メルカリはユーザー体験の向上や運用管理の自動化のために機械学習などのAI(人工知能)技術を取り入れ、コンテナで運用している。AI技術とコンテナの運用を具体的にどのように実現しているのだろうか。
フリーマーケットアプリケーション(以下、フリマアプリ)の「メルカリ」を提供するメルカリ社。同社がユーザー体験向上や運用管理の自動化のために取り組んでいるのが、機械学習などのAI(人工知能)技術の活用だ。AI技術の運用においてはクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)のコンテナ関連サービスを積極的に導入している。
「メルカリが写真検索に『Amazon EKS』を活用 マネージドKubernetesの使い勝手は」では、メルカリの「写真検索」機能に機械学習を取り入れた事例を紹介。その仕組みを運用するインフラの構成要素として、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」のマネージドサービス「Amazon Elastic Kubernetes Service」(Amazon EKS)を利用していることを紹介した。これに加えて、メルカリ社は「AI出品」という機能に機械学習を取り入れている。
メルカリ社のCTO(最高技術責任者)である名村 卓氏がアマゾン ウェブ サービス ジャパンの製品説明会で語った話を基に、同社がどのようにしてコンテナを活用し、AI出品を運用しているのかを紹介する。
名村氏は、機械学習などのAI技術をメルカリに取り入れている理由は「個人間取引では“揺らぎの大きなデータ”を扱うことになるからだ」と説明する。例えばメルカリでは同じ「iPhone」でも「ガラスが割れているiPhone」「ガラスが割れていないiPhone」など、商品の状態によって生じる差異を区別し、品目を分類している。つまり“揺らぎのあるデータ”を扱うことになるため、その微妙な差異を認識しなければならない。そのために機械学習を利用している。
ユーザーが商品を出品する際に登録する画像を手掛かりにして、「商品のタイトル」や「カテゴリー」など入力すべき情報をシステム側が推測し、適切と思われる入力候補を提示する――。それを実現する機能がAI出品だ。
写真検索とAI出品は「既に登録済みの多数の画像から、ユーザーが登録した画像と似たものを見つけ出す」という動作が共通している。ただし名村氏によれば、この2つは完全に独立した別々のシステムだという。学習結果についても共用する構造にはなっていない。
メルカリ社の決済サービス「メルペイ」にも機械学習の機能が組み込まれている。実装している機能は、マネーロンダリングを防止する「AML」(Anti-Money Laundering)や詐欺取引の対策機能などだ。AMLは、実際の取引をトリガーとして、取引のログを収集し、一つ一つの取引が公正なものか不正なものかをチェックする仕組みになっている。「個人間の取引では、どうしても“悪い人”が参加する可能性があるので、そうした人をできるだけ迅速に発見し、市場から退場してもらうことで安心なマーケットを実現することが目的」(名村氏)だという。
こうした機械学習機能を運用するために、メルカリ社は下記のようなAWSのサービスを活用している。
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