サンゴ礁の保全活動に取り組むオーストラリアの環境保全団体は、DellやAccentureなどの企業と協力し、「深層学習」や「コンピュータビジョン」といったAI技術を活用する。その具体的な中身とは。
Dell Technologiesはオーストラリアのサンゴ礁保全団体Citizens of the Great Barrier Reefと協力し、機械学習の一種である深層学習(ディープラーニング)による学習モデル(以下、深層学習モデル)の開発に取り組む。この深層学習モデルは、サンゴ礁保全活動の効率化を支援するものだ。
Dell TechnologiesはCitizens of the Great Barrier Reefと共同で、調査プロジェクト「The Great Reef Census」(GRC)で活用するための深層学習モデルを開発。GRCは、ダイバーやシュノーケラーが水中で撮影した画像を用いて、グレートバリアリーフ(オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯)におけるサンゴ礁の状態を調査する。サンゴ礁の画像に対して深層学習モデルが高速なラベリング(分類情報の付与)と分析を実施することで、市民ボランティアがサンゴ礁の状態を確認する作業の効率化が期待できる。
「深層学習モデルは、新しい画像認識技術とデータセットを用いたトレーニングを重ねることで正確性が高くなる」。そう説明するのは、Dell Technologiesでアジア太平洋および日本のAI(人工知能)担当チーフテクノロジストを務めるアルーナ・コルル氏だ。
2022年8月時点で、Dell Technologiesが提供する深層学習モデルが画像を判別する精度は67%だという。この数字に対しコルル氏は、「自然物に対し高い精度を実現するのは困難だという点を踏まえると、67%の精度は優れた学習モデルと言える」とコメントする。Citizens of the Great Barrier Reefは、2022年11月にこの深層学習モデルを実際に調査で使用する。
オーストラリアのサンゴ礁やその他の海洋生態系の状態を監視する環境保全団体Australian Institute of Marine Science(AIMS)も、AI技術を活用する団体の一つだ。AIMSは、コンサルティング会社のAccentureとパートナーシップを組み、コンピュータビジョン(画像処理を通じてその内容を認識し理解するAI技術の一つ)を活用する。
このコンピュータビジョンは、AIMSが6つの海洋地域から収集した、6000枚のサンゴ礁の画像を自動で分析する。研究者は分析結果によって、ストレス付加時に特定のサンゴ礁種がどのような反応を示すのかを把握できる。例えば反応の一つとして、温度や光、栄養素の変化などのストレス要因により、サンゴが白くなる白化現象がある。
従来、AIMSは手作業で画像のラベリングと分析を実施していた。英国ダブリンにあるAccentureの研究開発施設The Dockでラピッドイノベーションディレクターを務めるリチャード・マクニフ氏は、「分析可能な画像の範囲には制限があり、結果的に保全活動のペースも遅くなっていた」と語る。コンピュータビジョンを用いて分析過程を自動化することで、従来より高速かつ詳細なラベリングが可能になる。
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