Dellの「深層学習モデル」で分析時間が“7分の1”になった訳AI技術を用いた画像分析【前編】

Dellはサンゴ礁の保全団体と提携し、深層学習モデルの開発に取り組む。開発した学習モデルはサンゴ礁保全活動の効率化のために活用する。具体的にどのような効果をもたらすのか。

2022年10月19日 05時00分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 Dell Technologiesは、オーストラリアのサンゴ礁保全団体Citizens of the Great Barrier Reefと共同で、機械学習の一種である深層学習(ディープラーニング)による学習モデル(以下、深層学習モデル)の開発に取り組む。Citizens of the Great Barrier Reefはサンゴ礁の画像を収集し、分析している。深層学習モデルは、その取り組みをどのように変えるのか。

「深層学習モデル」でサンゴ礁保全活動の効率化を図る

 Citizens of the Great Barrier Reef は、グレートバリアリーフ(オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯)の調査プロジェクト「The Great Reef Census」(GRC)を実施している。ダイバーやシュノーケラーが水中で撮影した画像を用いて、オーストラリア北東岸沿いに2400キロにわたって広がるサンゴ礁の状態を確認する。

 2021年のGRCの調査では、グレートバリアリーフにおけるサンゴ礁240カ所の画像約1万3000枚を収集した。Citizens of the Great Barrier Reefの創設者兼CEOのアンディ・リドリー氏はGRCについて、「世界有数の民間プロジェクトだ」と話す。

 プロジェクトには幾つかの課題がある。まず、画像の分析には一定の時間を要する。2021年にGCRが実施した調査では、市民ボランティアが1万3000枚の画像を分析するのに1枚当たり約7分、合計すると約1516時間を要した。他にも、市民ボランティアがサンゴ礁の状態を検証する精度は専門家と比較すると劣るため、正確性が課題として挙がっていた。

 Dell Technologiesが開発する深層学習モデルは、画像内の全画素にラベルやカテゴリーを関連付けるアルゴリズム「セマンティックセグメンテーション」を使用する。このアルゴリズムを用いると、画像内にあるサンゴ礁の境界を10秒未満でラベリングすることが可能になる。ラベリングの精度は市民ボランティアが検証する。これにより、1万3000枚の画像を1枚当たり1分弱、合計すると約200時間で分析できるようになった。

 Dell Technologiesは人手と深層学習モデルの両方を用いて、サンゴ礁に分類される、144種の有機体のカテゴリーを13種に絞った。そこからさらに深層学習モデルの改良を重ねることで、5種のカテゴリーにまで絞り込んだ。Dell Technologiesでアジア太平洋および日本のプリセールス担当バイスプレジデントを務めるダニー・エルマージ氏は、「画像に映る物体がサンゴ礁かどうかを確かめる、人間による検証作業が容易になる」と説明する。

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