赤字を抱えながらもIT投資を縮小せず、攻める大学がある。この大学でCIOを務めるショーン・グリーン氏が、財政問題を抱える大学で働くと決めた理由とは。
ショーン・グリーン氏は、IT職からマーケティング職に転身後、再びIT職に戻り、英国のイーストアングリア大学(The University of East Anglia、以下UEA)で同校のITチームを統率する最高情報責任者(CIO)を務めている。グリーン氏のキャリアは、英国の大手ガス会社British Gasで始まり、2社目のChurchill Insurance(2012年よりDirect Line Insurance Group傘下)ではマーケティング職に転身した。3社目の大手保険会社Avivaで再びIT職を経て、UEAのCIOに着任する。さまざまなキャリアを経て同氏がUEAのCIOに着任した理由は。
Avivaでデータウェアハウス(DWH)プロジェクトのプログラムマネジャーを任されたグリーン氏は同社を退職後、金融サービス分野でITプロジェクトのフリーランスプロジェクトマネジャーとして活動することになる。その後、サザーク・ロンドン自治区の議会との管理委託契約によってPearson Government Solutions(注1)でITマネジャーとして外部委託分野のキャリアを踏み出す。
※注1:プライベートエクイティファンドVeritas Capitalが2007年に買収。
サザーク・ロンドン自治区の議会と仕事をしたことで、グリーン氏は公共部門で働くことに関心を寄せるようになった。その後しばらくはロンドンと、グリーン氏の地元ノーフォーク州における幾つかの議会で請負業務に携わることになる。
英国の金融と商業の中心地であるシティー(ロンドン中心部の地区)とロンドン市警察のIT共有サービスの運営に5年間従事した後、グリーン氏はタワー・ハムレッツ・ロンドン自治区で再び正社員として働くことを選択する。
当時、グリーン氏はノーフォーク州ノリッジに住み、ロンドンまで通勤してロンドンに宿泊する生活を送っていた。自宅に程近いUEAの求人情報を見つけたとき、グリーン氏はその職務に魅了された。ノリッジに住み、スポーツ公園などのUEAの施設を使用していたためだ。「私にとって同校は名門大学であるだけでなく、大切な場所だった」とグリーン氏は話す。
グリーン氏がUEAで働き始めた当時、UEAは財政問題を抱えていた。UEAは2023年に入ってから、2023〜2024年に3000万ポンドの赤字が見込まれることを公表している。この赤字は2026〜2027年には4500万ポンドに膨れ上がる見込みだ。UEAは赤字の原因として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響、授業料の据え置き、学生数の減少、コストの上昇といった複合的な影響を挙げている。
2023年現在はIT投資を促すのに適した時期ではないと考えるのが自然な反応だ。だがUEAはIT投資を削減すべきコストではなく、直面する難局を乗り切って生まれ変わるための手段だと捉えている。グリーン氏によれば、UEAは「創造力を働かせ、ITを活用して問題を解決しよう」と考えており、そのことがITチームの日々の活力になっていると補足する。
次回は、グリーン氏がUEAで担う職務とそのやりがいを聞く。
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