英国のドメイン管理組織Nominetの報告から、同国でのサイバー犯罪に対する取り組みが功を奏していることが明らかになった。効果の概要とその要因を解説する。
「.uk」ドメインを管理する非営利団体Nominet UK(以下、Nominet)が2021年12月に発表した情報によると、フィッシングなどのサイバー犯罪に関わったという理由で停止された.ukドメイン名の数は、2020年から2021年にかけて大幅に減少した。同団体によると、2020年の.ukドメイン停止件数は2万2148件で、2021年には3434件に激減した。これは同団体が.ukドメイン停止件数の記録を開始して以来最少の数字だ。
知的財産権侵害に関する申し立てを実施するロンドン市警察のPIPCU(Police Intellectual Property Crime Unit:警察知的財産犯罪ユニット)が、Nominetに停止を要請した.ukドメインの数は、2021年は2487件だった。これも2020年の2万1632件から激減している。
NominetとPIPCUは、知的財産権侵害を取り締まる「Operation Ashiko」に共同で取り組んでいる。Operation Ashikoは偽造品を販売、配布するWebサイトの撤廃を目指すプロジェクトだ。Nominetの顧問弁護士兼ステークホルダーリレーション責任者のニック・ウェンバンスミス氏は、ドメイン停止件数の激減の要因を「Operation Ashikoが功を奏し、知的財産犯罪に関連したドメイン停止が大幅に減ったことだ」と述べる。「オンライン犯罪者は、もはや.ukドメインを有効な選択肢と見なさなくなった」とウェンバンスミス氏は成果を説明する。
警察などの法執行機関は、犯罪行為に使われているドメインをNominetに通知し、停止を要請する。それを受けてNominetは該当ドメインを停止する。Operation Ashiko以外でNominetが2021年に受けた.ukドメインの停止要請は
だった。
2021年は、Nominetのポリシーに違反する新規の.ukドメインは1012件あったものの、実際に同団体が停止したドメインはなかった。これは誤ってポリシー違反だと判定してしまった件数が多かったことを示す。2020年から2021年にかけて、オンライン詐欺などの金融犯罪に関連する.ukドメインの停止数は増えた。それでも.ukドメインの総停止数は2020年より少なかった。「これは全てのインターネットユーザーにとって喜ばしい結果だ」とウェンバンスミス氏は言う。
停止要請を受けたものの実際には停止に至らなかった.ukドメインは、2020年の47件から2021年は18件となり、これも減少した。停止に至らなかった理由は
などが考えられる。
Nominetが過去の停止措置を解除した.ukドメインは、2020年は15件、2021年は増加して25件だった。同団体が停止措置を解除するのは、問題行為がなくなって要請機関が停止の解除を認めた場合だ。
ロンドン市警察のNFIBサイバー犯罪撲滅チームは、技術を悪用する犯罪の阻止を目指している。こうした犯罪を防ぎ、個人や企業が大きな被害を受けないようにすることが目的だ。同チームに所属する巡査部長ソフィーナ・ディード氏は次のように語る。「インターネット犯罪に関するNominetの積極的な協力により、力を合わせて.ukドメインを悪用する犯罪と引き続き戦えることに、チームを代表して感謝する」
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