シンガポール国立大学の医学部NUS Medicineが、医学生と看護学生向けに「暴れる患者への対処法」を学ぶためのVRを使った教育プログラムの提供を開始した。その内容は。
シンガポール国立大学(NUS:National University of Singapore)の医学部に当たるYong Loo Lin School of Medicine(以下、NUS Medicine)は、同校の医学生と看護学生向けに「VR」(仮想現実)技術を活用した教育プログラムを提供している。学生はヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、精神疾患患者に対処する方法を学ぶ。NUS Medicineは、このVR教育プログラムを2022年6月に開始した。
NUS MedicineのVR教育プログラム「Virtual Reality in Agitation Management」(VRAM)は、学生が仮想空間で病棟担当の医療従事者の役割を演じ、「幻覚や妄想のために興奮して騒ぎを起こしている患者」(薬剤性せん妄の患者という設定)に対処する。
現実の医療現場では、こうした患者に対処する際、患者の気分や状況を落ち着かせることを阻害するさまざまな要因が存在する。例えば手助けを求める看護師や家族の声、背景のテレビの音、その場に集まる人々などだ。VRAMにはこうした要素も盛り込まれている。
学生はVRAMで、興奮状態の患者と周囲の状況を落ち着かせることを目指して行動することになる。そのため「患者の興奮をあおりそうな要素を取り除き、患者に掛けるべき適切な言葉を選び、適切な薬の量と治療方法、身体拘束のタイミングなどを判断しなければならない」とサイラス・ホー氏は説明する。ホー氏は、VRAMを率いるNUS Medicineの心理医学科助教だ。
ホー氏のチームは、医師や看護師、学生で構成される。NUS Medicineの付属病院であるNational University Hospitalと共に、2020年3月からVRAMに取り組んでいる。
後編はVRAMの試験運用に参加した医学生の声を紹介する。
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