世界的に普及している「Chrome」を狙うサイバー攻撃が激しい。この動きに対抗するため、GoogleはChromeに対してある決断を下した。その内容と背景とは。
Webサイトへのアクセス解析サービスを提供するStatCounterは、自社サービスのトラフィック情報を基にWebブラウザのシェア(ページビューベース)を調査、公開している。その結果によると、2022年8月から2023年8月にかけて、世界におけるWebブラウザのシェア1位は、GoogleのWebブラウザ「Chrome」であり、利用率は平均約65%だった。
そのChromeのポリシーが変わる。Googleは2023年8月に、新バージョン「Chrome 116」の配布を開始した。同時に、以降のバージョンについて、Chromeのセキュリティアップデートやパッチ(修正プログラム)の配信頻度を上げると発表した。その狙いとは。
脆弱(ぜいじゃく)性は主に2種類ある。1つ目は、ベンダーが脆弱性の情報や脆弱性を修正するパッチを公開していない「ゼロデイ脆弱性」だ。2つ目はベンダーがパッチを公開済みの脆弱性で、「Nデイ脆弱性」と呼ばれる。
ChromeはオープンソースソフトウェアのWebブラウザ「Chromium」を基にしており、GoogleはChromeのソースコードを公開している。そのため攻撃者は、Chromeに新たな脆弱性が見つかると、その脆弱性を悪用したプログラムを簡単に開発して、エンドユーザーがパッチを適用する前に攻撃できてしまう。
今回のポリシー変更は、サイバー攻撃者がNデイ脆弱性を悪用できる期間を狭め、エンドユーザーを保護する狙いがある。Googleが提供するChromeのアップデートは、約4週間ごとに配信するメジャーアップデートの他に、メジャーアップデートの間に1回配信するマイナーアップデートがある。マイナーアップデートはバグの修正や脆弱性の修正などを含む。同社はマイナーアップデートの配信頻度を、Chrome 116以降は、約1週間に1回に変更する。
GoogleのChromeセキュリティチームのエイミー・レスラー氏は、ベンダーがパッチを公開してからエンドユーザーが適用するまでの期間を「パッチの溝」と表現する。「われわれは、パッチの溝を最小限に狭めるために、できるだけ早くセキュリティアップデートを配信することが非常に重要だと考える」とレスラー氏は言う。
Googleは以前からパッチの溝を短縮することに取り組んでいる。2019年に公開した「Chrome 77」以降は、それまで平均約35日だったパッチの溝を約15日にまで短縮した。Chrome 116以降はさらに短縮されることになる。「Nデイ脆弱性が悪用される可能性は完全には排除できない。だがアップデート配信頻度の変更で、攻撃者がNデイ脆弱性を突ける期間は狭まり、いっそう攻撃しにくくなる」とレスラー氏は見込む。
後編は、Chromeユーザーができることや気を付けるべきことを紹介する。
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