三菱重工がGoogle「Vertex AI」を選んだ理由 航空機製造でどう使っているのかクラウドニュースフラッシュ

三菱重工業の航空機製造工場は、業務自動化のためにGoogle Cloud Platformの「Vertex AI」を採用した。同工場は機械学習をはじめとしたデータ活用にどう取り組んでいるのか。クラウドの主要なニュースを取り上げる。

2021年11月30日 05時00分 公開
[上田 奈々絵TechTargetジャパン]

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 幾つかのクラウドベンダーは、事前学習済み人工知能(AI)モデルやAIアプリケーション開発ツールをクラウドサービスとして提供している。こうしたサービスを利用することで、ユーザー企業はAI技術を用いた業務効率化に素早く取り組むことができる。三菱重工業がGoogleのクラウドAIサービスを採用した事例や、アリババクラウド・ジャパンサービスのAI関連クラウドサービス群の提供開始など、クラウドの主要なニュースを6つ紹介する。

国内で提供が進むクラウド関連サービスは IDC Japanが調査

 IDC Japanは国内における2021年のIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのクラウドサービス市場が、前年比20.3%増の1兆5087億円になると予測する。同社はユーザー企業でクラウドサービスの採用が進む要因として、デジタルトランスフォーメーション(DX)やデータ駆動型ビジネスに優先的に取り組む企業や、事業継続性の強化のためにITインフラを見直す企業の増加を挙げベンダー各社はシステムの導入や構築といった技術的な課題を解決するサービスだけでなく、IT人材の育成を支援するサービスの提供も進めている。IDC Japanはこうしたサービスがユーザー企業のDXへの投資を活性化させ、クラウドサービス市場の成長をけん引する要因になるとみる。(発表:IDC Japan<2021年10月4日>)

三菱重工が航空機製造にGCPの「Vertex AI」を採用した理由とは

 三菱重工業の広島製作所・江波工場は、「Boeing 777」(ボーイング777)といった航空機のアルミ胴体パネルの組み立て拠点だ。同工場は組み立て作業の自動化を進めているが、細かい作業が必要な部品の組み立ては職人の手作業で実施しており、自動化技術の高度化と業務効率化が課題となっていた。そこで同工場は熟練作業員の知見をデータ化して機械学習エンジンに組み込み、業務改善につなげる取り組みを開始。機械学習モデル開発サービスの「Vertex AI」をはじめとした、Googleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)を採用した。限られた量の学習用データでAIモデルを作成できる点に加え、プログラミングを熟知していない開発者でもGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)ベースの開発ツールでAIアプリケーションが作成できる点などが選定理由となった。Googleが「Google re:Work」や「Creative Skills for Innovation Lab」といった、同社サービスの活用に関する学習プログラムを用意している点も、GCPの採用時に高く評価した。江波工場はGCPの機械学習サービス群を使い、アルミ板自動加工機の切粉を検知する画像分析AIモデルの開発に着手。作業員の作業状況を可視化するために、作業エリア内の作業員を検知するAIモデルの開発にも取り組み、今まで目視で実施していた作業の自動化を進める。(発表:三菱重工業、グーグル・クラウド・ジャパン<2021年10月26日>)

Alibaba Cloudが日本企業向けのAI導入支援パッケージを提供開始

 Alibaba Cloudの日本法人アリババクラウド・ジャパンサービスは、「AIサービスパッケージ」を提供開始する。同サービスには機械学習用のGPU搭載仮想マシンサービスと機械学習実行サービスの「Apsara AI Acceleration」、画像分析AIサービス群の「ビジュアルAIソリューション」、コンテナ管理ソフトウェア「Kubernetes」を基にしたAI開発サービスの「AI Suite」などが含まれる。同社のクラウドサービス群「Alibaba Cloud」の開発者コミュニティー「AliEaters」と連携し、AIサービスパッケージのユーザー企業向けに、AI技術の最新トレンドやビジネスでの活用に関するオンライントレーニングも提供する。同社はAIサービスパッケージのサービス群を利用することで、AIシステムの開発や導入のための作業を簡素化できると説明する。(発表:アリババクラウド・ジャパンサービス<2021年10月12日>)

「Azure移行で削減できる二酸化炭素排出量」を可視化するダッシュボードが登場

 「Microsoft Emissions Impact Dashboard」はMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」と「Microsoft Dynamics 365」の利用に伴う二酸化炭素排出量を可視化する。ユーザー企業はダッシュボードを使い、月別とサービス別、データセンター別にMicrosoftのクラウドサービスで発生する二酸化炭素排出量を算出し、グラフで確認できる。クラウドサービスに移行させていないアプリケーションのサーバやストレージの種類などの情報を入力して、Azureに移行した場合の二酸化炭素排出量の削減量を見積もる機能も備える。(発表:Microsoft<2021年10月13日>)

ハイブリッドクラウドの構築を容易にするストレージ製品群 日立製作所が発売

 「EverFlex from Hitachi」はユーザー企業のオンプレミスインフラとクラウドサービスのスムーズなデータ連携を実現するためのストレージ製品・サービス群だ。従量課金または月額課金型のストレージ導入サービス「日立従量課金型データ基盤ソリューション」とフラッシュストレージの「Hitachi Virtual Storage Platform 5200」「同5600」、ソフトウェア定義ストレージの「Hitachi Virtual Storage Software for block」(SDS)で構成される。ストレージ仮想化技術によって、同社のストレージ製品と他社のストレージ製品、クラウドストレージを1台のストレージとして利用可能にする。この仕組みを利用して、オンプレミスインフラとクラウドサービス間のバックアップやデータ移行などの作業負荷を軽減できるという。EverFlex from Hitachiが対象とするクラウドサービスはAWSで、順次対象を拡大させる。(発表:日立製作所<2021年10月5日>)

AWSやAzureへの「リフト&シフト」を支援 ネットワールドが新サービス

 「CloudPath Services」は既存のオンプレミスインフラに存在するシステムの、AWS またはAzureへの移行を支援するサービス。サービスメニューにはワークショップ形式のトレーニングや移行計画を策定するためのコンサルティング、移行と構築作業、アフターサポートが含まれる。Citrix SystemsやDell Technologies、VMwareなど約20ベンダーの製品をAWSやAzureで使用するための支援も実施する。オンプレミスのシステムをそのままクラウドサービスに移行させるリフト&シフトは、オンプレミスのシステムで利用していた製品・サービスがクラウドサービスで利用できなかったり、クラウドサービスで稼働させるために追加スクリプトが必要になったりするなど、技術的なハードルが高いことが課題となる。CloudPath Servicesではネットワールドの技術者が、ユーザー企業にヒアリングすることでこうした技術的な課題を特定し、解決策を提案、実行するという。(発表:ネットワールド<2021年10月5日>)

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