI」を洗い出し、セキュリティ対策を徹底する必要がある。その正しい進め方を解説する。

製品資料 Okta Japan株式会社

アイデンティティー管理/保護の注目手法、「IGA」とは何か?

ある調査で企業の61%がセキュリティ優先事項のトップ3に挙げるほど、重要度が高まっているアイデンティティー管理・保護。その中で昨今注目されているのが「IGA」というアプローチだ。そのメリットや、導入方法を解説する。

製品資料 株式会社エーアイセキュリティラボ

AIで人材不足を解消、セキュリティ担当者のためのDXガイド

DX推進によってさまざまなビジネスシーンでデジタル化が加速しているが、そこで悩みの種となるのがセキュリティの担保だ。リソースやコストの制限も考慮しながら、DXとセキュリティを両輪で進めるには何が必要になるのか。

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティ運用を最適化し、SOCの負担を軽減する「SOAR」とは?

サイバー攻撃が巧妙化し、セキュリティチームとSOCは常に厳戒態勢を取り続けている。さらにデジタルフットプリントの拡大に伴い、セキュリティデータが絶え間なく往来する事態が生じている。このような状況に対応するには、SOARが有効だ。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...