料理系メディアが“2人ITチーム”で挑んだ2PBのストレージ導入 成功の裏側は2人のITチームが選んだデータ保管方法【後編】

America's Test Kitchenは増大するデータを保管するために、2PBのストレージを導入した。ITチームが2人しかいない同社が、クラウドストレージAmazon S3も併用しながら構築したデータ保管の仕組みとは。

2021年12月09日 05時00分 公開
[Johnny YuTechTarget]

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 料理の番組や雑誌を手掛けるAmerica's Test Kitchen(以下、ATK)は、増大するデータを保管するために容量2PBのストレージを導入した。前編「料理番組の会社が『Amazon S3』の“5日経過データ”をオンプレミスに戻す理由」に続き、同社が採用したストレージやクラウドストレージと使い分ける方法などを紹介する。

大容量ストレージを2人しかいないITチームで導入 その裏側は

 ATKは2019年にStorONEのストレージアプライアンスを導入した。きっかけは、同社と付き合いのある付加価値再販業者(VAR)がWestern Digitalのストレージ「Ultrastar」シリーズを対象に実施していた容量2PBの販促キャンペーンだった。当時はATKのデータ容量はペタバイト規模には及んでいなかったが、データ増加を見据えて同社は2PBのストレージを導入することに決めた。

 以前からATKはNetApp、Dell EMC、Nexsanのストレージを使用していた。Ultrastarの導入と引き換えに、Nexsanのストレージアレイ「SATABeast」の使用は中止した。

 「やりたいことが何でもできる大容量のストレージを手に入れたいと考えていた」と、ATKでIT担当ディレクターを務めるダスティン・ブラント氏は話す。Ultrastarの膨大なHDD容量によって、ATKはまずクラウドサービスにあるデータをオンプレミス(自社が保有または運用する設備)で保管できるようになった。

 前編の通り、ATKはRubrikのデータ保護ツールを使ってオブジェクトストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)にバックアップをして、古くなったデータはオンプレミスでアーカイブしている。「4K動画(4Kは4000×2000ピクセル前後の解像度)や高解像度の画像のデータをクラウドサービスから取り出す際の通信容量やレイテンシ(遅延)、データ転送料金について心配する必要がなくなった」とブラント氏は語る。

 Ultrastarを追加したことで、ATKが保有するストレージ容量は合計約2.3PBになった。内訳はUltrastarが2PB、NetAppのアプライアンスが100TB、Dell EMCのストレージアレイ「Isilon」が140TB、その他のストレージが60TBだ。使用容量はまだ約1PBであることから、少なくとも1年半は容量の増設が必要になることはないとブラント氏は見積もっている。

 一方でUltrastarはHDDを連結させただけのユニットであったため、管理用のソフトウェアが必要だった。ブラント氏はまず「OpenStack」「FreeNAS」「Gluster」などオープンソースのストレージソフトウェアに目を向けた。だが2人しかいないITチームにとって、オープンソースソフトウェアを扱うのは荷が重過ぎた。「あっという間に収拾が付かなくなることは火を見るよりも明らかだった」とブラント氏は話す。

 Pure StorageとDell Technologiesのソフトウェアも検討したが、ATKにとってはこれらを扱う作業負荷も高かった。ITチームのリソースが限られているATKにとって理想的なストレージシステムは、構成や管理に手間が掛からないものだった。ブラント氏は付き合いのあるVARから提案されたStorONEのストレージソフトウェア「S1 Enterprise Storage Platform」がこの要件に合致していたため、採用することにした。「ストレージの管理に詳しくなる必要のあるソフトウェアは使いたくなかった」とブラント氏は言う。

 ATKの社内でStorONEのソフトウェアを搭載したアプライアンスは、アーカイブにとどまらない存在へと変化している。出版チームや編集チームの従業員はこれまで、デザインや編集などの作業で頻繁に使うデータをNetAppのアプライアンスとオンラインストレージ「Googleドライブ」に保管してきた。ATKはこれらのデータもStorONEのアプライアンスに移行させることにした。移行作業の一部はすでに着手済みだ。「最終的にはStorONEのアプライアンスにデータを集約するつもりだ」とブラント氏は語る。

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