Juniper Researchの調査によると、オンライン診療をはじめとする「遠隔医療」は欧米諸国の将来的な医療費節減につながる可能性がある。ただしアナリストは、幾つかの「成長の阻害要因」に警鐘を鳴らす。
調査会社Juniper Researchは2021年5月に発表したレポートで、遠隔医療が2025年までに世界中の医療費を210億ドル(約2兆4300億円)節約すると予測している。2021年における医療費削減の予測額は110億ドルだった。この調査で定義している「遠隔医療」は主にオンライン診療で、程度は小さいが遠隔患者モニタリングやチャットbotなども含んでいる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が続く中、遠隔医療のサービス提供は大きく成長するとJuniper Researchはみる。実際、病院や診療所はCOVID-19の拡大に後押しされる形で、スタッフや患者の安全を確保するために運営方法を変えなければならなかった。
COVID-19のパンデミックの初期には、安全上の懸念から受診を控えた患者に対して、医療機関は治療やモニタリングを継続させるために遠隔医療の導入を早急に検討せざるを得なくなった。これにより、患者と医療従事者同士の電話やビデオ通話を可能にするシステム、患者のバイタルサインをリアルタイムに遠隔モニタリングするシステムなど、さまざまな形の遠隔医療が実施されるようになった。このような遠隔医療はウイルス感染のリスクを抑えながら、患者が在宅で医療チームと相互にやりとりできることから、特にパンデミックの間は有力な選択肢だ。
遠隔医療に関するJuniper Researchの調査レポート「Telemedicine: Emerging Technologies, Regional Readiness & Market Forecasts 2021-2025」によれば、2019年に実施された遠隔診療相談は2億8000万件以上だったが、パンデミック期間中の2020年には3億4800万件(推定値)に増加した。新興の遠隔医療サービスの展開を加速させ、医療機関への普及を拡大するには、サードパーティーの医療サービス開発者の活動が不可欠になると同レポートは考察している。
この調査レポートはオンライン診療を、医療費の大幅削減を可能とする重要なサービスだと見なしている。ただし「医療費の削減が可能になるのは、必要なデバイスやインターネット接続が普及している先進国に限られる」と注意を促す。
遠隔医療のサービス連携には多大な投資が必要だ。HIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)といったデータ保護要件もあるために、小規模な医療機関の間では遠隔医療の導入が進まない可能性があると、この調査レポートは指摘する。同レポートは、遠隔医療サービスの採用を促すために、医療関連の規制当局が遠隔医療サービスの規制緩和を継続して、小規模な医療機関のために参入障壁を最小限にすることを提言している。
この調査レポートの著者である、Juniper Researchのアダム・ウェアーズ氏は「いかなる規制緩和も、患者の機密情報を損なうものとならないよう保証しなければならない」と述べる。「革新的で新しい遠隔医療サービスが、電子カルテなどの既存の医療ITと連携し、医療機関のメリットを最大化することが望ましい」(ウェアーズ氏)
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